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神がいないこの世界、そして僕達は神になる  作者: 秋野紅葉
ジョブチェンジしますか?▼最弱 ▽最強
3/15

初陣

「は?一体何を言っているんだ?」


千寿の表情が一気に険しくなる。

臨の表情が強張っていることから、冗談ではないと伝わったようだ。


「いや、雑誌や専門情報誌、ネットの話から統合すると、神人になると不思議な力が発現して、このスキル欄の一番上に表示されるんだよな?」


無理して笑顔を造ろうとしているが、逆に怖く見える。


「あぁ、それに加えて隠しスキルが発現すると、この黒いカードがアイテム欄に入る」


千寿は指先にカードを乗せてクルクルと回している。


「は!?俺は無能力の神人で、千寿が特殊スキル持ちの神!?」


臨はカードに顔を近づける。

金色に縁取られた黒いカードには、銃のような絵柄に、


『D.E.M』


と刻まれている。


「で、俺はこれからどうすればいいの?」

「俺に聞かれても……」

「スキル無しでどうやって戦うんだよ!」

「それも俺に言われても」


臨は大きく項垂れる。

大きな木の外周に設置されたベンチに腰掛け、ため息をつく。


「まぁ、元気だせよ」

「いや、やりようがある」

「は?」


臨は顔を上げる。


「おさらいをしよう」

「あ、あぁ」

「主な武器は剣や重火器、防具は鎧や軽装備、アイテムは回復アイテムから便利アイテム。これがショップで買えるんだよな?」

「あぁ」

「それに付随して、スキルを多用して戦うゲームでいいんだよな?」

「まぁ、そうだな」

「つまりだ、お前は龍騎士で俺はすっぴんなわけだ」

「はい?」

「あれだよ。ジョブチェンジするとさ、レベル1からじゃん?特殊スキルなんて持ってないんだよ」

「んー……」

「まだ解らないか?スキルがないなら普通に戦争すればいい」

「なっ、武器も持たずに突っ込むのと同じだぞ!?」

「武器ならある」

「何処に?」


臨はニタりと笑い、言った。


「お前だよ、千寿」







6時間後、アルカディアフィールド——


千寿は戦場の真っただ中にいた。

身を隠すのは崩れかけのビルの壁、手にはデザートイーグル、装備は初期装備の布の服にマント、耳にはインカムをつけている。


本来、ゲームを始めた者は最初に装備を整える為、疑似戦場にて物資補給のアルバイト、即ちチュートリアルを受けて金策をし、装備を整えてから戦場に降り立つものだ。


しかし、千寿はインカムとデザートイーグル以外は初期装備のままだ。


「なぁ、これ本当に上手くいくのか?」

「俺の考える策略が外れたことがあるか?」

「ゲームならないな」

「なら、ゲームだから大丈夫」

「あのなぁ……」

「さぁ、楽しいゲームを始めようか」


インカム越しでもわかる。きっと今、臨は満面の笑みだろう。


「しゃーなし、いくぞっ」


千寿が飛び出す。


路地裏を駆けながら辺りに目を配る。

十字路に行き着いた瞬間、


「右へステップ」


右へ軽く飛ぶと、蹴った地面に弾丸が突き刺さる。


「左方向に射撃後、正面の壁に背を当てる」


言われるがままに暗がりを撃つと、人の声なき声が聞こえた。

そのまま壁に背を向け、張り付く。


「10カウント、振り向き様に正面上空に射撃。後に正面に向けて走る……カウントスタート」


10、9、8、7、6……


心臓が張り裂けそうな緊張が襲う。

今、俺は人を撃ったんだ。


5、4、3、2、1……


『0!』


振り向き様に正面上空を撃つと、ビルとビルの間に掛けられた、板の梯子から叫び声をあげて人が落ちる。

射撃後、走り出した千寿の背後を落下する瞬間、


「振り向いて射撃」


後ろから銃声が聞こえたが、落下する男に命中。

合図の通りに振り向き、撃つと、先程自分がいた十字路で、人が崩れ落ちるように倒れた。


「やっ——」


乾いた音が響き、千寿の後方で何かが倒れる音がした。

振り向くと、男が倒れている。


「状況終了まで気を抜くんじゃない」

「悪い」


再び振り向き、前方の上空、突き当りのビルでキラりと光る物に、頭を下げる。


