補論:誠実性を死んでも守る人々に見られる不思議な挙動について
補論:誠実性を死んでも守る人々に見られる不思議な挙動について
――即死選択圧とその固定化効果(構造的説明)
しばしば観測される、
明らかに損失が大きいにもかかわらず、誠実性を決して手放さない人々の挙動は、
性格・倫理観・価値観・美徳といった人格的説明では捉えられない。
CLCTでは、これを
即死選択圧下で形成された生存構造の残存として扱う。
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1. 即死選択圧とは何か
ここで言う即死選択圧とは、
誤認・逸脱・拒否・失敗が、
•修正不能な損失
•再挑戦不能な排除
•社会的・心理的・物理的な「死」
に直結する環境圧を指す。
この圧力下では、
•試行錯誤が許されない
•撤退が敗北ではなく消滅になる
•一度の失敗が全履歴を無効化する
CLCT的に重要なのは、
これは学習ではなく淘汰であるという点である。
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2. 誠実性が「存在条件」に変質する過程
通常、誠実性は可変パラメータである。
信頼を得るための手段であり、状況に応じて調整可能な属性にすぎない。
しかし、以下の条件が同時に成立すると、誠実性は不可逆化する。
•撤退ゲートが弱い、または存在しない
•他の安全基地が存在しない
•誠実性IDのみが信頼ゲートを通過する
•行動ログが長期にわたり固定化されている
この時点で誠実性は選択肢ではなくなる。
誠実性を失うこと
= 信頼喪失・役割消失・自己同一性崩壊
が等価になる。
外部から見れば「なぜそこまで?」だが、
本人にとっては誠実性を捨てるという選択肢自体が存在しない。
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3. 幼少期即死選択圧の決定的影響
特に重要なのは、
この即死選択圧が幼少期・発達初期に存在した場合である。
幼少期には、
•因果限界射程の推定能力が未成熟
•撤退・拒否・再挑戦の語彙が未形成
•外部安全基地を自律的に構築できない
この段階で即死選択圧を経験すると、
次の固定化が起こりやすい。
•誠実であること=生存条件という等式の内面化
•一貫性を失うくらいなら消滅した方が良いという判断軸
•他者の信頼ゲートへの過剰適応
これは信念でも道徳でもない。
環境への適応痕跡である。
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4. なぜ「死んでも守る」ように見えるのか
この挙動は自己犠牲ではない。
構造的には、
誠実性を捨てるくらいなら、
生理的・社会的に死んだ方が
内的整合性が保たれる
という状態にあるだけである。
誠実性は美徳ではなく、
唯一残された生存ルートになっている。
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5. 周囲にとって不合理に見える理由
周囲の多くは、
•誠実性を失っても別のゲートがある
•信頼を失っても別の安全基地がある
= 誠実性が単一障害点ではない。
そのため、
「もっと楽なやり方がある」
「そこまでやらなくてもいい」
と見えるが、
それは本人にとって存在しない選択肢である。
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6. この状態が生まれやすい配置
特に以下の配置で強化されやすい。
•D / C / F 系(観測・翻訳・構造設計)への長期固定
•裏方での成功体験の蓄積
•一度も裏切っていない履歴
•「逃げなかったことで生き延びた」経験
これらは誠実性IDを強化するが、
同時に誠実性を唯一の安全基地に固定する。
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7. 最大の危険点
この構造の最大の問題は、
本人が自分の危険性を自覚できない
点にある。
誠実性を守っている限り内部矛盾が発生せず、
警告信号が一切鳴らない。
このため、この構造は
E型事故(引受・自己犠牲)と極めて高い親和性を持つ。
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8. 「救おうとする」介入が事故になる理由
よくある誤った介入は以下である。
•「もう安全だ」
•「そこまで誠実でなくていい」
•「楽にしていい」
これは善意だが、構造的には
誠実性IDを剥がそうとする行為
であり、当人の内部モデルでは即死事象として分類される。従って、自然な防衛反応・拒絶・関係破断を招く。
即死選択圧は、
絶対に説明や説得では解除されない。
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9. CLCT的に唯一安全な対応
誠実性を下げさせてはならない。
やれることは一つだけである。
誠実性以外の安全基地を、
環境側で試しに置いてみること
•撤退しても役割が消えない配置
•誠実性を条件としない信頼ゲート
•ログや責任を引き取る構造
•休んでも破断しない実証
絶対に本人に変化を要求しない。
試しに構造を置いてみる。
(この時、一切成功を期待しない。失敗しても回収可能な形で置く。)
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10. 結語(即死選択圧を含めた再定義)
誠実性を死んでも守る人は、
•高潔なのでも
•特別に強いのでもない
即死選択圧を生き延びた結果、
それ以外の生存ルートを学習しなかった人
である。
誠実性は美徳ではない。
生存痕跡であり、条件次第で単一障害点になる。
CLCTはそれを否定しない。
ただ、破断しないよう静かに分散させるだけである。
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