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公爵令嬢はビジネスマナー(EQ)スキルで無双する~知らんけどが口癖の関西人ヒロインをバディに、異世界コンサルはじめます~  作者: 高瀬 八鳳


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伝説の始まりの日、らしい

 OK、OK、大丈夫。私がこの状況をなんとか誤魔化すわ。 

 と、目で彼女に伝えながら。伝わったかは知らんけど。 


 私はポカンとしてアイリーンを見つめるララネ様達に、なるべく優雅に話しかける。多分、アイリーンが何を言っているのかは全然わかってなさそうだけど、一応、保険をかけておこう。


 ここは私の得意技、それっぽい事言って煙に巻く戦法でいくわ。


「ララネ様、素晴らしいですわ。誤解とあれば、素直に謝るその真っ直ぐなお姿に、感動いたしました。わたくし、ララネ様のことがますます好きになりました。アイリーンさんも、感動のあまり、《《下町言葉》》がでてしまったようですね」


 私の言葉に、ララネ様はスッと落ち着きを取り戻した。 

 さすが、悪役令嬢キャラ。頭の回転がはやくて素敵だわ。 

 本当に素材はいいのよね、ララネ様。上手に育てれば、いい側近になってくれそう。


「まあ、マリアンヌ様にそうおっしゃっていただけて光栄です。今回の事では、自身の立ち居振る舞いについて、反省する良い機会をいただいたと思っております。アイリーンさんも、ありがとう。ごめんなさいね、わたくし下町言葉には疎くて、何をおっしゃったのか理解できなくて……」


「い、いえいえ! つい、下町言葉がでてしまって、私の方こそ申し訳ありません。ララネ様が素敵だってことを言いたかったんです、はい……」


 アイリーンも私の言葉にのっかり、下町言葉という事にしてしまった。 

 うん、勘がいいわ。 


 そして、彼女は頭をぺこりと下げた。 

 流れるようにお詫びをするその姿勢に、昔の授業風景が脳裏をよぎった。

 カジュアルにみえて、でもしっかり腰から上半身を倒したお辞儀。

 この子、この世界にはない、この美しい15度をいったいどこで習得したのかしら……。


 と、考える間もなく、今度はララネ様が私に美しい礼を見せた。


「マリアンナ様、恥を忍んでお願い申し上げます。わたくしは、レイモンド様と上手くお話ができなくて悩んでおります。第二王子サイファ様とも仲睦まじくされているマリアンヌ様をいつも羨ましく拝見しております。ぜひ、色々ご教示いただきたいのです」


「わかりました……。では、来週末にプライベートなお茶会はいかがでしょう? ここにいらっしゃる皆さま、全員にお越しいただければ嬉しいですわ。勿論、アイリーンさんもご参加くださいな」「ええ? いえ、私なんかが参加したらせっかくのお茶会が……」


