涼輔救出
更新がやや遅めですがすいません…m(_ _)m
まだまだ序盤ですね…
受験もあるし…
辺りは民家、警報を聞いた人々は、外で黒く渦巻く空を見ていた。
「大丈夫かねぇ…」
「心配ねぇって。ここらは工場が小せぇから、気付かれずに通りすぎるだろうよ」
「それよか、大きな工場のある横浜とか狙ってるんだろ」
「んだ、ここは大丈夫だて」
涼輔を追っている最中に、深空はそんな会話を耳に挟んだ。
飛び舞う戦闘機、それを見上げる人たち…。
安心そうに空を見る人たちを見て、何処となく不安がさした。
「ところで、あの人が何処へ行ったのか知ってるのか?」
涼輔の居場所は知って向かっているのか、場所は分かっているのか深空は心配になった。
「ええ…けど…」
すると、急に明名は立ち止まった。
「あんなに正義感のある人でも、この空襲で亡くなってしまうのよ…」
え……?
「なっ…!?」
「落ちてきた照明弾の後、続けて焼夷弾が落とされ、火の海になった民家に潰されていた二人の子どもを助けるのよ…。無事にその子たちは助かったけど、遅れて火に囲まれ…」
「…!?」
そんなことを解っていながらも、明名はその場を動こうとしなかった。
「その歴史を、今私たちが覆すとしたら…?」
「えっ…?」
そうして、明名は再び走り出した。
深空は未だに話の意味が理解が出来なかった。
ピカッ!
「!!」
遥か遠くに、目をくらます照明弾が落ちたのが分かった。続いて焼夷弾があちこちに落とされた。その瞬間、いつの間にか周りは火の海になっていた。
―――――――――――
「あっ!」
「いた!」
見つけた時は、既に涼輔は燃えた民家の中から、二人の子どもを連れて出てきた。
「父ちゃんー!」
二人の男の子が、涼輔の両脇に抱えられながら、鼻をすすりながら泣いていた。
ガタン!
燃えていた民家の屋根が三人の上に落ちてきた。
「くっ…受け取ってください!」
決死の覚悟で、両脇に抱えていた子どもを、見ていた親に上がっていた炎を越えるように投げた。
それを親が受けて取り、泣きながら抱き抱えた。
しかし、涼輔は火の中に取り残されたままだった。
「涼輔!」
「お、落ち着けって!」
「くっ…」
歯をくいしばりながら見ていた明名を、何故だか深空は同情したくなっていた。
「わたしにも…知鶴のような力があれば…」
「どうした?助けるんだろ!」
呆然と立ちすくんでいた明名を、後押しするように言った。
「助けたら…歴史は変わってしまう…」
「は…?お前…こんな時に何を言って…」
「今ここで涼輔を助けたら…歴史は…あなたにもわかっているでしょう…?後世に語り継がれていく歴史は、決して覆してはならない…」
そんな歴史にこだわりながら、火の中で迷える涼輔を見ていた。
コイツは…大切に想っている人を…助けないなんて…!
歴史を変えてはいけない…そんな記述に囚われて、見捨てるこの女は…!
徐々に、深空の中から悠長に怒りが込み上げてきた。
実はそんなことを言いながらも、明名は助けたくて仕方がなかった。
パチン!
薄く赤く染め上がる明名の頬に、熱く鋭い痛みが走った。
「いい加減に…しなさいよ…」
「…!?」
怒りが抑えきれなくなった深空は、ついにビンタを放った。
「助けたいんでしょ…だったら…こんなとこで嘆いてないで、さっさと助けに行きなさいよ!」
「なっ…!?」
「歴史がなんだよ!そんなこと…大切な人を見捨てでも守らなければいけないものなのかよ!」
そういうと深空は、民家の火の海の中に突っ込んでいった。
「あ、待ちなさい!」
その言葉は、深空には届かなかった。火の海の中に消え、いつしか涼輔の姿も見えなくなっていた。