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ORIGIN LEGEND  作者: 星月夜楓
レイズ編
7/27

第六説 我が名はゴモリー、幻惑の魔女

前回までのORIGIN LEGENDは。

見回りに来た巨人の軍隊。そのうちの一人を片付け、他は永劫の炎で焼き殺すことに成功する。

 朝、起きるとレイガは永劫の炎が消えていることに気付く。それを聞いたレイズはまたあの目となり、サラの部屋へ入る。そこに彼女はいなかった。


「とりあえず外へ出て探すぞ。なんだか嫌な予感がする」


「何故……」


 何故永劫の炎が消えた。同じ能力を持った者が打ち消したのか。


 幸いにも襲撃はなく、村はそのままである。


「サラ、どこへ行った」


 村の外へ出ようとすると空間が歪む。


「なんだこりゃあ!」


「⁉︎」


 いつの間にか別のどこかに飛ばされる。周りには何もない、真っ暗な世界。


「どこだここ」


「気配……」


 何か気配がする。気をつけた方がいい。


「ああ、わかっている」


 警戒していると奥からサラが歩いてきた。


「おいサラ! どうしてここに」


 彼女は何かしたのだろうか。彼女の様子はおかしかった。


「レイガァ」


 異常に色気を発し、艶かしい声を出しレイガに近付いてくる。


「……異様」


「まーたこいつはやられたのか」


 あまりの情けなさに首を掻く。


 とはいえ、特に攻撃してこようとする気配はないので倒れ掛ける彼女を支える。


「おいおいまじかよ……」


 なんと彼女はレイガに向けてキスをしようとしていた。


「……」


 さすがにそれは駄目だ。やめろ。


 と、顔を抑え、どうにかやめさせる。


「どうなってんだよ」


 疑問はすぐに解決した。どこからともなく笑い声が聞こえてくる。


「滑稽だなぁ」


「誰だ!」


 大きなラクダに跨った女性がぬらりと現れる。


「私はゴモリー、全てに愛をもたらす者よ。貴方たちはオーガ隊を退けたようだけど、私には触れることすらできない」


 オーガとはあの巨人のことだ。


「愛……?」


 レイズにはそれが理解できなかった。


「そう、愛。その子は今、愛に包まれている」


「何を言っているんだ!」


「実際、赤髪の彼に迫っているでしょう?」


「何しやがったんだてめぇ……」


「父……冷静……」


 父よ、冷静にならなければならない。


「裏切り者にはお似合いよ。……さて、次は貴方にあげるわ」


 次の瞬間、レイズは奇妙な思考に陥る。目の前にいたゴモリーが、別の何かに見える。それは。


「嘘……だろ」


 彼にとっての最愛の人物だった。その名を口にすると、レイガは不思議がる。


「いや、これは幻覚だ。お前は、もう、いないんだ……あれ、おかしいな……いない……? ここにいるじゃないか……」


「幻覚……母……愛……厄介……父!」


 幻覚、なるほど。今、父は幻覚でゴモリーを母として見ているのだ。愛をもたらす者、か。厄介な奴だ。父よ! しっかりしろ! 私の声が聞こえないのか!

 催眠状態となっているレイズに彼の言葉は届かなかった。


「これで完全に青髮の彼も堕ちたわね。恋は盲目ってね。愛とは最大の脅威であり、最大の弱点なの」


 ふらふらとレイズはゴモリーに近づいていく。


「!」


 まずい、父を止めなければ。すまない、今は寝ていてくれ。


 なんと、彼が取った行動は父に対し腹を殴ることであった。


「ぐあっ!」


 一撃で気絶したレイズを彼は横たわらせる。


「なっ、なんて強引な」


「私……天地……」


 私は天地の勇者だ。同じ天地の勇者の弱点は私がよく知っている。見知らぬ他人に父は渡さない。


「何を言っているのか知らないけど、貴方もこれで終わりよ!」


「……」


 レイガは、何も変わらなかった。


「何故……何故⁉︎」


「鳳凰神……神格化」


 せめて、意図だけは伝えてやろうとするレイガ。彼の神格化は、障害も一時的に治してくれる。


「……教えてやろう。私が何故、君の愛の力などを効かないのか。理屈は簡単だ。愛の対象はこの空間範囲内のみだ。サラは勘違いの好意による心の隙間に君の愛が入り込み、私を対象とした。父は、君を私の母として見てしまい、錯覚に陥った。しかし私は、愛を知らぬ。私は普段人との関わりがない。よって幻覚による誰かを映すことは起きない。唯一接点のあるサラは、私が興味を全く持っていない。残るは君のみだが……当然興味などない。反吐が出るくらいにな」


