第五説 恐怖! 巨人となった改造人間!
前回のORIGIN LEGENDは。
神格化したレイズ。リリスの称号を持った毒使いサラを圧倒する。彼女は操られていたため、操る元を断ち切り、元に戻す。彼女から話を聞き、三人は魔界へと向かおうとする。まずはじめに彼女の住んでいた村へと行った。
デグラストルの大陸は、実は南側に位置する裏世界の大陸と繋がっている。その丁度真ん中がサラが住んでいた村だ。名をトルカという。
そこについた三人は、まず村の様子を伺う。
「全然人いないな」
「廃村」
「皆、攫われたしね……」
この村にもはや生き残りはいない。襲われてから十年も過ぎているため埃、蜘蛛の巣、錆などが沢山あった。
「ここを拠点にするから、どこか一つの家は綺麗にしたいな」
「……折角だし私の家に案内するよ」
サラの家はそこそこ大きく、三人が寝泊まりする程度であれば十分すぎるほどだった。
「お前の親は魔界にいるのか?」
「殺されたんだ。襲撃の時に。三十を越えた人間は改造しても適合出来ないらしいから」
「……すまなかったな」
気まずい雰囲気になる。すぐさま話題を変えようとレイズは手振りをする。
「ええっと、そうだ。もう一度洗いざらい記憶に残っている限りでいいから称号とやらを教えてほしい」
「私のリリスってことくらいしか……あッ、そうだ。確かバハムートとかはあった」
バハムート、別名ベヒモスであり凶暴な大魚だ。
「バハムート……ふぅん、俺と似たような属性使いになりそうだな」
同じ水対決であるなら如何に戦うかが問題だ。
「他には? 頑張ってみようぜ」
「無茶振りしてくれるよ……えっと……」
必死に思い出そうとしているサラだった。
「そうだ!」
閃いた瞬間、大きな地震が発生する。
「敵襲か⁉︎ もう俺たちの居場所が嗅ぎつけられたっていうのか」
剣を取り、臨戦態勢を取ろうとする。が、サラに止められる。
「いえ、これは見回りよ。上手くやり過ごすべきだわ」
「無理だった場合は全部斬ってもいいんだよな?」
「ま、まぁ、そうだけど」
「何、目撃者がいなければ問題ないだけさ。とりあえず身を潜めよう」
そう言って、三人は急ぎ部屋の奥に行った。
見回りは無事終了し、一体だけが残っていた。
「くそ、面倒だな。あいつに怯えて休むわけにはいかないしな……」
「どうするの?」
「殺……」
今殺しておくべきだ。援軍を呼ばれる前に。
「……それはさすがに早計だろ。それこそあいつが帰って来なかったと知られたら面倒になるぞ」
とは言うものの、半ば自分の言っていることにやるせない気分に陥っている。
「黙ってやり過ごすしかないっぽいね……」
「……なぁ、どの道前に進むしかないんだ。俺の提案を聞いてくれるか」
「今更何よ」
「……」
「いつまでもじっと出来ないしさ、レイガの言い分もある。……地獄に付き合ってくれないか」
「どうせそんなこと言うと思った。まあいいわ。あのデカ物多分この村の出身だし、せめてものの救いをしなきゃいけないと思うんだ」
レイズの言うことはお見通しだった。何故ならば彼の細胞が彼女の中にあり、その細胞が彼の意思でもあるため、ある程度彼の考えていることが理解できるのだ。
「一つ言っておく。お前は助けたが、今度からはそういくとは限らない。いちいち相手してたらこっちがもたねえからな」
「別にいいよ。ここに未練はほとんどない。肉親は皆死んだし、住み心地は悪かったし、住民と仲が良かったわけじゃなかった」
「そうか、じゃあそうさせてもらうぞ」
一呼吸を置き、レイズは言った。
「先手必勝だ。レイガ、お前は見ているだけでいいぞ。お前にゃ天地の勇者の闘い方を学んでもらわないといけないからな」
「了」
「私はどうすりゃいいの?」
「適当に援護でいいよ。すぐに片付けるから」
「そう、えらく自信があるのね」
外に出る前に、ある一つのことを彼は唱えた。
「未来永劫伝説の神々を祀られし器。真たるは勇者。冒すは天地。此処に顕現せよ、伝説神! 神格化ァ‼︎」
神格化だ。彼は神となることで姿を変える。
「またそれなのね」
「奇妙……」
見たこともない奇妙なものだ。父は一体何を。
「神格化っていうんだ。俺は今神様なんだぜ!」
「……不、必要」
しかし、詠唱は勇者ならば不必要では?
