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神がいないこの世界、そして僕達は神になる  作者: 秋野紅葉
神に一番近い者
12/15

燻る魂

静かに扉が開かれ、黒紫のローブがゆらりと入ってくる。


「お帰りなさいませ、レア様」


スッと立ち上がり一礼をする。


「何か変わった事は?」


レアはゆっくりと椅子に腰をかける。


「いえ、特には。しかしーーー」


『ーーーは困った人達からの依頼を待っていまーす!』


モニターから音声が流れるのを遮るように電源を切る。


「随分と役者が板についているなぁ……と。」


「それは皮肉かい?まぁ、『彼』がそれを聞いたら鼻で笑いそうだけどね。」


レアは窓際のいつもの椅子に、いつものように座り、いつものように机に肘をつき、俯く。


その様は、悪の根源である。


「それで、この後は如何しますか?」


火城がソファの背に腰掛け、赤く長い髪をかきあげる。


「そうだね、まず現状を把握しよう。」


そう言うとレアはアイテムスクロールを開き、地図を2人の間に開いた。


「ヴァルハラサイドは前回の作戦で中小のギルドは痛手を負って動けない。1番大きなギルドである、『円卓の騎士』はまだ動く気配がない。

そして、アルカディアサイドも同様だが、大規模ギルドの『武装戦線』は大量の仕入れを行っている。最後の砦となる、両陣営の連合ギルド『神槍連合』は幹部が特定出来ないまま……」


「神槍連合のマスター、神威は今日の放送にゲストで出ていましたよ?」


「何か言っていたか?」


「エリュシオンは眼中にないと」


「へぇ」


レアは赤い瞳を一瞬揺らがせ、笑う。


「潰しますか?」


火城も笑う。


「いや、計画はまだ序盤だ……踊らせておこう。」


レアはゆっくり立ち上がると窓を見る。


火城はグローブの中で炎を針状にし、レアに向けて投げると、レアのローブの前で止まる。


「惜しいね。もう少し速かったら危なかったよ。」


レアは口元を歪ませ、振り返る。


「またまた……少しも惜しくないのはわかっていますよ。えぇ、わかっていても止められない。」


火城は悦に入った表情で笑う。


レアは再び腰掛ける。


「火城、君を傍に置くのは約束だから仕方ないけど、少しは自重したらどうだい?」


「強すぎるレア様が悪いんですよ?全く……俺を滾らせるのは貴方だけだ」


やれやれとレアは手をひらひらと振る。


「さて、次の一手だが……資源を集めて欲しい。

勿論、拠点の新入りを連れて行って構わない。」


「仰せのままに。」


「それと……力が無い者達の遠吠えが煩いから、ヴァルハラサイドの土に関する能力者を探して欲しい。」


「俺の炎では?」


「規模が違う。それに火城、君の力は殲滅力に特化しているのだから、君が切り込まなくてどうする?」


「では、早速……」


火城が指を鳴らすと、窓から外へ向かい、赤く輝く光が走ると、森の中で火柱が上がる。


「おいおい、森を燃やすなよ?」


「まぁまぁ、消化係がいるじゃないですか。」


火柱が氷山に変わると、纏がバタバタと走りながら入ってくる。


「全く貴方は!」


「まぁまぁ、纏……」


レアが纏を見ると、青色のエプロンに、右手に包丁、見事な台所スタイルである。


すると、纏が視線に気付き、自分の姿に目をやる。


「こ、これはそのっ!」


「レア様?メイドを雇ったのですか?」


火城が口元を押さえながら笑うと、頭部に氷の槍が翳される。


「オーケーオーケー、冗談だ」


火城は手をひらひらさせ、肩を落とす。


纏は顔を真っ赤にしながら、部屋を出て行った。


「さて、行きましょうかね」


火城はローブを黒のスーツにローブを羽織ると、煙草に火を付ける。


「あぁ、そうだ……これを持って行きなよ」


レアが青白く輝く指輪を投げる。


「これは?」


「さっき見かけて買っておいたんだ。半径5メートル以内のダナケーを自動回収してくれる。君向けの装備だろ?」


「流石レア様。わかってらっしゃる。」


火城はニコリと笑うと部屋を出た。


「さて、君達は真実を知っても絆を信じることができるかな?」


レアは不敵に笑い、天を煽いだ。


ーーーさて、このつまらないゲームをさっさと終わらせて、王様をこの手で……


俺は今回のティターニアの最終予選でレア様に出会った。


完膚なきまでに敵を圧倒し、蹂躙してきた俺が、全くと言っていいほど手も足も出なかった。


炎の槍も、渦も、あまつさえ隕石サイズの炎でさえも打ち砕かれた。


しかも、あの化け物は為す術がない俺に握手を求めてきた。


「君、強いね。僕と組まないか?望む物を用意しよう。」


望む者?俺はただ目の前の敵を潰せればそれでよかった。だから……


「お前を俺の手で始末させろ」


すると化け物は笑顔で言ったんだ


「あぁ、いいよ?やれるものなら。」


実際、アレの下についてからは凄まじかった。


有名なプレイヤーは皆アレに跪いた。


重火器の雨を避け、火を払い、水を受け流し、雷をかき消し、割れる大地に身を委ねた。


それでもアレは生きている。


こんなにも俺を掻き立てるモノがこの世にあるとは思わなかった。

今では敬意さえはらっている。


それでも俺がアレを潰せたなら……


その時が俺のゲームクリアだろう。


「さぁ、俺を楽しませなぁっ!」


火城は叫びながら炎を片手に森へ飛び込んだ。

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