表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 藤崎 慈恩

今回のお題は『雫』。

『雫』をテーマに1つの詩を作ってみました。



  一粒の小さな 小さな水滴が 

 僕の掌へとぽとり 雫となって流れ落ちた


  冷たく 静かな空気を潤すように

 僕の元へと 流れ落ちた


  その雫は仄かな塩の香りと 酸味のある苺を体に纏う

 スイーツのようで 甘さの欠け落ちた不良品



  この匂いを僕は知っている



  何処と無く懐かしさが有り

 記憶を掘り起こそうと 探しても

 海のように深い 深い溝の中に落ちたまま


  たった一滴な筈なのに 

 人一人抱えているような 重さを感じる




 ぽとり




  “それ”は 透き通るような透明で 

 僕の掌へと落ちた


  先ほどの雫とは違い 

 僕の中を潤す恵みの雨ように 掌へと染み込んでいく


  匂いもしなければ 重みも感じない

 不思議な感覚

 



 ぽとり




  また一粒 小さな雫が僕の掌へ落ちてきた




 ぽとり ぽとり

 




 _苦しい。


  そんな僕の言葉に続くように 空から透明な雫がぽとり

 また ぽとりと激しさを増していく


  まるで 僕と一緒に苦しんでいるようだ




  でも なぜだろう




  なぜ僕の心は “苦しい”と感じているんだろう

 どうしてこんなにも たくさん“雨”が降っているのだろう




  “それ”は 不思議なくらい静かで

 本当に落ちて来ているのかも わからない


  なのに


  僕には聞こえる小さな声




 「・・・あれっ・・・」



  ふと見た右手に落ちてきた小さな雫に

 僕は思わず声を漏らした


  この雫は 僕の手へと溶けていかない


  溶けていくどころか 僕の手を通り抜け

 アスファルトを黒く滲ませた


  どうしてだろう


  まるで “雨”のようだ


  これが感じたように 本当の“雨”ならば

 今まで僕の掌に落ちてきた 雫は

 いったい なんなのだろう



 ぽつ ぽつ


 

 「     。もう、ひとりで抱え込むなよ・・・」



  たくさんの雫たちの中に置かれた 透明なガラス

 当たった雫たちは音を変え 左右に弾かれていく


  ガラスの中には 僕と先ほどの声の“持ち主”



 「一緒に帰ろう。」



  僕を包み込んだ 温かなぬくもりは

 僕をやさしく包み込む“何か”が発した言葉は


  何故だか 僕の体中に染み渡り

 雫 全てを蒸発させた


  命の温かさを 僕へと直接語りかけながら


 

  そうか 



  気がつくと あれだけ降っていた雨がぴたりと止み

 温かい太陽の日差しが “僕たち”へと降り注いでいた


 _わかったよ。僕が無くしていた大切なものが

  

  必死になって自分を “偽り”という名の檻に

 閉じ込めてまでも守っていた 

  守り抜こうとしていたものは ひとりで守るには大きすぎたんだ



 「・・・ありがとう。」 



 僕が無くしていた大切なもの


 それは



 






読んでくださった方々、有難う御座いました。

時には、思いっきり泣いて下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