「いきなり話すかと思えば長話するのね……いいわ、なら貴方には家族の愛をあげる」


「無駄だ。私は、母の顔を知らない。私には君の力など無意味なのだ」


「何ですって⁉︎」


 レイガはあまりにも愛を知らなさすぎた。それがゴモリーに対する最大の武器なのだ。


「さぁ、選べ。二人を元に戻すか、私に斬られるか」


 選択肢をあげるほどの余裕を持った彼だったが、サラが邪魔をしてくる。


「なんでほったらかしにするの?」


「悪い、今は君に構っている暇はないんだ」


「私のこと嫌い?」


「嫌いではない……だが、今は我慢してくれ」


「……ふん、さっきの余裕はどこに行ったのかしら。知らなさすぎて扱いに困っているようね」


「……終わったら接吻くらいはしてやってもいい」


「なっ⁉︎」


「本当! じゃあ黙って見ているね!」


「貴様……!」


「今のはとある話にある台詞を私なりに変えてみただけだ。これほど効果があるとは思えなかったがな。……さて、仕切り直しだ。選択肢を選べ」


「その前に一つ聞きたいことはない?」


「君の世迷言など必要ない」


「永劫の炎、私が消したことなんだけど」


「⁉︎」


「ふふっ、戸惑っているわね。何も私はゴモリーという称号だけを持っているだけじゃない。元々私は炎使いなのよ。裏切り者のリリスから聞かなかったかしら。元は人間だって」


「……ああ、よく知っている」


 彼女は語り出す。


「私は炎を自在に操ることができたから、放火魔なんて勝手に呼ばれていたわ。私は人間界が憎かった。だから私は裏世界の王の元へ行き、こうしてもらったのよ! 私は愛を知らない人間の屑に愛を与えるの。誰も偏見をしないように、本当の愛を! 愛に包まれた世界を!」


「言っただろう、世迷言など不必要だと。君のはただの綺麗事だ。君も言ったはずだ。愛とは最大の脅威であり、最大の弱点だと。ならば愛とは、綺麗であり、醜いものなのだ。表裏一体儚きかな」


