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ポルターガイスト

作者: 神名代洸

だだっ広い建物内は綺麗に整頓され、生活感があった。

だが家主はいない。

今はというより今もといったほうがいいのかもしれない。

以前までは賑やかだったこの建物内だが、2年前のあの日から人々の笑いも声もしなくなった。

2年前のあの日、家族の大事な一人息子が病気で亡くなった。

夫婦は打ちひしがれ、妻は泣いてばかりいた。その頃から不可解なことが起き始めたのだ。

置いてあった場所から離れた場所に移動していたり、物が消えたり…。

始めは大したことではないとタカをくくっていたが、ある日目にしたのだ。コップが一人でに動くのを…。妻は驚き夫に打ち明けたが、夫は信じていなかった。

そこで妻はビデオカメラを購入し、ある部屋に設置した。そう、息子が亡くなった部屋だ。

始めは何も変化がなかった。早送りしてどれくらい経った頃だろう…パン!パン!とラップ音が聞こえ出した。そして息子が大事にしていた人形の向きが徐々に変わっていく。

タンスに置いてあった写真たてが倒れてタンスの後ろに落ちていった。

ビデオカメラにはそれ以外にも映像が入っており、人が歩く音が聞こえてきたりしていた。

「あなた。これでも信じられない?」

「何て事だ。これは一体…。」

「きっと息子よ。息子が帰ってきたのよ。」

「まさか。あの子は死んだんだよ。帰ってくるわけがない。」

「じゃあ、これは何?これでも信じられない?」

「わからない。だが、このままでいいわけじゃない。」夫はそう言うと霊媒師を何処からか連れてきた。

「ここには霊がいる。だが、あんた達の子供じゃないよ。」

「なんでだ?そう言い切れるのか?」

「ああ、言えるね。だって、そこにいるじゃないか。歳はそうだね……四十代の男と、他には…。」パン!パン!ラップ音だ。

「とにかく伝えたからね。わたしゃ帰るよ。」それだけ言って帰ってしまった。

仕方がなかったが、それでも霊はいるということはわかった。四十代の男と他には…ということだったので他にもいるのかもしれない。夫婦は息子であることを望んでいた。

パンパンとラップ音と同時に人が歩く音。何かが引きずられる奇怪な音。それでも夫婦は引越ししなかった。

どうしても息子の事を考えてしまう。そうなると引越しはできなかった。

しかし現象は徐々にエスカレートしていく……。

ある日、妻がキッチンに来た時、それはいた。全身真っ黒な人のような塊が。

その塊の周りには食べ物や食器類が散乱していた。驚いた妻が叫ぶと、その塊も瞬時に消えてしまった。

それは息子ではなかった。別の誰かかもしれない。そう考えた妻はお祓いをしてもらうことに…。霊媒師がお祓いを始めると食器類が飛び散り、ラップ音が聞こえてきた。

「この霊は家自体に取り付いてる。家自体は諦めるしかない。逃げましょう。」

どうしても仕方がなかったが家は諦めることに…。しかし売ることもできず別に部屋を借りて一年に一度命日には訪れていた。

ほんのひと時暖かな光に囲まれて少年の遺影は微笑んでいるようだ。

だが、怪現象は続く。

二度目の命日の日、夫婦は揃ってやって来た。息子との思い出の詰まったこの家に…。

昼間でも怪現象は続く。

バタンと戸が閉まったり、ドアが開いたり、カサカサカサと何かが這う音が聞こえたりと、夫婦はさすがに怖くなって息子の想い出の品等を持って家を飛び出した。

その後家を手放すことにしたが、買い手はつかず、空き家となった。

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