第二十一説 侵(シンニュウシャ)
前回のORIGIN LEGENDは。
上手くいかない彼は悩んでいた。そこにリヒトがヒントを与える。彼は父の真似をやめ、自分自身の力で立ち向かうと決意する。あの目は消え、普段通りの彼に戻ったのだった。そして阿大気のいる空間へ突入する。
阿大気の空間。猶予一日の時である。
「さて、様子を見に来たがどうだ? ほう、まだ絶望の淵には至っていないようだな。やはり三日置いて正解だった。だが何も絶望へ追いやるのは奴の死だけではない。空腹、吐き気、頭痛、その他症状が貴様を絶望に誘う。この二日良く死なず済んだと言ったところだ。それだけは褒めてやろう。その気になれば舌を噛んで自殺することも可能なのだからな」
阿大気はサラの様子を伺っていた。彼女の顔は蒼白だが、阿大気の言う通りまだ完全に絶望したというわけではない。まだ現実と認識出来ていない部分が多々ある。
「我自身が貴様を痛め付け、絶望することは簡単だ。しかしそれでは面白味もなく、旨味もない。自らがその気になってこその美味しさ。……楽しみだ」
阿大気が歪んだ笑顔をした瞬間、空間内に大きな音が炸裂した。
「いってぇ〜! なんでこんなところに出てくんだよ!」
「何奴」
「⁉︎」
さすがのサラもこれには気付いた。だがレイガではないとわかった瞬間、また顔を沈める。
「ったくよぉ、もうちょっと調整出来んのかね。おっと、こんなこといってる場合じゃねえな。お前か、俺の次の相手は。良いぜ、さっさとケリを付けようじゃねえか」
「何を言っている貴様」
謎の侵入者は阿大気の話を聞くつもりはなく、唐突に異形を見せた。
「貴様、人間ではないのか!」
「ああ⁈ 人間だよ人間! ってこの姿じゃ人間には見えねえか。まあ良いや。行くぜェ!」
阿大気はレイガにしたことと全く同じ事をしたが、彼には効かなかった。
「何故効かない⁉︎」
「知るかよバーカ! 一体何したか知らねえが喰らいやがれ!」
阿大気は一方的に殴られ蹴られと散々であった。
「我が攻撃を許すなど……」
「これでお前の謎の力は封じ込めたぜ」
「なっ……」
彼の言う謎の力とは、先程のものだ。
「そしてこのコンセプトブレイクという技でお前の存在を確立させた。よってもうお前は概念じゃなくなったんだぜ! ハッハッハ〜! これが対邪神兵器だ!」
「こんなことが……バカな、貴様は一体何者なんだ!」
「えっと……この時代は……そう、俺は鳳凰神。ってのは嘘なんだけどね。ただの通りすがった旅人さ。覚悟しな! これで決まりだ!」
「くっ……!」
大技を決めようとした瞬間、彼は光り出す。
「な、なんだ⁉︎ また良いところで飛ばされるのかよ! 勘弁してくれよなぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」
そう言って彼は消えていった。
「ふん、何かと思えば消えていったとはな。流石の我もこれには危険と判断した。危なかった。……危なかった? 我が恐れている? 我は概念。感情など無い」
阿大気は、『このコンセプトブレイクという技でお前の存在を確立させた』という言葉を思い出すとまさかと考え、息が荒くなる。
「ということは、我はもはや空気ではなくそこにある物体または生物と化している。これでは邪神を生み出せない……!」
サラの方を睨み、斯くなる上はとある考えに至った。
「貴様はもう用済みだ。死ぬが良い! 餌にもならぬ人間よ!」
もはやそれは八つ当たりに過ぎなかった。阿大気の爪が彼女に当たる瞬間、ガキンと金属音が鳴り響いた。
「⁉︎」
「生きたいか?」
聞き覚えのある声。聞き覚えのある台詞。
「まさか、いやそんなバカな!」
「レイガ様……!」
「待たせてすまなかった。さぁ決着をつけよう」
次回予告
「私はもう迷うことはない。君を倒した後世界がどうなるかはわからない。そんな先の話は終わってから考える」
「我は肆大邪神の阿大気なのだぞ‼︎‼︎」
「天地の勇者はいつ如何なる時も」
「お願い、神様!」
「太陽の衣纏し勇者。希望と絶望の狭間でのたうち回り、その先に見出すは紅き覇道! 我は神也! 鳳凰神! 神格化!」
ORIGIN LEGEND 第二十二説 鳳