「黙れ! 貴様に何がわかる!」


「一方的なそれは、非常に醜いものだな。よくわかった。私には愛など不要だと」


「言わせておけば……。神を宿した天地の勇者なんて知らない。私の道を邪魔するのであれば消すだけ。永劫の炎よりも強い炎で、貴方を燃やし尽くす!」


「いいだろう。そんな抽象的な表現しかできない君にやられる私ではない」


「喰らえェ!」


 二本の炎の鞭が飛んでくる。


「選択肢は後者に決定した。君は、私に斬られるが良い」


 鞭は消滅した。


「何をしたの⁉︎」


「我が(しん)たる鳳凰神は、太陽そのものでもある。そのようなチャチな火では、私を燃やすことなどできない」


「太陽……ですって……」


「ひれ伏せ、前者を選ぶなら今のうちだ」


「ふ、ふざけないで!」


「良いだろう。永劫の炎を消した時は少しはできる者だと期待していたが……太陽そのものの熱を喰らうが良い」


 神速で彼女の目の前に立ち、両腕を掴む。


「ギャァァァァアアアアッッッ‼︎‼︎ 溶ける! 溶けてるッ‼︎‼︎‼︎」


「早くしろ」


「ヒィィィィッ‼︎ 嫌だ、イィヤダァァァ‼︎‼︎」


「ならばそのまま溶け果てろ」


 遂には肩まで達した。


「許して、許してェェェ……」


「駄目だ、私達三人を、ましてや母すらも弄んだ君を許すことなどできない」


「さ、さっきは許してくれるって」


「口では簡単だ。そして私は許すとは言っていない。さぁ、行動をしろ。催眠を解け」


「ウァァァアア、やる、やるから!」


「……」


 二人からその気配が消えた。


「それで良い」


 手を離し、ゴモリーを解放する。


「両腕が……」


「自業自得だな」


「そんなぁ」


「魔女とは聞いて呆れる。所詮は人間だな。天地人とは大違いだ」


「……もう、殺して」


「ああ、今すぐ殺す」


 剣を取り出した。後々のレイガリングだ。


「……」


 ゴモリーはニヤリと笑った。それを逃さなかったレイガは一歩引いたが、遅かった。


「かかったなァ!」


 剣があらぬ方向に飛んで行き、それに引っ張られる。


「っ⁉︎」


「くっくっくっ……腕を無くしたのは想定外だったわ……私が火だけを使えるとは大間違いよ!」


 今彼女が発動したのは無機物を自在に操る術だ。ポルターガイストのようなものだ。


「ならば剣を外せばいいだけだ」


 しかし、外すことはできなかった。剣が手に絡みついているのだ。


「何だと……」


「無機物を自在に操るってことは、変形も可能なのよ」


「ぐっ……」


「ひれ伏すのは貴方よ!」


 丸ごと押し潰される。


「ガァッ‼︎」


「ご苦労様でした。貴方達勇者の伝説はこれにて終了」


「まだ、だ……」


「はぁ? なんか言ったかしら?」


「君は……阿呆だな。我が父を怒らせるとはな」


「貴方の父はおやすみよ? 貴方自身がしたじゃない……ぇ」


 ゆらりと立ち上がるレイズがいた。


「なんで?」


「っ……長い夢を見ていた気がするぜ」


「おかえり、父よ」


「レイガ……お前喋られるじゃねえか……いや、神格化か、なるほど」


「なんでぇぇぇっ⁉︎」


「よぉ、さっきはよくも俺にとんでもないもの見せたな」


 彼は殺人鬼の目となった。これまでに見せたものとはまた違い、感情を表している。


「夢の中であいつと話してきた。まだこっちに来るなと言われたよ。そうだな、まだ俺はやるべきことがある。それを残して死ぬわけにはいかない」


「貴様らァ!」


「ゴモリー! 感謝するぞ! お前のおかげで吹っ切れた! こっからは俺の独壇場だ!」


 レイズ、そしてレイガの反撃が、始まる。




「未来永劫伝説の神々を祀られし器。真たるは勇者。冒すは天地。此処に顕現せよ、伝説神! 神格化ァ‼︎」


 これで二人は神格化状態となった。


「父よ、二人で決着をつけよう」


「初めてだな、こういうのは」


 そもそも戦闘自体あまりなく、共闘もなかったのだ。


「ふ、二人だろうと関係ないわ!」


「強気で結構、結構。でも、相手してるのは人間二人じゃない。神二柱なんだぜ。さぁ、俺たち親子の息ピッタリの連携見せてやるぜ!」


 レイガは大量のマグマを出現させ、降らした。


「こんなマグマごときで……。⁉︎」


 レイズは、それに時送りとフリーズを発動させ急速に冷やし、火成岩にさせる。この火成岩こそがオーガを爆発させた時に使ったものだ。あらかじめいくつか作ってあるのだ。


「い、いだ、あだ! いやぁぁぁぁあああッ‼︎‼︎」


 見るも無残に彼女の体を貫いていく。


「痛そう、だな……俺がやったことだけど……」


「情けをかける必要などない。アレは望んで魔王の支配下となった。救いなどない」


「嫌だ嫌だ! なんで私は嫌われるの⁉︎ 私は結構一人なんだ……愛なんて! 愛なんて存在しないんだ!」


 あまりの激痛に錯乱した彼女は、記憶を混同させ、必要以上のダメージが入る。


「……」


「道を外した罪の重さ。我々に付けば、変わったかもしれないというのに」


「……」


 レイズは黙っていた。彼は彼女の事情を知らない。が、今の発言からして何となく察したのだ。


「っ、やっぱり俺のやり方に反する」


「何を言っている」


「俺は、できる限り人の苦しみを取り除きたいんだ。これがそうだというのか⁉︎」


「ああそうだ。こうして殺せば解放される」


「殺せば解放、だと。そんな短絡的思考に育てた覚えはない!」


「先程は調子づいていたではないか」


「そ、それは」


 唐突に始まった親子喧嘩である。


「見ろ、父が戸惑っている間アレは苦しむ。ならばさっさと殺せばいいだろう。情けをかけるのか?」


「俺は……俺は、敵だろうと関係ない。元は人間だったんだ。望んで魔王の配下になるってことは、なんか事情があったはずなんだ。……俺は、一国の王になるんだ。情けをかけなきゃ、その資格はない……」


