第二十三説 凰(オリジンヘルヘブン)
前回のORIGIN LEGENDは。
遂に始まった最後の戦い。神格化した彼はどうやって阿大気を倒すというのか。
神格化、それは神の力を得た勇者の事。彼の場合、鳳凰神の力を得る事により体が炎の鎧に包まれ、太陽を操る事が出来るようになる。
深く息を吸い込み、止める。手を前に出し、何かを出すような格好である。そして彼は叫んだ。
「この力は私がかつて大切な人を失った時に得た物! もう二度と大切な人を失いたくないため! この力を行使する! 今此処に顕れろォ! 我が魂を削る大いなる力! 零の宝玉‼︎」
その手の前の空間が歪み、光が集まってくる。それが手の平程の大きさになると、零の宝玉が出現した。
「零の宝玉……先の戦で手にしたものか。それで絶対熱を繰り出そうというわけか!」
「いや、絶対熱はあくまでも温度上の絶対熱であって、威力そのものはそこまでない。君たち邪神はたとえ絶対熱であろうと耐えるはずだ。常識が通用しないからな。であるならば、私は威力を優先する。それで君を倒せるとは思えないがな」
彼は決して零の宝玉が最強だとは思ってはいない。それが彼の強みだ。
「綺麗……だけど禍々しい」
サラは圧巻された。これまでの宝玉と違い、輝きが違う。それだけではない。憎しみ、怒り、悲しみ。彼の数々の想いが詰まっている、そう思えた。
「発動せよ!」
宝玉を握り潰し、粉々にする。破片が彼の右手を破り、出血する。それもお構いなく、彼は言わなくてもいい詠唱を始めた。父の遺志を継ぎ、彼自身の想いが炸裂した結果だ。
「我、太陽操りし神。汝、我に仕えし使者。我を崇めよ、我を讃えよ。さすれば道は開き、光が差し込むでろう。……否、道は自らが切り拓く物! それがこの力であり、道そのもの! 神祖・火輪天獄‼︎」
結界は破壊された。太陽から放たれた巨大な光線が結界を突き破ったのだ。それは阿大気に直撃する。阿大気ですらこれは予測できなかった。身構えてはいたが、真上からの攻撃には堪らない。その様子を彼はほくそ笑んでいた。
「ガァァァァァァ‼︎‼︎ 巫山戯るなよ‼︎ 太陽如きで我を殺し切れるかぁ!」
無限に降り注ぐ光線を振り払い、彼に襲いかかる。それは彼の狙い通りに過ぎなかったのだ。阿大気は彼の手の上で踊らされている。
「大切な人達から受け取った力! 究極夢幻・零牙輪愚武零頭‼︎‼︎」
その効力により彼は二人になった。この分裂により阿大気の攻撃は外れ、二人に囲まれた。
「なっ……! また巫山戯た真似を‼︎」
そして彼から天、地の宝玉が顕れた。彼は彼自身として自律したため、宝玉が彼を認めたのだろう。使うしかあるまい。
二人になった事で天地の剣が一時的にだが二つになる。よって嵌められる宝玉の数は八つ。
「父と私の力‼︎ 天地究極・紅蓮激流‼︎‼︎」
「失った魂を鎮まらせる力‼︎ 夢幻神龍・武零頭零牙‼︎‼︎‼︎」
片方の彼は天地究極を、もう片方の彼は夢幻神龍の宝玉を嵌めることでその技が発動する。二人は阿大気の周りを神速で走り、残像を生んでいく。阿大気は狼狽えはせずともどれか本物かは判断できない。これが夢幻神龍の力。それに加え天地究極が加わり、残像が水、火となり阿大気に激突する。四方八方からの攻撃はこれだけに留まらない。本体である二人が斬りつけていく。
「小癪ナァァァッ‼︎」
邪神は魔王とは違う。その圧倒的な力の差を見せつけんとする阿大気は二人を吹き飛ばした。そうすることで二人目は消滅した。
「くっ……肆大邪神には通用しないというわけか……」
「中々な大技の連続だった」
阿大気は少しではあるが彼の力を認める。その上でこう言うのだ。
「だが、所詮其れは我には通用しない。少々危惧したものの我に傷一つつけられない時点で勝負は決まったもの。それだけ大技を使った貴様はもう技は使えまい。諦めるが良い。絶望を見せよ。それが我が糧となる」
「私は諦めない、まだ戦う……!」
「良いだろう。力が回復した我の攻撃を受けてみよ! アトモスフィアトリニティ‼︎‼︎」
なんと阿大気は三つに分かれた。
「貴様は二つ。我は三つ。単純な数でも勝る。三つである意味を胸に刻み、絶望を!」
二つの阿大気が彼を囲み、嵐を巻き起こした。
「ガッ……⁉︎」
彼を中心としたそれは逃げることのできないものだった。力は吸い込まれていき、破壊することもできない。触れれば巻き込まれ、体が木っ端微塵になる。
「これで今度こそ終わりだ。手こずらせやがって……」
本体はサラに近づき、牙を向けた。サラはただ目を瞑っていた。
「やめろ……ヤメロォォォッッ‼︎‼︎」
「死ね……⁉︎」
一瞬、妙に静かだった。嵐の音が消えている。
「まさか……!」
阿大気が振り返ると、光が差し込んでいた。嵐は一体どこへ。
「何故、何故まだそれが残っているというのだ‼︎ 四回だ! 四回も大技を使ったというのに!」
彼の手には握りつぶされた宝玉がある。再び零の宝玉が発動したというのか。
「何故零の宝玉が使えるんだ‼︎‼︎」
「言ったはずだ! もう二度と大切な人を失いたくないためだと。そのためなら……私は何度でも発動してみせよう‼︎」
「そんなバカな……想いの強さだけで気力に勝るとでも言うのか……あり得ない、あり得ない! こんな概念など有って良いはずがない!」
「概念などではない! 君には永遠にわからない! 人々の想いなど!」
「黙れ! ならば再び喰らえ! 何度でも喰らえ! 貴様のその想いとやらが尽きるまで何度でも‼︎」
「無駄だ。もう君は力は使えない。この零の宝玉の発動による効果は、君の力全てを失わせることだ」
「ハッ……ハッ……そんな、馬鹿な……」
「これが私の全力だ‼︎ 天地の勇者とは進化し続けるもの‼︎ 常に全力は成長していく‼︎ 限界などない‼︎ この究極神龍はその象徴‼︎ 散っていった者たちの意志を継ぐ無限の器‼︎ 究極神龍・天地斬‼︎‼︎‼︎‼︎」
「あの技は……あのときの」
阿大気を斬り刻み、ぶっ刺す。そして上空に打ち上げ、四度大きく斬る。究極神龍の印が浮かび、爆発する。そして遥か彼方。いや、太陽に飛び、太陽を帯びた彼は阿大気にぶつけた。
「ガァァァァァァァァッッッッッ‼︎‼︎」
空気そのものである阿大気は一瞬にして消し飛んだ。
消火し、地上に降り立った彼は安堵と共に地に伏した。
次回、最終回二十四話、そしてエピローグ




