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神がいないこの世界、そして僕達は神になる  作者: 秋野紅葉
神に一番近い者
11/15

雪解けの灯

ーーーそれはとても寒い日のことでした


私はいつものように買い物を済ませ、夕飯の支度をする為に帰路につく。


そう、いつもと変わらない1日の筈が、何故かとても寒く感じました。


11月中旬

明日は最終予選ーーーつまりは、5次予選。

突破出来ればティターニアの本戦に参加が出来る。


父も母もいつも家にはいない。

それでも寂しさを紛らわす事が出来る程度には裕福である。


いつの間にかテーブルに置かれたバースデーカードと細い銀色のカード。


私が要求した筈なのに、味気ないプレゼントだと感じた。


それでも、私は欲しかったのだ。


『拠り所が』


坂道を下ると、公園がある。


誰しも近所の公園に思い出というものがあるのだろうが、私にはない。


それなのに、足が公園に自然と向かう。


緊張?恐怖?


どうせゲームなのだから死ぬこともない。


そんなものを、私が感じるはずもない。


自動販売機で買ったホットココアを片手に、赤いブランコをサッと払い腰をかける。


「この戦いが終わればーーー」


空を仰ぎ、呟くと


「一人じゃない世界が手に入るって?」


隣のブランコに真っ黒なフードを深く被った男が腰掛ける。


新手のナンパ?変質者?


そんなことはどうでもいい。


『今、この人はなんて言った?』


「そんな怖い顔しないでよ」


男の口元がニヤリと笑う。


微かに覗く長い前髪は、夜空のように綺麗に輝く。


ほんの数秒、男の特徴を見ていると、男は続ける。


「君が求めるものは、そこにはないよ?

だって、何かの力で手に入れるモノではなく、

自分の力で手に入れるモノだから」


長い前髪の隙間に、赤い瞳が寂しそうに揺らめく


「貴方も同じなんですか?」


気付くと、言葉が口元から零れた。

話す気など、更々なかったのに。


男は細く、綺麗な指で瞳を隠す。


「いや、僕は違う。作るのではなく、壊す……。

嫌いなんだ、この世界が。」


男はユラリと立ち上がる。


「君の名は?」


「纏……」


何故か、この男から目が離せない。


「纏……いい名前だね。じゃあ、君の欲しい物が手に入るまで、僕の力を纏えばいいよ。

僕には君が必要なんだ。」


私は運命なんてふざけた言葉に縋ったりしない。


それでも、この時、あの瞬間だけは、目の前に差し出された手に縋った。


これは後日談ですが、彼は2次予選の時に私の戦う姿を見かけて、仲間にしようと思ったそうです。


「探し物をするように人を殺すから、放っておけなくてね。ゲームの中で、親の仇を探しているのかな……と。」


手を取った私は、夕食を済ませ、彼とティターニアで落ち合った。


彼は『異常』な迄に強かった。


実際、撃破数を競う翌日の予選も、私の4倍は稼いでいた。


私も火城も、実際の彼の実力を知っているかと問われれば、定かではない。


あれから半年と少し……


こうして、変わらず彼の隣を歩いている。


「纏?」


「は、はい!」


彼は前髪を揺らし、私の顔を覗き込む。


「どうかしましたか?」


「いや、珍しくわらっていたから……ね。」


慌てて頬に手をあてると、少し、ほんの少し口角が上がっていた。


「いえ……少し懐かしい事を思い出しまして。

そう遠い日の事ではないですが。」


「そうか。ところで……少しは前に進めたかい?」


あぁ……そうやって、また私を外へ連れ出す。

気持ちを見透かして、前へと手を引っ張ってくれる。


だから……私は……


「そうですね……まだまだレア様のお側においていただかないといけませんね」


「あぁ、そうするといいよ。さて、火城を待たせると煩いから、急ごう。」


「はい!」


私は彼の世界を見る為に、何処までも戦い続けよう。





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