レイズ編 エピローグ ORIGIN LEGEND
前回のORIGIN LEGENDは。
帝国軍を切り抜けたレイズ達。レイズの、本当のラストバトルは終わった。時は流れ、十年。
デグラストル領内地上。そこにレイズ、レイガ、リヒトがいた。
デグラストル王国は完成した。しかし、レイズは寿命を尽きそうであった。死期が迫る中、レイガにある事を託そうとする。
「やっと……国が完成したというのに、俺はここで脱落、か。思えば長かったな……なんでこんなに時間食っちまったんだろう……」
国が出来た事に満足はしていても、やはり無念というのはあるものだ。
「はは……残酷だよな……俺、たった三十しか生きられないんだぜ……なぁ、レイガ。悔しいよ……俺は悔しい。ここから先の未来が直接見られないと思うと悔しくて仕方がねえ」
「……」
レイガはただ黙っていた。話せば、父の言葉が聞けるのが少なくなるからだ。だが、どこか会話したいところもあった。
「諦めきれない……だけど、諦めるしかないんだよな……。だから、お前に託す。俺の志を。受け取れ」
彼は横たわりながら天地の剣を差し出す。
「天地の勇者の証だ。それから俺が死んだら天地の衣を着ろよ。それから宝玉も全部お前の物だ。……ここからが本当のお前の物語だ。俺はあいつと……ティエラと見ていることにするよ。ずっと遠いところから……お前を見守っている」
「……やめてくれ」
さしものレイガも涙目だった。無理もない。
「俺らしくないかもな……だけど、良いんだ。お前が俺を継いでくれるなら。そしてそれが子孫に受け継がれるなら。……初代国王はお前だ、レイガ。俺がいなくても、しっかりやれるよな? ちゃんと恋をするんだぞ」
「あ、当たり前、だ」
彼の声は震えていた。感情が抑えきれなかった。
「ああ、良かったよ……自慢の息子だぜ……もうお前の顔が見えねえ……だけど、どんな顔してるかわかる。泣くな、レイガ。上に立つ者は下に立つ者に弱い顔を向けるんじゃあねぇ……」
「だめだ……そんなことはできない……」
「出来る。お前なら」
「っ……うぐっ……」
目を閉じながらも優しい表情をしていた。そして最期の言葉を話す。
「これで最期だ。生まれてきてくれてありがとう、レイガ……」
そして、静かに彼は息を引き取った。
「! 父さん!」
生まれて初めて彼は父を『父さん』と呼んだ。
「あ、ああ」
その始終を見ていたリヒトは顔を背けた。共に過ごした仲間が死んでいく様を見るのは誰だって辛い。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼︎‼︎‼︎」
レイガは精神を崩壊させ、泣きじゃくった。現実を受け止める事が出来なかった。何時だって父と呼び、何かと文句を言いつつ、なんだかんだでノリが良かったのも、全て、彼を家族として愛していたからだ。
「レイガ……」
リヒトは心配しそうに彼を見つめた。その心配は無用だったみたいだ。レイガはすぐに立ち直った。まるで誰かが取り憑いたみたいに。
「……やってやる。ああ、やってやるとも。グスッ、私は……俺は、あんたの意思を継ぐ。この国を繁栄してみせる。だから、安らかに眠ってくれ……」
リヒトは何とも言えない表情で泣いていた。口を押さえ、成長を見守るかのようにしくしくと泣いていた。
「俺も言わせて貰うよ。……俺をこの世に送り出してくれてありがとう」
彼は剣を取り、背中に収め、天地の衣を着た。そして遺体を焼き、粛々と葬儀をした。
数日が過ぎた。そこには精神を回復させたレイガがいた。ここからレイガの物語は始まる。
レイガの自室。
「親父の行った事はまさしく伝説だ。デグラストルの、原初の伝説(ORIGIN LEGEND)。名を残すために
親父をデグラストル零代目国王とする。俺たちの名に相応しい、そうだろう?」
彼はレイズの遺骨に話していた。それに応えるかのように壺は揺れていた。
「なあ、リヒト」
「……どうした?」
「こんな不甲斐ない王様で悪い。暫く旅に出ようと思っている」
「行けばいいさ。あたしゃ止めやしないよ。世界を巡って、また成長したら存分に発揮して頂戴。それまで国はあたしが守ってあげるさ」
「……ありがとう。俺はもっと強くなる。世界に誇れる国を作るために。それに相応しい王となるために」
レイガは外に出た。その先に見据えるものは、何かはわからない。だがいずれ手にする。そのために今彼は、一歩前へ前進したのだ。
ORIGIN LEGEND レイズ編 完
次回予告
今ここに一つの終点を迎えた。次に発車するのは新たな希望。行き先は天国か地獄か。運転するのは彼だ。決められた線路の中でどう路線変更をし、切り抜けていくのか。全ては彼が決める。
次回、ORIGIN LEGEND レイガ編 第十五説 焰
もう一つの伝説が明かされる。