「父がそういうのであればそうなのであろう。元はといえば私が怒る理由も父、そして母への侮辱からなのだからな」


「その件はもういいんだ。話せたし、そういうことでは感謝している」


「本当に甘いな、父は」


 レイガはゴモリーに近づき、治癒をする。


「なんで……」


「情けだ」


「ふざけないで……」


「私は殺すに値しないと判断した。それだけのことだ」


 表面上の嘘をつくレイガ。本当は殺したいという思いは変わらない。


「勇者って最低の存在ね……」


「……」


 レイガは神格化を解除した。


「ゴモリー、お前の意思を聞きたい」


 今度はレイズが話しかける。


「どういうこと」


「俺たちと一緒に生きるか、ここで死ぬか、だ」


「どっちも願い下げよ」


「なんでだ? 前者なら誰も傷つける事もなくなるんだぞ?」


「そんなことない……結局私を迫害するだけ……そんな惨めに生きるのなら、まだ愛を教えてくれた王の方がマシだ」


「そんなに魔王が好きか」


 ズイッと迫るレイズ。


「ええ、そうよ。あんたみたいにコロコロと調子を変えたりなんかしない。崇高なお方よ」


「そうか……」


「おかげさまで私は苦しくなくなった。あとは世界を愛に染めるだけ」


「一方的にか」


「その通りよ」


「……お前が心の底まで魔族になったのはよくわかった」


「わかってもらえたかし……ら……あれ?」


 次の瞬間、彼女の体は切断されていた。


「父……」


 父よ、結局こうなるのか。


「……俺が間違っていたよ。始めからこいつは苦しんでいたフリをしていただけだ。魔王という魅力にやられてこいつはもう人間じゃなくなってしまったんだ。だから、俺の救いの対象じゃない」


「……」


 あくまでも彼の意志は人間のみ、である。魔族は絶対な敵だと認識しているのだ。




「ところで、サラは?」


 彼女は疲れて寝込んでいた。ゆすって起こすと、情けない声を上げて起きる。


「……はっ! うわぁぁぁぁ!」


 レイガを見るや否や叫び出す。


「変な事言ってなかった⁉︎ 私、もしかして……」


「肯定……」


 ああ、言っていた。そして一応ではあるが、接吻の約束もした。


「お前、ませてんな」


「十五……」


 私ももう十五だ。それくらいはいいだろう。


「やれやれだぜ。俺が寝ている間になにやってんだか」


「えっと、ど、どうするの?」


「……」


「レイガはお前がその気でないならしないだとさ。そもそも興味ないらしいし。まあ、どんまいサラ」


「な、なんか勝手に失恋したみたいにしないでよ! べ、別に好きじゃないもん! うわぁぁぁぁん‼︎」


 泣きべそをかく彼女に二人は溜息をついていた。


「さっさとここを出よう」


 未だ彼ら三人は暗闇の空間に閉ざされたままだ。


「そういえばどうするの? ゴモリー、殺しちゃったん……だよね?」


「もしかし、俺とんでもないことしでかした?」


「否……」


 いや、この空間くらいなら、出られるだろう。


「してその方法は?」


 こうだと言わんばかりにレイガは腕を挙げ、時遡りを発動した。


「はあん、なるほどな。ここの空間は別世界の何処かではない。どっかに結界を張って、そこに閉じ込めたというわけか」


「術者……抵抗……」


 術者がない今、抵抗力は無いに等しい。


 結界内を一定の時間を戻すと、元の世界に戻ってきた。


「なんだ、村のすぐ近くじゃないか」


 所詮は大した魔女ではなかったな、と無駄に一言多い(実際は言っていない)レイガであった。


「とりあえず休もう……俺はとんでもないことをしでかしたんだ。一度冷静になって、俺の考えを再認識しないとな」


 これからの行動も考える必要があるため、再びサラの家へ戻る三人だった。

次回予告(1/25予定)

硝煙の匂いに誘われた男が姿を現す。その男、危険物。火気厳禁、取扱注意。レイガもまた巨大な危険物。砲煙弾雨、危機一髪。

次回、ORIGIN LEGEND 第七説 むせる火炎、交わり合う戦い!



解説

時止め:単純な時間停止。世界丸ごとの時間停止も可能であるが、対象そのものの体を止めることも出来る。なお、邪神等基本的に敵対キャラはこれを保持しているため、無効にされることが多いので基本的に使う機会はない。

時遡り:対象の時間を決めた時間に戻す。ただし、十秒後には今の時間に戻るので使う場合はよく考えてすること。

時送り:対象を未来の姿にする、またはそのものの時間を早める。これは五秒間のみ使用可能。

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