第三説 可憐な毒、それは鈴蘭のように
前回のORIGIN LEGENDは。
天空界を訪れた彼らはカジノ荒らしをする。そして聖域へと赴き、神龍と言葉を交わす。しかし、その時間は長くなかった。神龍は阿修羅に乗っ取られ、シンリュウからジンリュウへと名を変える。非力な二人はその場から逃れ、デグラストルへと帰る。神龍を倒すことはできるのは光と闇の力を持つ者のみ。
来客は突然に来るものだ。デグラストル宮殿の地上部分にその者はやってきた。
「リーダー、客がいらしたぜ」
作業員によってレイガが呼び出された。レイドは相変わらず地下でだらけている。
「ん、わかった。すぐにいくよ」
仮の地上と地下を繋ぐ出入口から出て、大きく伸びをしながらその者に近付いていく。
「ん〜、誰だろ。俺に来客なんてあるのかな。そんなに外と触れてねえし」
その来客が見えて来たところで立ち止まる。
「結構美人だな」
と、思わず口から本音が漏れる。そう、その人物は女性で二十代手前か前半かくらいに見える。銀髪のショートでどこか艶かしい。
彼は再び歩き出し、彼女の前に立った。
「失礼、どこかでお会いしたかな? それとも初対面? 何かご用でしか?」
とまぁ、普段の彼からはとても思えない口ぶりである。
「ここの長にお会いしたいのだけれど……貴方かしら?」
向こうもまた丁寧に返してくる。
「ああ、一応俺がここのリーダー務めているんだ。よろしく」
「ええ、こちらこそ」
二人は自然と握手をする。
「ところで要件は?」
「貴方が死ぬことよ」
ニッコリと彼女は笑い、彼は背筋が凍った。刹那、彼は手を振り払い、後ろへ数歩後退し、臨戦態勢になる。
「お前、何者だ!」
問い掛けるがそう簡単に答えるはずもなく。
「これから死ぬ人に話すことなんてないわ」
お決まりの文句をつけてきたのである。
「まあ、そうだろうな!」
と、言いながら剣を抜き、突っ込もうとするが力が出なく、その場に倒れ伏す。
「な……⁉︎」
「ふふ、もう既に貴方は終わりかけなのよ」
突然の痛みに呻き声を上げる。
「ぐ、グォォォォッ! なんなんだ、これ! 熱い! 痛え!」
先程握手した右手は高熱を発し、激痛を伴ってくる。
「さぁ、何だと思う?」
しゃがみ込んで聞いてくる彼女はいやらしい女だ。
「熱伝導……? いや、原理が全然違う。お前の手は熱くねぇ……ぐっ……なら、なんだ……」
「てっきり賢いのだと思ってたけど、残念。まぁいいわ。冥土の土産として教えてあげる」
チョン、と核を触ってくる。
「っ、それに触るなッ!」
「答えは毒、よ。私は全身が毒なの。あらゆる毒を生成できるのよ。例えば貴方にあげた毒は、熱毒と神経毒。体が動けないのは神経毒による作用で熱いのは熱毒なの。わかった?」
「ちっ、だと思ったよ! ガァァァッ‼︎」
「強がりはよしなさいな。まだ致死毒を与えなかっただけ親切だとは思わない?」
どこが親切なのか小一時間聞きたいところだが、彼にその余裕はなかった。
「ハァ……ハァ……くそっ、力が全然入らねえ……」
「暗殺にこれほど便利なものはないわ。でも、今回はじっくりと痛ぶって殺したいの」
「けっ……三流のやることだぜそれは」
「三流、ですって?」
その言葉に彼女は逆鱗し、踏みつけてきた。
「うぐっ⁉︎」
ガリガリと擦り付け、痛みを与え続ける。
「こ、この野郎……調子に乗りやがって……!」
それだけではない。その熱は段々身体へと近づいてくる。
「絶対絶命ってところだな……」
「何気取ってんのかしら!」
ダンッ! と大きく踏みつけられる。
「こんなの……あんときに比べたら……屁でもねえ……」
「どこにそんな強気になれるところがあるのかしら!」
もはや彼の意識は途切れそうだった。しかし、途切れることはないのだ。彼には不屈の魂があるから。
「あの地獄を知らねえお前に、わかってたまるかよッ!」
それを言った瞬間、彼の頭に伝説神が語り掛けてくる。
『天地ノ力、解放セヨ』
と。彼はそれに従った。どうやってやるかはわからないが本能のままやったのだ。
「何⁉︎」
突然彼は発光し、これには驚かざるを得ない毒使い。やがて光は収まると、彼の身体は消えてきた。
「どこへ消えた⁉︎」
辺りを探すがどこにもいない。逃げて応援を呼ばれたか、と焦る彼女であった。
「どこにも行ってねえよ」
近くから声が聞こえてくる。しかし、彼はいない。ではどこにいるのか。そう、彼の核から声が出ていたのだ。
「っ、この球体があんたの正体だというの! なら、こうしてやる!」
ナイフを取り出し、それに突き刺した。すると、ボロボロと崩れ出す。
「これで終わりね」
「それはどうかな?」
どこからともなく再び声が聞こえてくる。
「えっ、今これ壊したはずじゃ」
彼女は不可思議、不可解な出来事に狼狽えだす。一種の恐怖すら感じた。
『天地ノ魂、崩レズ。ソノ力、無限也』
空間が歪み、新たな核が出現した。そしてそれに集うかのように原子が分子となり、細胞となりくっ付いていく。
再構成された彼は眼を開け、こう語った。
「俺を殺すのにはあと十年は必要だ」
自らの寿命の事である。
「ふざけないで!」
「さて、お仕置きが必要だな。不意を付かれたが、これでちゃんと戦える」
「どうやって毒を抜いたの⁉︎ どうやってこの状況を脱せたの⁉︎」
あらゆる状況に立ち向かい、それを乗り越えることが天地の勇者なのだ。言うまでもない。しかし彼は言う。彼はお人好しなのだ。
「何、って。細胞の再構成の時に抜き出しただけだ。簡単な事だぜ」
「あり得ない! そもそも細胞を再構成⁉︎ わけわかんないわ!」
「わけわからんくて結構。俺も全然わからん。まあ、楽しもうや」
「ぐぅぅっ!」
レイズの一方的な攻撃が始まる。
次回予告(1/11予定)
彼は神だ。彼は神ではない。概念であり、概念でない。二律背反こそが彼だ。彼は、高らかに叫ぶ。
次回、第四説。唸れ、我が魂! 激動せよ! 神格化!
幻想の中で彼が笑う。
あとがき
今回は二話制です。これと次の話で一つの話です。




