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神がいないこの世界、そして僕達は神になる  作者: 秋野紅葉
神に一番近い者
10/15

蠢く闇

ヴァルハラサイド、森の奥の洋館——。


一番奥の部屋で纏と火城は向かい合ってソファに腰かけている。


「で、どうだったんだい?」

「はい?何がですか?」

「例の部隊だよ」

「あぁ、少年も少女もカード所持者でしたよ?」

「使えそうかい?」

「鍛え方次第では……少女は気に入りませんが」

「君ならそう言いそうな気はしていたよ」


火城は少し憎らしく笑った。


扉を開き、黒髪の少年が入ってくる。


『おかえりなさいませ』


二人は立ち上がり、礼をする。


「ただいま。二人とも進捗を聞かせてくれるかな?」

「はい、所属10名以下のチームを10程潰しました」

「それは凄いね」

「いえ、レア様には及びません」

「謙遜しないでよ。褒めているんだから素直に喜んでくれると嬉しいな」

「はい、ありがとうございます」

「で、纏は?」


「はい、目ぼしい人物にあたりましたが、力不足かと」

「それは残念だね」

「ですが、選定を行っておりますので、クリアした者は受け入れようかと」

「そ、纏を信じるよ」

「ありがとうございます!あと……」

「先日は失礼いたしました」

「失礼?君は自分の仕事をしただけなんだ、気にしないでよ」

「ですが……」

「僕が守れと言った者を君は守った。充分な仕事だよ」

「ですが、その後の仕事にも……」


レアはやれやれと両手を広げる。


「火城、纏と出てくるから、留守を頼むよ」

「はい、お任せください」

「えっ」

「ほら、行くよ?」


レアは纏の腕を掴んで、部屋から出る。


「あ、あのっ、レア様?」

「ん?なんだい?」

「どちらへ?」

「たまには二人で出かけようじゃないか」


レアは子供の様な笑顔でそう言うと、外へ飛び出した。


外へ出るとすぐに地面を蹴り、空高く飛び上がる。


「うん、ざっと40人かな……纏!いけるかい?」

「はい!」


纏とレアは左右に散って森に入った。


纏は森を駆ける。

前後左右から炎や風の刃、水の槍、銃弾、岩の塊が降り注ぐ。

それを凍らせ、氷の壁で防ぎ、氷の刀で弾き、駆け抜けると、来た道をまた駆け抜ける。

今度は大きな氷柱を作り、氷の槍を投げ、氷の弾丸を乱射し、森の上空から大きな氷柱を落とした。


うめき声のもとへ走り、ダナケーを回収する。


この間わずか5分。


5分で8人もの猛者を瞬殺したのだ。


森の中心まで駆け抜けると、地面に手をあて、目を閉じる。

メキメキと音をあげながら、森を凍らせていく。


「ねぇ、僕も凍らせる気?」


レアがナイフを片手に姿を現す。


「いえ、レア様には意味がないことはわかっていますので」

「纏と一緒だと雑魚を狩るのは効率がいいよね」

「お役に立てて光栄です」

「換金がてら買い物にでも行こうか」

「はい!」


纏の冷徹な表情がぱぁっと明るくなった。







午前4時日本エリアエントランス——。


「1200万か、ある程度買い物ができるけど何が欲しい?」

「いえ、私はご一緒させていただけただけで」

「君だって12人も倒したんだから、何でも強請るといいよ」

「では……」


纏はショップのガラスケースに飾られた花のかんざしを指さした。


「これかい?あぁ、なるほどね……いいよ、これにしよう」


レアはかんざしを買うと纏の髪に飾り付けた。


「うん、似合うね」

「あ、ありがとうございます」


纏は白い頬をほんのりと赤く染める。

が、すぐに冷静さを取り戻す。


「レア様」

「あぁ、バウンサーだね。賞金稼ぎは必至で何より。街中で攻撃するなんて、やっていることはPKと変わらないのにね」

「下がっていてください」

「いや、ここは僕がやろう」


レアが路地裏へ続く道に近づく。


角に差し掛かった瞬間、路地裏から振り子の様に大きな鎌が出てくる。


「よっしゃ!エリュシオンのマスター打ち取った——」

「なんのことだい?」


レアは鎌が通り過ぎた場所に悠々と立っている。


「は?お前、なんで……」

「街中では大人しくしないとダメじゃないか」

「ふっ、ふざけんなっ!」


男はレアの上空からギロチンを落とす。


が、レアはギロチンを手のひらに乗せて遊んでいる。


「嘘……だろ?200キロはあんだぜ……?」

「僕には石ころにしか感じないけど?」


言い終わると、レアはぬるりと動く影の様に背後に回ると、男の口元を押さえ、ナイフで喉元を切り裂いた。


声にならない悲鳴が響くと、地面にダナケーが1枚転がる。


「レア様、お怪我は?」

「したことあったかな?」

「そうでしたね」

「さ、帰ろう」


二人がエントランスから消えた後、通行人達が騒ぎ出す。


「今のってエリュシオンの……」

「化け物かよ……」

「重力魔法か?」

「いや、動きからしてアルカディアサイドで戦い慣れた感じだったぞ?」

「じゃあ、力の強化か?」

「誰か情報は!?」


エリュシオンが現れた場所は常に嵐となる。

いつしかそう言われるようになっていた。









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