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神がいないこの世界、そして僕達は神になる  作者: 秋野紅葉
ようこそ信頼と実績のアストラルへ
14/15

碧眼の狩人

「本当にやるの?」


奏は全身をすっぽりと覆うローブを身にまとい、恥ずかしげにこちらを見る。


「当然」

「御剣さんなら大丈夫!」


2人は距離をとる。


エントランス中央に設置された宣伝用舞台。

マイクやカメラ、背景もホログラムで設定出来てしまう至れり尽くせりの設備だ。


「レンタル料100万かかってるんだから、早く始めてくれ」

「わかったわよ!」


奏は少し怒りながら舞台に上がると、大袈裟にローブを脱ぐ。


「スイッチオーン」


臨は無表情のままボタンを押した。


「どうもー!アールヴヘイムの皆さーん、こんにちは-!」


「おぉ!御剣さん、カメラ写りいいな!」

「そうか?しかしノリノリだな」


「私はギルド『アストラル』の御剣奏でーす!」


「御剣さーん!輝いてるよぉー!」

「オンラインで、世界中継でフルネームとか」


ガスッ


2人の足下に2本のナイフが刺さる。


舞台を見ると影を落とした笑顔で奏がこちらを見る。


「黙ろうか」

「あぁ……そうしよう」


「えー、んんっ。私達のギルドは仲間を募集しておりません。たった3人だけの新設ギルドです!

今回宣伝するのは……」


奏はマイクを持ち直すと、満面の笑みを作る。


「困った人達からの依頼を受けるためでーす!

理由は様々!ミッションの手伝い、ギルド抗争の援護、レアアイテムの捜索、バウンサーの手伝い!

どんな依頼でも困った人を助けまーす!なーのーで……」


奏はクルッと回りウインクする。


「アストラルは困った人達からの依頼を待っていまーす!何時でもメッセージを送って下さいねー!」


画面の下部にアストラルのフレンドアイコンが表示される。


「皆さーん、登録しました-?

では、直接会ってお話するのを楽しみにしてますねー!」


奏は笑顔で手を振る。


「ポチッとな」


臨がボタンを押すと、照明や背景が消える。


「どうだったー?」

「すげー可愛かった!」

「纏さんよりもー?」


ニヤニヤと奏は微笑む。


「そ、それは……纏さん」


千寿が珍しく口ごもる。


「ところで、その格好で『私可愛い?』みたいなのは痛々しくないか?」


奏は改めて自分の格好を見直すと、顔を真っ赤にする。


「臨がさせたんでしょ!?」


蹲り、旧時代のコンパニオンの様な真っ赤な衣装をローブで隠す。


「よーし、奏の着替えがてら拠点に戻るか」

「人の話をきけーっ!」


ーーーーーー4時間前


「はい、皆さん集まりましたね」


臨はソファーに腰かける2人の正面に、大きな袋を抱えて座る。


「で?昨日は話の途中でニコニコしながら消えたけど、説明してくれる?」

「俺は嫌な予感がするけどな……」


「まずは、アストラルは人助けをします。

理由は、新規ギルドに強力な仲間を加入させる為です」


「はーい、先生。普通に募集してはいけないんですかー?」


「はい、奏さん。普通に募集して、初心者同然のコネクション等で本戦参加しているような弱者を加えない為です」


「人が多い方が戦略が組みやすいんじゃないのか?」


「俺はそこまで多くの駒を抱えて、戦略を組みたくないです。例えばチェスをするのに、相手の駒の倍を用意しても邪魔ですよね?向こうが猛者なら、勝てる可能性も減りますよね?

それなら少数精鋭で指示を出したいです」


「ふーん、続けてどーぞ」


「千寿さん、真面目に聞いて下さいね?次に、このゲームでは金策やレアアイテム、限定装備を獲得するためのミッションがあります」


「せんせーい、金策ってなんですかー?」


「お金を稼ぐ方法です。依頼内容がミッションなら、攻略ついでに報酬も獲得出来ます。

そして、賞金リストの討伐なら、余計に儲ける事が出来ます」


「もし、依頼内容がギルド抗争なら?」


「はい、千寿さん。いい質問ですね」


「馬鹿にしてる?」


「いいや、ちっとも。本当にいい線きてるよ。

それが1番欲しい依頼だ。情報屋から上位ギルドの情報を買うには高すぎる。

実際に援護という目的で内情視察、負けそうなら離脱する。1番手っ取り早い方法だろ?」


「でも、逃げ切れるの?」


「お前達2人のスキルがあれば余裕。欲を言うなら、もう1人後方からの支援要員が欲しいな」


「理由や目的は理解した。でも、新設ギルド相手に依頼なんてくるのか?」


臨はニヤリと笑う。


「最初の何件かをこなせば、信頼と実績で依頼はとれる。最初の依頼を受けるための方法がこれだ」


紙袋をドサッと音を立て、机に置いた。


ーーーーーーそして、今に至る。


「いやぁ、大盛況。沢山のメッセージが届いてるよ」


臨は機嫌良さそうにソファーに腰かけ、メッセージを読んでいる。


「紙袋の中身がこんな派手な服なら着なかったのに……」


「まぁまぁ、結果が出てるし!それに……」


「それに?」


着替えを終えた奏は、ソファに腰かけた千寿を覗き込む。


「ごちそうさまでした」


親指を立て、いい顔で千寿が言った。


「はいはい、お粗末様でしたっ!」


奏が千寿の後ろ頭を軽く叩き、隣に腰かける。


「いてて……で、収穫は?」


「ほとんど奏を口説くようなメッセージだな」


「そりゃそうでしょ」


「それって、私が恥ずかしい思いをした意味が……」


「お、あったぞ!早速の依頼だ!」


「内容は?」


千寿が前のめりになる。


「楽しいお仕事だよ。さぁ、行こうか」


臨は立ち上がり、出口へ向かう。


「行くって、何処に行くんだよ」


臨は振り返り、ニヤリと笑う。


「伝説への挑戦だよ」







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