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八月十四日、午後六時。目の前の事態に混乱していた。地面に横たわっている彼女の傍らに紡は膝をついた。正確には崩れ落ちた、だ。
智子は眠るように絶命している。血の気ない顔、綺麗な瑠璃色の瞳は瞼に隠れて見ることが出来ない。肌に触れると冷たかった。ひんやりとした冷たさが指から伝わってくる。
三日前、彼女と連絡が取れなくなった。初めはいつものように事件を調べるのに夢中になっているだけだと思っていた。しかし、一向に連絡が来ない。そこでやっと何かあったのだと分かった。
すぐに西地区にある智子の自宅へ向かった。
「早く……! 早くして!」
途中で信号に引っ掛かる。こんな一大事でも、信号待ちをしなければならないのがもどかしい。青信号に変わったと同時に走り出す。荒くなる呼吸と忙しなく脈打つ心臓の鼓動に耳を傾けながら、ひたすら走る。
「倉田」と書かれた表札と門を勢いのままで走り抜け、ようやくドアの前で足を止めた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
流れ出る汗を拭う。乱れた呼吸を整える。僅かに喉が痛んだ。いつもならロックが掛かって、本人の許可がないと開かない自動ドアがあっさりと開いた。
異常だ。そう考える間もなく、一気に中へと駆け込む。リビングに入ると、そこには誰もいなかった。自宅にいてくれたらという淡い希望は音を立てて消えた。焦りが募る。時刻は午後五時半。
「どこに行ったの?」
再び外に出た。彼女が行きそうな場所を探し回った。そして、ようやく見つけたのだ。彼女の自宅近くの路地で、眠るように絶命している親友を。
『ねぇ、紡』
『何、智子』
『部活作ってみたんだけど、どうかな?』
『部活?』
『そう、部活』
『何の?』
智子は得意げにけれども無邪気な顔で笑う。
『もちろん、事件についての!』
智子らしいと思った。当時、運動部から声を掛けられていた紡は、それらを蹴って親友が作った部に入部した。彼女が作った部活なら面白そうだと思ったからだ。
「うぅっ、あぁ……!」
嗚咽が漏れる。智子と過ごした二年間の思い出が頭の中を駆け巡る。
「智子、まだ寝てるの?」
震える声で呼びかけながら、体を揺するが起きない。
「風邪、引いちゃうよ?」
揺する。それでも起きない。
分かっている。何故起きないのか。何故こんなにも体が冷たいのか。分かっていても。それでもまだ生きているかもしれないだなんて、そんな都合のいい考えが頭の中を巡って。紡は彼女の体を揺すり続けた。