「撤収だ。ダナケー回収後、エントランスに」

「了解しました、上官殿」







時は遡り6時間前——


「俺が武器!?」

「あぁ、そうだ。お前の特殊スキルはなんだ?」

「えーっと」

「銃を自在に操れる」

「半分正解だ、機械なら何でも操れるみたいだ。なんで解った?」

「絵柄が銃、そして……千寿、お前は俺に最初どんな『あだ名』をつけた?」

「確か……中二病?」


臨が眼だけ笑わずに満面の笑みを浮かべる。


「俺はその神を知っている。機械仕掛けの神……デウスエクスマキナ」

「その通りだ。スキル名称がそうなっている」

「つまり、練習なんてしなくても一流ガンマン並に使いこなせる筈だ」

「それで?」

「チュートリアルで能力がバレるのはよくない……何故なら、終了するタイミングが同じくして戦場に出る奴がいたら能力がばれる」

「なるほど」

「だから、ぶっつけ本番でやる」

「はぁ!?」

「俺を信じろ、親友」


その後、臨はショップを回り、欲しい物の金額を計算する。

足りない分は、初期支給の回復薬や装備を売った。

買った物は、インカム、初期装填数9発のデザートイーグル、スナイパーライフル、ライフル用の弾が1つ。


千寿は思った、

今日、このゲームを引退します。







そして『今』に至る。


エントランスで合流した二人は、換金所へ向かう。

4枚のダナケーを換金する。

ダナケーは功績として残る為、現物は換金目的として扱う。

換金額は、プレイヤー死亡時の所持金額である。


「なぁ、臨」

「なんだ?我が友、千寿よ」

「俺は今日、人を殺した」

「あぁ、俺も殺した」

「それなのに、この高揚感と抑えきれない衝動……俺は狂っているのか?」

「その原因は、その手に握られた物じゃないか?」

「かもしれない……やったー!」


千寿は札束を握りしめたまま拳を天高く突き上げた。

4人分の換金額は120万円だった。

ヴァーチャルの仮想世界といえ、流石に高校生の俺達からすると、夢が現実になったようなものだ。


「早速この金で見た目と装備を——」

「まぁ、焦るな。今使ってしまうと資金が無くなる。見た目初心者が、初期支給金の12倍もの金をいきなり使い始めたら怪しまれる」

「ならどうする?」

「弾薬を買って、あと2回行くぞ」

「え?」


この後、疲れ切った千寿と、ウキウキとした表情の臨が装備を揃えたのは、3時間後の事だった。

結局4戦を繰り返し、殺した人数は13人、換金額は400万となり、250ずつ分け合った。


千寿は黒いスーツと防弾チョッキ、現実と同じように眼帯をして、その様はマフィアのようだ。拳銃も2つに増えている。

一方臨は、背中にライフルを背負い、黒いマントに身を包み、口元をマフラーで覆っている。他にも、コンバットナイフや細々としたアイテムを買って、肩から下げたバッグにしまっていた。


「なんか地味だな」

「千寿は派手すぎるだろ」

「だからこんなにも見られているのか?」

「いや、稼ぎすぎたんだ」

「ん?」

「ほら、見てみろよ」


臨が換金所を指さすと、煙草を吸いながら新聞を読むダンディーなおじさまがいた。


「あれが?」

「リアルでもないのに、ああやって新聞を半日も読む意味は?」

「ないな」

「だろ?ああやって新人に目をつけるのさ。その情報を売って金を稼ぐ」

「金を稼いでも勝たなきゃ意味ないだろ?」

「あいつが情報で新人を殺しているんだ。間接的とはいえ、主犯はあのおじさんだよ」

「んー、現実じみてるな」

「よっぽどな。で、千寿のお望みのギルドの登録人数は?」

「えーっと、確か3人以上で登録後、一週間以内に400万入金で拠点が持てる筈だ」

「なら次は、3人目を探すか」

「そうこなくっちゃ、じゃあ行きますか」

「あぁ」


二人は戦場に向けて歩き出す。

すれ違うように一人の大男が掲示板に記事を張り出した。


写真はスーツの男とマントの男。

タイトルはこうだ、


『期待の新星!?初日で500万も稼ぐ二人現る!明日も二人は生き残れるのか?』





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