先生と契約3
物思いにふけっていると「アレン!」と声を掛けられ少し目線を上にあげる。
そこには見知った顔がいた、白髪で背が高く、優しそうな顔ではあるが修羅場をくぐってきたかの様な面持ちを浮かべるこの人は彼女の事を月に一回診察をしに来てくれる【アーツ先生】だ。
顔を確認した後、俺は直ぐにうつむき
「先生...もう皆助かりません...もう皆ダメです...」
と何もしない自分を正当化するかのように先生へ呟いた。すると先生は俺の肩に手を置き
「私はここにいる人達を助けるだけだ」
一言放ち患者の方へと向かう。
(助ける?ってどうやって?)
黙って先生の背中を見つめていたが必死に一人で治療を続ける先生を見て昔を思い出す。
彼女は大病を患っており余命が残り僅かだと多くの医者が言い諦めるなか、先生は真摯に向き合い諦めなかったと。
気が付けば俺は自然と先生を手伝っていた。
先生の姿を見て動いたのは俺だけでは無く、この場にいる生き残った人達は先生を手伝い、先生の指示のもと使えそうな道具を集めた、結局は諦めるという選択をしなければこの場に人手も物資も元からあったのだと痛感した。
先生からの指示で亡くなった人達の火葬を行っている隣に腰をかけている先生が話す。
「君なら率先して手伝ってくれると思っていたよ」
「先生が来なければ何もしてません」と俺はひねくれた心持ちで返答をした。
すると先生から思わぬ言葉が出てくる
「彼女は君の帰りを待っていたよ」
何とも居たたまれない俺を見て言葉を続ける。
「君達に何があったのかは彼女から聞いている、彼女はもともと病弱で君とは不釣り合いだと君にはもっと相応しい人生があると思い、君の申し出を断ったとね」
俺はそんな、、、と小さな声で反応をしたが先生の話は終わらない。
「君が出兵してから彼女は自分の選択を悔いていた、君が戻ってきたらちゃんと話をしようともしていたよ」
「何を今更って思うかも知れないが、君がこの後の人生をどうするのか決めるのに重要な事だと思ってね、私の勝手で話させてもらってる」
先生の言葉を聞き俺のエマへの想いが自然と言葉になる。
「俺は振られた後もエマの事が好きで、ずっとエマに会うために戦場で頑張ってたんです」
「最後もエマに冷たい態度を取ってしまったから会ったら謝ろうって」
「謝ったら俺の事を好きになって貰えるように努力しようって」
俺のもう叶わない言葉は遺体が焼ける音と共に空へと消えた。




