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神がいないこの世界、そして僕達は神になる  作者: 秋野紅葉
ジョブチェンジしますか?▼最弱 ▽最強
2/15

『最強』が『最弱』と呼ばれた日

西暦2100年7月——。


『今』現在、少年は下校中である。

白髪に黒い瞳がコントラストを奏でる少年の名は尾張オバリ ノゾミ。趣味はゲーム、好きなものはゲーム、特技はゲーム。オタクですか?と聞かれれば胸を張って応える。


「そうだよ?俺は自分の生き様に誇りを持っている」


彼はゲームを生きがいにしている。勿論、アニメやラノベ、漫画も好きだ。

格闘、シューティング、パズルといった大会に出場しては優勝、部屋にはトロフィーやメダルも飾られている。

ネットゲームに関しては常に上位ランカーだ。


そんな彼が下校中に寄る場所と言えばゲームセンターや、某アニメショップ。

しかし、今日は違う。真っ直ぐに帰るのだ。


何故なら……







時は遡ること3時間前——。







「臨ー、昼飯一緒に食べようぜー」

「あぁ、屋上でいいか?」



二人は他愛のない話を繰り返しながら屋上へ向かう。

ところで、青い髪を肩まで伸ばしている爽やかな少年の事だ。

彼の名は伊万里イマリ 千寿センジュ

伊万里財閥の若き頭目にして、天才という生き物らしい。

左目につけている黒い眼帯は『見えすぎる』からつけているのだ。

瞬間記憶能力だの、速読だの特殊な能力を多々持つ才覚溢れた美少年である。


それが何故、臨と仲がいいかと言えば……


「臨、この間の新作やったか?」

「クロックオブナイツのこと?」

「そうそう!制限時間が付き纏う中での戦闘と謎解き、精密なガンシューティングがたまんなくてさ」

「やったけど、一回クリアして飽きた」

「マジ!?もうクリアしたの!?俺は空から降る宝箱が落とせなくてさー」

「千寿の悪い癖だよ、『点』じゃなくて『線』で追わないと。そういう風に設計されているんだから」


そう、彼もまたオタクである。


出会いは中学の頃、ゲームセンターで臨がゾンビをバッタバッタとなぎ倒し無双をしていた所に、千寿が惚れ込んだのである。

それ以降、スペックの全く違う二人は『腐れ縁』と呼べる『親友』である。


「ところでさ、神々の系譜ティターニアの新しい伝説知ってるか?」

「伝説?」

「あぁ、日本エリアで1チーム10人のチームが争ったらしいんだ」

「普通だね」

「あぁ、しかし一方は警察で名のある銃の名手で、元軍人なんだ」

「それは強そうだね。ゲームなら特化キャラかな」

「もう一方には、炎の使い手で有名な明松カガリがいたんだ」

「あの中二病みたいな人ね」

「結果はどうだと思う?」


臨はパンを頬張る事をやめ、空を仰いだ


「フィールドは?ヴァルハラとアルカディアが戦う事自体珍しいし、情報が足りない」

「ヴァルハラサイドだ」

「なら答えは簡単。明松の勝ちだ」

「理由は?」

「そもそも、あんな開けたエルフの国みたいなヴァルハラサイドで銃撃戦なんて自殺行為だ。隠れても城壁や森といった風に不利な事この上ない」

「うんうん」

「そもそも、兵器と魔法が戦うといった最終段階の局面を最初から行うのが間違っているけど」

「不正解」

「え?」


千寿は微笑む


「なんと、第三勢力の介入で両チーム全滅です」

「はい!?問題になってないよね!?というか、そんな大勢が潜んでいたらばれるよね!?」

「三人です」

「は?」

「三人で潰しちゃったんだよ。これがその記事だ」


千寿は胸元から折りたたまれた雑誌の切り抜きを渡す。

神々の系譜ティターニアでは一回の大戦につき、一回しかプレイできない。

つまり、今回の国の代表を決める戦争には死んでしまった先程の二人はもう参加出来ないのだ。

それを悔やむ記事が書かれている。

警察官の星、軍人の見事な戦略、中二病、中二病……

一番大きな写真には黒いローブを着た三人が写っている。

戦況が凄まじかったのか、所々モザイク処理がされている。


「この台詞は本当か?」

「本当だから書いてあるんだろ?今じゃ大組織って噂もあるしな」

「へぇ……最強ね……」


写真には大きく書かれている。

『最強を謳うギルド、エリュシオンが高らかに宣言した!この戦争の覇者になることを』


「臨燃えてるな?」


千寿はニヤニヤしている


「確か一般参加は5次試験突破だよな?5回も戦争するのは時間がかかるな……」

「まぁ、参加希望者は多いからな」

「んー」

「そこでこれだ!」


ポケットから2枚の細い銀色のカードを取り出す。


「それは?」

「聞いて驚け、神々の系譜ティターニアの参加チケットだ!」

「ありがとう、千寿が友達でよかったよ!ボンボン万歳」

「おい、現金なやつだな」


臨はカードを取り上げ、掲げたり、振ったりはしゃいでいる


「条件があるんだが」

「後から言うのは卑怯だ」

「言う前に奪った賊に言われたくない」

「で、条件は?」

「俺とチームを組むこと」

「えー、千寿下手だしなー」

「まぁ、そういうなよ。バーチャルなら身体能力も加味されるから案外役に立つかもよ?」

「はいはい、イケメンは違いますね爆ぜてください」

「臨だって顔はいいのに、ゲームばっかりしてるから身体能力があがらないだけだろ?」

「はぁ、世界は俺にナイトメアモードしか選ばせてくれなかった」

「なんだそれ」


これが事の発端。そして『今』に戻る。







家にたどり着いた臨はジャージに着替える。

パソコンに24桁のカードに刻まれたコードを打ち込むと、軽くストレッチをする。

ベッドに横になるとヘッドギアをつけて目を閉じる。


さぁ、戦いの始まりだ。


意識が深い海の底に沈んでいく。

夢の中にいるのに意識がはっきりしている感覚だ。

VRMMOで慣れてはいるが、初めてプレイするゲームの高揚感は堪らない。

選択肢が目の前に現れる。

お決まりの項目だ。

名前、仮想身体データの確認、心理テスト。

さぁ、入力は全て——


「では、最後に心の中で『最強』をイメージしてください」


臨の思考は停止する。


そして、停止したまま始まりを迎えた。


とても広いホテルのエントランスのような場所。

目の前から千寿が走ってくる。


「おい!聞いてくれよ!俺カードが——」

「なぁ……」

「え?」


「俺のスキル欄何もないんだけど」



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