「まぁ、必要ないけどさ。なんか、こう、言いたいじゃん?」
「ただの格好付けってわけね」
「引……」
格好悪い、ださい、ドン引きだ。
「ちょっ、そこまで言わないでくれよ。仮にもお前の父だぜ?」
「三十五……恥……」
三十五歳にもなってそんなこと言っていたら我が家の恥にしかならん。
「痛い、痛すぎるぜ」
「……なんとなくわかる気がする」
茶番はここまでだった。一気にレイズの目が変わり、あの殺人鬼を思わせるアノ目になる。
「ふざけている場合ではないな。敵が近づいて来た。行くぞ」
外に出て、後ろに回り込んだ。敵は、かなりの大きさだ。十メートルくらいあるのではないだろうか。髪の毛は薬の副作用か殆どなく、まさに人間からすれば醜態と言えるだろう。
「悪いが死んでもらうぞ!
」
後ろから斬りかかるが、グニョン、という音を立て、弾き返される。
「なっ⁉︎」
「敵、発見。交戦開始す」
「やばいぞレイズ! 多分今ので援軍が来る!」
「やっぱ早計だったか! だったら、全員纏めてぶっ潰してやる!」
「私……参戦……」
ならば私も参戦する。
「よし、ならレイガは村の周りを燃やせ! っ⁉︎」
巨人が彼を殴りつける。が、軽く飛ばされた程度で、受身を取っていた。
「了」
レイガは空に飛び、火の玉を投げ出した。
「レイズ!」
巨人に躊躇というものはなかった。すぐさま追い打ちをかけようとしてくる。
「わかってる!」
水の人形を彼に見立て、彼はその場から消えた。 巨人はその人形に夢中であった。殴っても殴っても元の姿に戻るそれを敵として認識したまま攻撃し続けるのだ。
「よし、今だ。サラ! 俺の剣に毒を塗れ!」
「わ、わかった! 行くよ!」
刀身に毒を落とし、隙間に充満させていく。
「よっしゃ!」
それが完了すると、巨人に突き刺そうとする。弾き返しされかけるが、どうにか貫通させて抜く。
「身体が面倒でも中からは無理だろ!」
しかし、巨人は何ともなさそうに振り返ってきた。
「おいおいまじかよ」
奴に毒は効かなかった。むしろ吸収し、身体を肥大化させている。
「だったら、徹底的に弱点を調べるまでだ! 時止め!」
この世界の時間を止めた。動けるのは同じ能力を持つもののみ。
それに気付いたレイガは、不敵な笑みを浮かばせ、ひたすら周囲に火をつけていた。
「剣、毒は無理だ。じゃあこうするしかねえ。お前は肥大化するんだ。とことん肥大化させて爆発させてやるよ」
その開いた口に大量の水を流し込む。
「そしてこれだ。俺は水属性使いだが、何も冷たくすることだけが水属性ではない。熱することも可能なんだぜ」
持っていたのは火成岩だった。それを口に入れる。
「さぁ、ショーの始まりだ」
時止めを解除する。巨人は再び吸収しようとするが。
「無駄だ」
時間遡りを火成岩に発動させ、マグマに戻す。
「全体反応型の水蒸気爆発だ。喰らいな!」
「ぼごっ、グォォォオッッ‼︎‼︎」
レイズは急いでそれを空に飛ばし、村周囲に結界を張る。
爆発し、この戦いを終わらせた。村への被害はなく済むことができた。
「とりあえずこれで村は大丈夫だな」
援軍も炎によって村へ入ることができない。
「でも村に火が移らない? それともしかしたら炎を吸収するかもしれないし」
「それはないな。あいつの炎は永劫の炎って言ってだな、対象のみにしか影響しない、これは村を対象としない限り移らない、そんで炎は消えないから吸収しようとして体内に入れたらドカン、だ」
「ふーん、それならいいんだけど。ところで神格化なんだけど、レイガもその資格あるんでしょ? 勇者なんだし」
「おう、あるぞ。あいつが入れてるのは……えっと」
この辺りに関してはレイズも詳しくは知らないので上手く答えることができない。
「鳳凰、神……属性、炎。……永劫、おかげ」
