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神がいないこの世界、そして僕達は神になる  作者: 秋野紅葉
ジョブチェンジしますか?▼最弱 ▽最強
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プロローグ

都市戦争——

何処にでもありそうな言葉であり、物騒な言葉だ。


流行じみた体感型ネットワークゲームや、アプリ、実際の戦争でも使われる言葉だ。

それが今、世界の中心の海上にある都市『アールヴヘイム』で起きているのだ。


この海上都市は2075年に開発された精神投影システムにより、作り出された仮想都市である。

精神投影システムとは、医療分野にて心身療法等に用いられていたのだが、それに目を付けた新進気鋭のプログラマーがゲームに持ち込んだのが、海上都市の始まりとなった。


「ヴァーチャルの世界に身を投じるのなら、ヴァーチャルになって帰ってくるのも夢があるよね」


当時の雑誌インタビューでプログラマーが語っていた台詞だが、今考えても意味が解らない。

アールヴヘイムの外観は大きなドーム状に見えるが、実際は球状になっており、地下空間までも用意されている。

これで中身は空っぽだというから、海に浮く意味も理解は出来る。

しかし、空っぽなはずなのに半分で仕切られた空間には巨大な都市と、自然豊かな国が見える。

これがアールヴヘイムの凄いところである。


「ホログラムにて映し出された世界は、まるでそこにあるようで興奮さえ覚えた」


これは20年後に某国の頂点に君臨する人が言った台詞だ。

おかげでアールヴヘイムの周辺には今日も見物客が船で押し寄せている。

出店ならぬ商売船まで徘徊する始末。

手に汗握る戦争を観戦する人々は国境を越え、いつしか世界基準となり、実際の戦争を目にする機会が無くなったほどだ。

何故なら、全てをアールヴヘイム内で決めることが可能になったからだ。


そして更に5年後、遂に国の代表を都市戦争で、世界の王を都市戦争で決めることになった。


つまり、この戦争の勝者は世界を牽引する権力を与えられる。

ルールは簡単、アールヴヘイムに入場すると人は『イコール』という神の血が流れる神人セミデウスとなる。

神人には投影者に見合った力が与えられる。

手から火が出せたり、水を操れる魔法を使役する『ヴァルハラ』。武器や兵器を使う『アルカディア』。

それぞれ得意とするフィールドで戦っている。

戦い方も様々で、一匹狼や、ギルドという徒党を組む者、国家を作ろうとする者、騙し、騙され、現実より現実みたいになっている。

そして、ゲームだがゲームのようにHPやMPと言った概念も存在しない。


普通に死ぬ——


これは参加者のコメント。死ぬと『ダナケー』というコインとなり、これを一番集めた者が勝者となる。

システムで制限されているとはいえ、痛みや感覚もある為、参加者には覚悟も必要となっている。


リアルなヴァーチャルを求める人々に与えられた現実。


いつしか人々はこの都市戦争を『神々の系譜ティターニア』と呼び始めた。


理由は簡単、このゲームには隠し要素がある。

『才能』という言葉が適用される。大きな火を操れる人だったり、ビルを丸ごと投げれる人といった様に、見合った力が発現される中、神の代行者ともいえるような力を発揮できる者が現れる。

その手に浮かぶ神の名を刻んだ黒いカードを持つ人々を神人達は神と呼び始めた。







『神がいないこの世界、そして僕達は神になった。』







ヴァルハラサイド日本エリア、森に囲まれた洋館の一室


貴族の屋敷を思わせるような絵画、壺、気品のあるソファーを両側に構えた大理石の机。

それに向かうように置かれた執務用の机を背にして、少年は窓の外を見る。


黒紫のローブに赤く刺繍で紋様が施され、綺麗な黒い髪が映えて見えるほど品性を感じる。

端正な顔立ちの少年は、鋭い眼光で赤い瞳を動かした。


「突っ立っていないで入りなよ?」


扉の音と共に赤髪の男が入ってくる。


「気づいてました?」

「当たり前だ。僕を誰だと思っているんだい?」

「流石、王の器を持つレア様は違いますね」

火城カジョウ、僕をからかっているのかい?」


二人は顔を見合わせながらソファに腰かける。


「で、進捗は?」

「睨み合いが続いていますね。暫く動きはないかと……」


火城は黒いグローブをはめた手を組み俯く。

暫くの沈黙が続き、静寂を切り裂くように黒い髪を靡かせながら、少女が入ってくる。


「均衡が崩れたそうですが、どうなさいますか?動きますか?」

「遅くないかい?レア様が呼んでいる時くらい急いで来たらどうだい?」

「火城、マトイは偵察していたんだ。仕方がないだろ?まぁ、座りなよ」


纏は火城の隣に少し距離をとり腰かける。


「戦況は?」

「五分といったところでしょうか……お互いに神を有していないようですし」

「そうか……火城、君なら一人でどれだけいける?」

「そうですね、片方のチームを潰すくらいならできます」

「となれば、残りは10人だが……纏、いける?」

「レア様が望むのであれば」

「決まりだ」


レアは立ち上がり、二人に手を伸ばす


「待ちわびた僕達のデビュー戦だ。派手にいこうじゃないか!ここから僕達のギルド『エリュシオン』は栄光の道を辿る」


『はいっ』


二人は手を取り立ち上がる。

部屋を出て、赤い絨毯が敷かれた長い廊下を歩いてゆく

時折後ろで火城と纏が言い争いをしている。


仲間と言うものは悪くない。

そう思いながらレアは大きな扉を開けると戦場へと駆けて行った


これは『今』より三か月前のお話……


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