エピローグ ANOTHER ORIGIN LEGEND
時空間転移術を使わず、数日かけてゆっくりと帰還した彼らは身体的に疲れてはいるものの心は苦しくなかった。リヒトに出迎えられるとただいまと返した。その表情は憑き物が落ちていたかのようだった。
デグラストルは既に国として立派なものであった。あとは王がその座に着くだけ。彼は式典の準備に取り掛かっていた。
「面倒なものだな。非常に不恰好だ。動きづらい……」
正装とはそういうものである。普段着ている天地の衣は着ている者に合わせて形状が変化するため合わせやすい。それもあって余計に辛く感じさせるのだ。
「それはそれで格好良いと思いますけどね」
サラは式典に参加しないため普段着だ。デグラストルの住民ではないためである。
「仰々しいのはさっさと終わらせる」
「ほらシャキッとしなさいな。王様がそんなこと言うんじゃない」
リヒトは彼の着付けを終わらせると、背中を叩いた。ムッとする彼であったが仕方ないなと諦め、会場に向かった。
特に問題もなく式典は終わった。軽く挨拶を済ませ、誓いを立て、デグラストル王国として宣言しただけである。それを済ますとさっさと彼は帰ってしまった。
「やはりこれに落ち着くな」
天地の衣に着替え、ソファに座った。
「それで、本当に良いのか?」
サラの移住、及び彼の妻となること。
「何処へでも着いて行きますと言ったはずです。二度も言わせないでくださいよ」
ぷっくり頬を膨らませ、少し顔を紅くする。それに動揺した彼はぎこちなく話す。
「いや、その、確認したかっただけだ。……悪かった。はぁ、ダメだな。また明日にしよう」
「ムードとタイミングってものがありますからね。じゃあまた明日正式にプロポーズしてもらいますから」
ニコッと不敵な笑みをして部屋を出て行った。
「何故あんなに急に強気になっているのだあの子は」
乙女心など理解できないものだ。たとえ両性になれる天地人であったとしても本質的には別なのだから。
結局、大した話もせずにその日は寝てしまうのである。
次の日。とても良い天気である。そう、雲一つ無い蒼い空。あの時のように。彼が見たかったこの景色。丘の上から宮殿を見下ろすと、本当にデグラストルが出来たのだと実感できる。
ここに彼ら二人は立っていた。彼は中々話せず、沈黙が続く。
「サラ……」
言葉が詰まる。妻としてこれから自分を支えてもらいたい、ただそれだけを言うためだけの事が出来ない。戦闘では強者だが、こういう時は弱者だ。
行け、言うのだ。私はこれ以上に苦しい思いをしてきた。これほど簡単なものはない。自分に言い聞かせると絡まった糸が解けてきた。
「私と共に生きてくれ。この国を繁栄させるために。この世界の未来のために」
「……随分と大きくでましたね。でも、それだけですか? それなら私じゃなくても良いじゃないですか」
「うっ」
広く言い過ぎたと反省した彼はすぐに取り繕う。
「そ、それだけではないぞ。私と君の、し、幸せのために。そうだ! 二人で幸せに生きよう!」
もはや何を言っているのかわからないくらい混乱している彼を、フフッと笑い、普段見られない姿を見ることができた彼女は良いですよと答えた。
「はぁ……疲れた」
「そういうのは一人になった時に言ってくださいね。さ、行きましょう。貴方」
どっちが上の立場なんだか。
「あ、待て。これだけは言わせてくれ。どうしても言いたい」
「なんですか?」
丘を下ろうとしていた彼女を引き止める。
言おうとすると突風が吹き、彼の髪を揺らし遮る。そのため一瞬だけ間が空く。その刹那たる刻、彼が見えた。
大丈夫。言うよ。意志は末代まで引き継がれるから。彼は心に秘め、彼が言えなかった言葉を綴った。
「ようこそ、我が国デグラストルへ」
彼女は無言で頷き、彼と共に帰っていくのであった。
ORIGIN LEGEND 完
DARKNESS LEGEND 続
これにてORIGIN LEGENDは完結です。まだ番外編が残っていますが、これはしばらく後になりそうです。先に続編であるDARKNESS LEGENDを投稿していきます。読了ありがとうございました。