鳳凰神だ、属性は当然炎、私の永劫の炎を使えるのもこれのおかげだ。
「そう、それだ」
改めて彼女に伝えると頷いていた。
「しばらくは平和ということかしら。今日はなんだか疲れたわ。私あんまり動いてないけど。……精神的に」
「……そうだな。今日はここで休むとしよう」
残っていた食糧をやり繰りし、空腹を抑えた。
その日の夜。
「体洗うから来ないでよね」
汚いままなのは嫌だ、井戸で体を洗うと彼女は言い張っている。
「お前になんか興味ねえよ」
それに対し、冷たくあしらうレイズだった。
「それはそれでなんか傷つく!」
彼女は落ち込みながら井戸へ言った。
「あ……あいつ体拭く布持って行ってねえじゃねえか。レイズ、持って行ってやれ。今ならまだ間に合うだろ」
「了」
レイガもまた井戸へ向かう。
すると、彼女はすでに裸であった。
「早……」
そこまで洗いたかったか。あまりにも早すぎる。
しかし、レイガは動じることなく彼女の肩に手をかけた。
「ひゃっ⁉︎ 何⁉︎」
振り向くと真顔のレイガがいた。
「ちょっ、来ないでって言ったじゃん!」
無言で布を渡し、こう言う。
「体……冷え……」
良い体をしている、だが、冷えてしまうぞ。
と少し変態的に言っているつもりだが、彼女は体が冷えるからこれで拭けと解釈した。
「……ありがとう、布、忘れちゃってて。あんた、優しいのね」
「? 恥……」
何を言っている? 私からすれば眼福だが、お前は恥ずかしくないのか?
「別にあんたなら恥ずかしくないわよ。レイズならなんか腹立つけど」
「興味無……」
そうか、だが私はお前に興味は無い。
「えっ」
と、コミュニケーションが全く出来ていない二人であった。
「……」
そのまま無言で去って行った彼である。
彼女は冷静に考えると、何をやっているのだろう、と更に落ち込み度が増すのであった。
しかし彼が来なければずぶ濡れで服を着るか、裸で戻らなければならないのも事実であった。
「レイズに見られなかったから、それでいいのかもね」
無理矢理事を納得し、その場を収める。
「戻ったわ」
既に就寝しようとしていた二人に声を掛ける。
「おう、明日も早いぞ。さっさと寝るんだな」
「さっきはありがとう」
と、改めてレイガに礼を言う。
「無問題……」
「そう、それじゃ私は向こうの部屋だから。おやすみ」
彼女が部屋から出て行くと、レイズはニヤニヤしてレイガに言った。
「な〜んか仲良くなっちゃってんね。何かしたのか?」
「無……」
何もしていない。布を渡しただけだ。それと恐らくだが、彼女は誤解している。私はとても失礼なことを言ったが、彼女は変な解釈をし、好意的に考えてしまっただけだろう。
「ははっ、あいつバカだからな。勘違いでお前のこと好きになってたら大笑いだ」
「まさか……」
そんなこと、まさかあるまい。どの道私は彼女に興味は無いし、たとえ彼女が私に好意を抱いたとしても無駄に終わるだろう。
「悲しいねえ。ところで、あいつの体は中々のもんだぜ。黒を取り除くときにさりげなく揉みしだいたが、うん、いいぞ」
「変態親父……恥……」
こんな変態親父を持つとは私も情けない。一族の恥だ。
「大丈夫だって。俺の心には彼女しかいないのだから」
「……」
信用ならないと睨みつけるレイガである。
「ま、まぁ、もう寝よう」
「やれやれ……」
二人はすぐに寝た。一方彼女は悶々としてあまり眠れなかった。
ところで、村へ入ろうとする巨人達は次々と破壊され、援軍はなくなったようだ。
次回予告(1/21予定)
魔女。あらゆる意味で言われる言葉だが、これは愛を知らせる魔女だ。彼女は、何を思って魔女になったのか。何故、彼女は自ら魔女になったのか。
次回ORIGIN LEGEND、第六説 我が名はゴモリー、幻惑の魔女




