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手足の長さが違うことが、体術に大きな影響を及ぼすことを紡は初めて知った。紡の放った蹴りは十夜には届かず、逆に十夜の蹴りはあっさりと紡に届き、まんまと食らってしまう。数歩後方に飛び退いても、元々手足の長さが違う十夜の蹴りは問題なく紡に届いた。
ならば蹴りが届いた際に、攻撃を横に受け流せばいいと思うだろうが、これもなかなか上手くいかない。受け止めたはいいも、流す前に次の攻撃が飛んでくる。そちらに気を取られると、あっという間に壁に吹き飛ばされている。
「痛っ」
「……大丈夫か」
思い切り体を壁に打ちつけ、何度目かになる痛みを堪えて体を起こすと、十夜が心配して顔を覗き込んできた。手加減をしないで欲しいと言った手前、助け起こさせているのが申し訳ない。
打ちつけた背中に走る鈍い痛み。咄嗟とはいえ、受け身が取れていたから打撲程度で済んでいるのだ。これが受け身なしだったらと思うとぞっとする。間違いなくどこか骨折はしていただろう。
「やっぱり、手加減するか?」
「しなくていい」
彼がこのセリフを言うのはもう何回目だ。体術の訓練をし出してから、毎度のように吹き飛ばされている。
そりゃあ相手側にしても、こうして毎度毎度、吹き飛ばされているようじゃ心配して言いたくもなるだろう。一息ついてから身体を起こす。額に浮かぶ汗をタオルで拭い、十夜と向かい合った。
今日で訓練し出して一週間になるが、腕は確実に上がってきていると十夜は言う。紡としては、まだまだ彼には及ばない。ゆっくりと息を吐き出しながら、構えを取る。心頭滅却とまではいかないものの、目の前の相手に集中をしてから紡は蹴りを放った。
「……あともうちょっとだったのに」
訓練場の畳に大の字で寝転がりながら、紡は悔しそうに顔を歪める。訓練服の袖なしの黒のタンクトップから覗く両腕には打撲痕が痣になっている。結局、今日も十夜に一発も入れられず、また壁に吹き飛ばされた。得られたものと言えば、いつもの汗だくで痣だらけの体ぐらいだ。
「間合いの詰め方、攻撃の仕掛け方は申し分ない。ただ、お前は攻撃を仕掛けた後に油断するのはやめた方がいいな」
同じく隣に胡座をかいて座る十夜は、汗こそはかいているが息は一つも切らしていない。確かな実力の差が垣間見えるのが、さらに悔しさを倍増にさせる。
「なんでそんなに強いの?」
紡はここ一週間で最も疑問に思っていることを聞いてみた。彼はタオルで汗を拭いながら横目で紡を見た後、室長から習った、と言った。
「納得。道理で強いわけだよ」
到底敵いそうにないと思いながら、ふと彼の言葉に首を傾げた。記憶を思い返してみても、やはり違和感を感じる。
「咲夜さんって、十夜のお父さんなんだよね。室長って呼んでるんだ」
「ああ。室長は、俺の実の父親じゃないからな」




