水曜日
水曜日、大学食堂のAランチ。その日はハンバーグ定食だった。
白米に味噌汁、ほうれん草の小鉢、葉物の上に乗せられた、蒸し焼きにされて柔らかいハンバーグ……ハンバーグの上にはケチャップが機械的ににゅっと一握り分、乗せられている。
どこにでもありそうな無難なハンバーグ定食。大学の食堂の中ではちょっとだけお高く贅沢だ。
しかし、彼、雨宮は自分でAランチを頼んでおきながら、ため息をついた。
「いやー、足りない。全然足りない……」
ボリュームが足りないのか。であればご飯を大盛りにすればいいのだが……彼の言う「足りない」はそうではない。
無言で彼は、学食に持ち込んでいた保冷パックを取り出す。ポケットに入るくらい小さな代物だ。
その保冷パックに手を突っ込んで取り出したものは、白い正方形のシート……スライスチーズであった。
彼はそのチーズをまだ湯気の立っているハンバーグに乗せた。冷えていたチーズは形を崩すのに少し時間がかかったが、やがて端がふにゃりと溶けて力を失う。
雨宮は満足げに笑いながら箸でハンバーグとその上のチーズを切りながら、それをつまんで口に運んだ。
「雨宮、本当にチーズが好きだよね……」
「ああ、チーズは偉大だ。チート並みに何にでもあう。何でも包みこんでまろやかにして味を整えてくれる」
当たり前だと言わんばかりの調子と、チーズに感動している調子を混ぜながら、彼は語る。もっとも、次のチーズのせハンバーグを口に頬張って言葉は続かない。
雨宮レイは無類のチーズ好きだ。単品で食べるのも好き、酒のつまみとして食べるのも好き、そしてトッピングするのも好き。
ハンバーガーを頼むときは大体チーズバーガー。てりやきバーガーでもチーズを追加する。
ハンバーグは今の通りチーズを乗せたものを頼んだり自分で乗せる。あるいはチーズ・イン・ハンバーグも好きだ。
チーズ・インと言えば、チキンカツはチーズが入っているタイプが好き。オムレツやオムライスもチーズが入っているタイプが好き。むしろそうじゃないと頼まない。
ナポリタンにはもちろん粉チーズをたっぷりかける。あるいはチーズを乗せて炙るなんてのも好きだったりする。
カレーにもチーズを乗せる。あるいは、カレードリアもチーズが入っているから好きだ。
それゆえに彼は、何にでもチーズを付与する男、チー付与とあだ名がつけられている。
『明日のランチはどうするんだろうな?』
白米とチーズのせハンバーグを幸せそうにかきこみながら食べている雨宮を見ながら、私はBランチの鯖の味噌煮定食を食べるのであった。
もうコンセプトにはお気づきだと思います。
はい、チー付与って「なんにでもチーズを付与する男」の話だと思っていたのです。




