表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縁の旅人  作者: ネギ田。
11/32

涼輔救出

更新がやや遅めですがすいません…m(_ _)m



まだまだ序盤ですね…

受験もあるし…

辺りは民家、警報を聞いた人々は、外で黒く渦巻く空を見ていた。



「大丈夫かねぇ…」

「心配ねぇって。ここらは工場が小せぇから、気付かれずに通りすぎるだろうよ」

「それよか、大きな工場のある横浜とか狙ってるんだろ」

「んだ、ここは大丈夫だて」



涼輔を追っている最中に、深空はそんな会話を耳に挟んだ。

飛び舞う戦闘機、それを見上げる人たち…。

安心そうに空を見る人たちを見て、何処となく不安がさした。



「ところで、あの人が何処へ行ったのか知ってるのか?」



涼輔の居場所は知って向かっているのか、場所は分かっているのか深空は心配になった。



「ええ…けど…」



すると、急に明名は立ち止まった。



「あんなに正義感のある人でも、この空襲で亡くなってしまうのよ…」



え……?



「なっ…!?」

「落ちてきた照明弾の後、続けて焼夷弾が落とされ、火の海になった民家に潰されていた二人の子どもを助けるのよ…。無事にその子たちは助かったけど、遅れて火に囲まれ…」

「…!?」



そんなことを解っていながらも、明名はその場を動こうとしなかった。



「その歴史を、今私たちが覆すとしたら…?」

「えっ…?」



そうして、明名は再び走り出した。

深空は未だに話の意味が理解が出来なかった。


ピカッ!


「!!」



遥か遠くに、目をくらます照明弾が落ちたのが分かった。続いて焼夷弾があちこちに落とされた。その瞬間、いつの間にか周りは火の海になっていた。


―――――――――――



「あっ!」

「いた!」



見つけた時は、既に涼輔は燃えた民家の中から、二人の子どもを連れて出てきた。



「父ちゃんー!」



二人の男の子が、涼輔の両脇に抱えられながら、鼻をすすりながら泣いていた。



ガタン!



燃えていた民家の屋根が三人の上に落ちてきた。



「くっ…受け取ってください!」



決死の覚悟で、両脇に抱えていた子どもを、見ていた親に上がっていた炎を越えるように投げた。

それを親が受けて取り、泣きながら抱き抱えた。

しかし、涼輔は火の中に取り残されたままだった。



「涼輔!」

「お、落ち着けって!」

「くっ…」



歯をくいしばりながら見ていた明名を、何故だか深空は同情したくなっていた。



「わたしにも…知鶴のような力があれば…」

「どうした?助けるんだろ!」



呆然と立ちすくんでいた明名を、後押しするように言った。



「助けたら…歴史は変わってしまう…」

「は…?お前…こんな時に何を言って…」

「今ここで涼輔を助けたら…歴史は…あなたにもわかっているでしょう…?後世に語り継がれていく歴史は、決して覆してはならない…」


そんな歴史にこだわりながら、火の中で迷える涼輔を見ていた。


コイツは…大切に想っている人を…助けないなんて…!

歴史を変えてはいけない…そんな記述に囚われて、見捨てるこの女は…!

徐々に、深空の中から悠長に怒りが込み上げてきた。

実はそんなことを言いながらも、明名は助けたくて仕方がなかった。



パチン!



薄く赤く染め上がる明名の頬に、熱く鋭い痛みが走った。



「いい加減に…しなさいよ…」

「…!?」



怒りが抑えきれなくなった深空は、ついにビンタを放った。



「助けたいんでしょ…だったら…こんなとこで嘆いてないで、さっさと助けに行きなさいよ!」

「なっ…!?」

「歴史がなんだよ!そんなこと…大切な人を見捨てでも守らなければいけないものなのかよ!」



そういうと深空は、民家の火の海の中に突っ込んでいった。



「あ、待ちなさい!」



その言葉は、深空には届かなかった。火の海の中に消え、いつしか涼輔の姿も見えなくなっていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