第二十四話 想(オモイノハテ)
前回のORIGIN LEGENDは。
阿大気との死闘の末、これを四度の大技、そして究極神龍・天地斬により倒すことに成功。戦いを終えた彼は倒れてしまう。
……私は死んだのか? 天地の勇者としての運命を終えた私は、死んだのだろうか。
「……」
声が聞こえる。誰の声だろうか。女性の声だ。まさか、母なのか。私を迎えに来たのだろうか。一目見たかった。一言話したかった。私は貴女と話がしたかった。
「レイガ様……」
彼は目覚めた。ここは現実。死の世界ではない。
「サラ……」
「良かった……‼︎」
彼女は飛び込んできた。
「痛い……そうか、私はまだ生きているというのか……まあ、そうだな。私は天地の勇者なのだからな。まだ死ぬわけにはいかないだろう。帰るべき場所がある。そして父と交わした約束。それを成し終えていない私は死ぬ権利を持ち合わせていない」
「怪我とかは大丈夫なんですか?」
「問題ない。既に回復している。……さて、これからどうするべきか」
「旅の続きは厳しそうですね。この戦いで世界はかなり被害に合っていると思います。どこへ行っても追い出されるかと」
阿大気の齎した災害は彼だけではなかった。一つ一つの攻撃は世界全体を脅かしていたのだ。また彼の攻撃も、世界を破壊しかねなかったのだ。
「……ならば、国に帰ることにしよう。旅をする理由は強くなるためだった。強くなれたかどうか。それはわからない。わからないのであれば、実践すれば良い。国の指導者として、な」
「貴方様となら何処へでも着いて行きますよ」
「……私は恵まれているな」
彼にはいつも誰かが隣にいた。レイズ、リヒト、そして二人のサラ。これまでの経験を思い出す。
私が私として初めて意識した時は産まれたその瞬間だった。母は微笑んでいた。父は不器用そうに笑っていた。
母が殺されて以来父は変わった。自分を隠すかのように明るく振舞った。私も母のあの姿を見て、話せなくなった。
やがて十五になると魔王を殺すため魔界に行く。そこでサラ、いやリリスを喪った。私が弱かったために。だがそれをきっかけに強くなれた。
今、二十五。父を亡くした私は旅に出て、サラと出会った。阿大気との戦いで私は私として見出せるようになった。
様々な感情が押し寄せ、彼の目に涙を浮かべさせる。それを腕で拭うと。
「では帰ろうか」
彼は笑いながらそう言った。
「はい!」
彼女の曇りのないその顔は彼を穏やかにさせるのだ。
彼の戦いは終わった。課された試練はあと一つ。
二十四話はエピローグとワンセットとなっています。