「アイリーンさん、わたくしからもお願いするわ。今回のお詫びも兼ねてご一緒させていただければ……嬉しい、ですわ」


 あら、いいわね。ララネ様がなんかモジモジ照れてる。可愛らしくて可憐だわ。

 アイリーンはいいの?というように、ちらりと私と目を合わせ、それからララネ様に微笑んだ。


「ララネ様、ありがとうございます。では、お言葉に甘えて、私も参加します。皆さま方も、どうぞ宜しくお願いします」

「こちらこそ、よろしくね」

「さっきはごめんなさいね」

「素晴らしいわ、皆さま。わたくし達、お友達としてこれからも、互いに励まし合ってまいりましょう」「はいっ……! マリアンヌ様、ありがとうございます‼」


 マリアンヌはじめ、令嬢方は誰も気づかなかった。彼女達の姿を、見ていた者がいた事に。 


「一応、報告しておくか……」


 木の陰になり顔は見えないが、その者は低い声でそう呟き、そっと姿を消した。



 マリアンヌは、馬車に揺られながら、静かに目を閉じた。


 ふう、とりあえず平和に終わってよかった、よかった。


 ちょっと脳内の情報を整理してみよう。

 17年間生きてきたマリアンヌとしての記憶と、昔の記憶をより快適に、最適に統合させる為に。きちんと現状を把握しなくては。


 前世の私は、ビジネス接遇マナー講師だった。

 しかし、ただマナーの知識を教えていただけではない。

 マナーは人とコミュニケーションをとるための、土台であり根幹だ。

 ただ、敬語がつかえて、名刺交換での名刺の出し方・受け取り方がうまくできて、45度の最敬礼が美しければいいってもんじゃない。

 その概念をどうとらえるか、そして使い方が肝要なのだ。


 時代と共に、人間の意識やルールは変わる。言葉もマナーも変化する。


 私が仕事をしていた間にも、色々な変化があった。

 日本のビジネスシーンでも、成功する為には知能指数だけでなく、心・感情を伴う対応、いわゆるEQスキルが必要だと広まってきたところだった。


 EQとはエモーショナル・インテリジェンス・クオーティエントの略。

 自分と他人の感情を上手く取り扱い、円滑な人間関係を築く技術である。

 洗脳や騙しのテクニック、ではない(はい、ここ重要)。


 相手も自分もハッピーに。

 自己犠牲ではなく、Win-Winな関係をつくる為の、ツールのひとつ。

 自分のメンタルヘルスケアの為にも使える、有用な知識だと思った。


 コミュニケーションをうまくとることで、自分と相手を幸せにする、ビジネスマナーとEQスキル。そこに、いろんなビジョンやらなにやらを加味した私流の接遇マナー。

 それらを教える事が楽しくて仕方なかった。

 仕事に誇りをもっていた。

 ビジネス接遇マナー講師は天職だと思っていた。


 その私が、ライトノベル的な世界に転生したのは、どういう事かしら? しかも、身分の高い、公爵令嬢。


 これはもう、やるしかないでしょう。


『公爵令嬢はEQスキルで無双する』 ってやつを。


 リーシェント公爵令嬢という地位を利用して、この世界にEQを広める。

 円滑な人間関係を築くことの重要性、価値を布教し、多くの人が暮らしやすい社会をつくる。


 そして、静かに確実に、女性の自立を促していく。

 男性というだけでのさばっている無能なヤローどもを蹴散らし、才能ある女性やノンバイナリーの人間が活躍できる環境を整える。


 最終的には、裏で社会を操るラスボスみたいなポジションにつくのもいいわね。

 とにかく、ララネ様とアイリーンと第三王子の、どうでもいい三角関係の恋愛模様なんてクソくらえだ。

 不要な軋轢は排除してやるわ、この私がね。


「クックックッ……ホッホッホ、ホーーホホホーーーーーー!!」


 いけないいけない、つい悪役令嬢ばりの高笑いをしてしまったわ。

 気づいていなかったけど、まあまあ私もこの国の在り方にストレスを抱えていたようだ。性別じゃなく、私の能力をみてよ!って本当は声を大にして言いたかったのね。言えないけど。いや、本音を言ってもめるより、私の思い通りに事が運ぶように上手い事もっていった方がコスパいいわよね。


 前世で培った仕事歴30年のキャリアと、現世のトップお嬢様の地位と知識。

 両方揃えば、私の夢想も、実現可能なプランとなる。


「フフフフ……、フォーーフォホホホホホーーーーっ!!」


 自分の身に起こった転生への驚き、戸惑いはある。

 でも、それ以上に、これから私が始めるであろう一大事業に、ワクワクとドキドキが抑えられないわ。


 まずは、必要なことは現状分析。それからゴール(仮)をどう設定するか。

 ララネ様達とのお茶会で、さっそく色々実験してみましょう。

 トライ&エラーを試して、この世界でのやり方を探っていかないとね。 


 アイリーンとも会って、二人だけで話をしなあかんわ。彼女も絶対、転生組やわ、間違いない。あのイントネーションは関西弁、多分大阪やな。京都やない、それはわかる。


 ちゃうちゃう、それより、彼女がもし私の予想通りの人間だったなら。そして、ヒロインとは程遠いコテコテな下町の人間だったならば……。ぜひパートナーとして迎え入れたい。私の主部範囲外の平民世界に、彼女はリーチできるのだ。


 となると……。そうね、ここでの私はビジネスマナー接遇マナー講師ではなく、コンサルタントって感じかしら。

 まずは、顧客の自己肯定感をあげ幸福度をアップする個人向けのコンサルで、知名度を上げる。

 信用ポイントがたまったら、ゆくゆくは、企業(貴族や国)相手の、大きな仕事も手掛けたいわね。


 帰ったらすぐにこの国の組織概要図をかいてみましょう。

 コンサルとしてのおおまかなビジョン、ミッション、事業計画表、ToDoリストのたたき台をつくって。

 5W2H《When(いつ)Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)How(どのように)、How much/many(いくらで/いくつ)》も考えないとね。

 ああ、もう、やる事がたくさんありすぎる!


 とにかく、今日が、このマリアンヌ様の伝説の始まりの日なのだわ!!


「フフフ……、フォッフォッホホホホホーーーーっ!!」


 屋敷へ到着するまでの間、私は胸の高鳴りに身をまかせ、ずっと自身の哄笑の声を聞き続けた。


「お嬢様、ご気分がお悪いのですか? 奇声、いえ、咳き込んだような声が聞こえていましたが……」 


 馬車を降りる時に、御者から声をかけられたのはご愛敬だ。


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