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  作者: 本能寺の変人
138/182

構造論:南北朝時代

―― 準死兵国家崩壊後に発生した「正統性の過剰分裂戦争」 ――


南北朝時代は、単なる皇位争いではありません。

構造的には、


鎌倉型戦闘生態系が崩壊した直後に、

正統性という唯一残った統合軸を巡って

社会全体が引き裂かれた相転移期


です。



1. 前提:鎌倉幕府の「報酬構造死」


鎌倉は元寇によって

•防衛には成功

•しかし恩賞不能

•経済破綻

•御家人疲弊

•忠誠を買えない


という状態に陥りました。


つまり


戦えば報われる

という進化圧が消失


した瞬間です。


準死兵を成立させていた

合理性が蒸発した。



2. そこに現れた「後醍醐天皇」という異物


後醍醐はこういう存在です。

•皇権絶対を本気で信じた

•形式ではなく実権を欲した

•武士の論理を理解しない

•しかし理念に一切妥協しない


構造的には、


戦闘国家が崩壊した直後の社会に

理念純度100%の正統性を

直接叩き込んだ存在


でした。



3. 正統性の二重化という構造破断


本来、正統性は一つでなければならない。

しかし南北朝では、

•京都:北朝(武家が立てた天皇)

•吉野:南朝(理念純正の天皇)


という


正統性の二重化


が発生します。


これは物理学的に言えば


真空が二つに分裂した状態


で、

どちらも「正しい」ために

どちらも譲れない。



4. 足利尊氏の立ち位置:力と正統の不一致


尊氏は、

•軍事力の最大保有者

•しかし正統性が無い

•正統を立てるが従えない

•従えさせるが正統でない


という


権力と正統性が分離した世界


の象徴です。


これ以降、日本の政治は


力=正しさ

正しさ=力


が一致しない構造に入ります。



5. なぜ戦争が長期化したのか


南北朝は消耗戦になります。


理由は単純で、

•どちらも滅びきらない

•どちらも正統を失えない

•どちらも武力が尽きない

•しかし決定打が存在しない


つまり


勝敗ではなく

正統性の主張そのものが

戦争エネルギー源になった


戦争が手段ではなく、

存在証明になった状態です。



6. 社会構造の変質:戦う理由が変わった


鎌倉武士は


土地のために死んだ


南北朝武士は


正統のために死ぬ(ことになった)


しかし実際には、

•地縁

•主従

•生存圏

•既得権


が錯綜し、


理念で始まり

利害で持続する内戦


に変質します。



7. 終結の本質:正統性を曖昧化して止血


南北朝は「解決」していません。

•正統はどちらか未決

•ただし「統一したことにする」

•皇統を形式的に一本化

•だが正統論は棚上げ


つまり、


真理を決めずに

現実を優先した終結


です。


これは次の室町幕府の本質――

調停国家の原型になります。



結論


南北朝時代とは、

•準死兵国家が崩壊した後に

•正統性という最後の統合軸が

•二重化して暴走し

•社会全体を引き裂いた


正統性過剰による構造破断期


です。


鎌倉が


戦闘生態系の極限


なら、


南北朝は


正統性が戦争を生む

観念暴走フェーズ


そしてこの破断の上に、

「争わないための国家」――

室町幕府が成立していきます。

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