自分と契約4
「何もなかったのか?」
店に戻った俺にクラップは聞いてきた。
「特に何もなかったよ」
「そうか…」
「何か言いたそうだな」
クラップは少し考えた後に俺がアーツ先生とロクスウに行った後の話をしてくれた。
アーツ先生が治療を終えた後、これからどうするかという話になったらしい。
元々尖兵隊という理由で送った部隊だったが、実際は異を唱えそうなアンネ町出身の人物を除け者にしたに過ぎない。
そんな適当な部隊で隊長も適当な人物が任命されていた、それはアンネ町に着いてから特に指示もなく各々の行動で動いていた事実から誰も隊長には期待していなかった。
そんな中、真っ先に動いたのはアレンだ。
実際はアーツ先生の手伝いをしたに過ぎないが皆からはそうは見えなかったらしい、アレンにこそ自覚は無いが地元でも軍に入っても一目置かれる存在であったが為だ。
そんなアレンが突然アーツと共に故郷から去ったのだ。
その時、ハラスは思ったらしい。
(お前がいなくなったらこれからどうするんだよ…)
地元で勝手に競っていた頃はただの恋敵でムカつく奴程度の存在であったが一緒に軍に入り考えが変わった【こいつは本当に凄い奴だ】
これからこいつは隊長になって自分はその下に付くんだ等という想像をして、それも悪くない等という気持ちになってしまっていた。
その気持ちに気付いた時、自分の愚かさを痛感した。
無意識にアレンの方が上だと思ってしまった事、それゆえに競い合う心さえ無くしてしまった事に。
アレンは後処理を俺らに押し付けて現場から逃げただけに過ぎない、そう思い込みハラスは怒りを原動力とした。
その後ハラスは負傷者達に指示を出した。
「助かりたいならテンスウへ行け」
頭を怪我している女性が
「あなた達がいた部隊まで連れてってくれませんか?」と言えば
「お前が戦場で役にたつのか?足手まといはいらない」と断り。
足を怪我している老人が「ならせめてテンスウまで送って欲しい」と言えば
「何故だ?その足で無理ならここにいればいいだろ」そう言って突き放した。
ハラスは故郷の人達に無理難題を押し付け、尖兵隊で戻りたい者達を引き連れて元の部隊へ戻ったのだ。
アレンはその話を聞き憤っていたが自分にハラスを責める資格がない事も重々承知しており、
もう関わりの無い人物だとアレンは考える事を辞めた。




