第十九説 剣(レイガリング)
前回のORIGIN LEGENDは。
突如として現れた阿大気。それに圧倒的な力で殺された彼だったが、新たな核の登場により再構成される。サラを救うため、準備に取り掛かろうとしていた。
うっすらと目を開けると、すぐに現実が彼に押し寄せる。とはいえ、彼の意思が揺るぐことはなかった。まずはデグラストルに帰り、準備に取り掛かる、そう彼は考えていた。悠長にしている暇はないが、何故か鳳凰神は三日の猶予を知っており、それを知らされた彼は準備期間はあると判断した。
早速デグラストルに転移術で帰還するとリヒトが駆けてきた。
「あんがい早かったな。旅は終わったのかい? ……どうしたんだいその目は」
彼の目はまだあの状態だった。
「わからん。気持ちが昂るとこうなるんだよ。旅はまだ終わっちゃいねえ。用が少しあるだけだ」
「その口調、まるでレイズみたいだ。色々あったみたいだね。訳は聞かないから用をさっさと済ましてき」
理解力の高い彼女はレイガにこれ以上何も言わなかった。彼はすまん、と小声で言い、走っていった。
「子は親に似るものね。あの顔はレイズそのものだったわ」
着いた先は鍛冶屋だった。預けていた物があった。魔族との戦いで使い物にならなくなった剣をどうにか修繕してくれないかと数年前に頼んでいたのだ。それを取りに来た。
「修繕は終わったか?」
「とっくの前に終わってますぜ。むしろ取りに来るのを待ってたんだ。ほら、これがそうです」
差し出されたのは以前使っていた物とは思えないほどの重厚さだった。
「これで壊れる事はもうねぇですわい。但し、俺たちには扱えない、あんただけが扱える物です。何てたって重すぎる。こういうものは普通脆弱性が見つかるもんですが、こいつにはねえ。まるで鋼の意思を持っているかのようです」
「そうか。これなら奴とも戦える」
彼がそれを持つと、彼に従うかのように自在に動かせるようになった。天地の剣とあまり変わらない。
「奴ですかい。何と戦うかは知らねえですが頑張ってくだせえ」
「助かった」
「王様の命令ですもんで、魂込めやした」
「礼は後で払う。今は忙しい」
「お礼なんて良いんです。俺は王様の装備品に携わるってだけで誇り高いもんですわ。この誇りを持てることがお礼代わりって事でここは一つ」
「……そうか、すまないな。またお世話になるかもしれない。その時はまた頼んだ」
「お安い御用で」
後にこの鍛冶屋の跡取りがマシーンブレイドの設計を行うのだがそれはまた別の話。こうして昔からこの鍛冶屋は王家に関わっているのだ。
彼はその後、宮殿内の練習場にやってきた。ここには軍も活用している。
この二つの剣でどれだけやれるかはわからないが、まずは二刀流の練習をしなければ、と彼は考え、ここにやってきたのである。
二つを構えると、バランスを取るのに難しく感じる。どちらかを重点的に持つと、片方が重く感じ、ふらつく。ただがむしゃらにやっても握力が疎かになり弾かれ飛ばされてしまうだろう。
ただ練習あるのみだ。まだ時間は残っている。彼は残り二日をこれに当てるつもりであった。
次回予告
ORIGIN LEGEND 第二十説 病




