仮想問答論:北条時宗 × 諸葛亮
―― 国家の延命装置同士の静かな対話 ――
諸葛亮
「あなたは、勝った後の国の方が苦しい顔をしていますね。」
北条時宗
「……勝利は、構造の問題を先送りするだけの事もある。」
諸葛亮
「ええ。敵を退けても、
国家そのものの寿命は延びるとは限らない。」
北条時宗
「そちらは、勝てば勝つほど
国力が削れていく戦いを続けたとか。」
諸葛亮
「ええ。
勝利は“意味”を保ちますが、
存続確率は下がっていきました。」
北条時宗
「こちらは逆です。
存続確率は上がったが、
意味と報酬が枯渇した。」
諸葛亮
「……どちらも、
“国家を終わらせない役”を引き受けた者の宿命ですね。」
北条時宗
「あなたは、
国が終わると分かっていて戦った。」
諸葛亮
「あなたは、
国が続くと分かっていて苦しんでいる。」
北条時宗
「結果は違えど、
背負った重さは似ている。」
諸葛亮
「国家は生物です。
延命と進化は別の問題。」
北条時宗
「そして、
どちらも指揮官の寿命を削る。」
諸葛亮
「……茶が冷めますね。」
北条時宗
「構造を語る者同士は、
沈黙が長くなる。」
諸葛亮
「沈黙の量は、
見えている全体の大きさですから。」
北条時宗
「言葉が少ないのは、
もう説明が要らないからだ。」
諸葛亮
「分かっていて、
それでもやるしかなかった。」
北条時宗
「分かっていて、
それでも止められなかった。」
二人、しばし無言。
諸葛亮
「あなたの国は、
外敵には勝てました。」
北条時宗
「あなたの国は、
意味においては負けなかった。」
諸葛亮
「勝敗では測れませんね。」
北条時宗
「測るなら、
“どれだけ長く構造を保たせたか”だ。」
諸葛亮
「……同業ですね。」
北条時宗
「最も報われない種類の。」




