過去と契約4
仕事が終わりそれぞれ帰宅する時声をかける。
「ミエーラ少し話せるか?」
いつもどうりフェルモと帰ろうとするミエーラを呼び止める、周りの目もあるから無下には出来ないと俺はこの状況を選択した。
作戦は上手くいき今はベンチで二人きりだ。
「何か言いたい事があるんだろう?」
「話したいって言ったのに曖昧な質問するの?」
ミエーラは質問に対して質問をしてくる、やはりこの子から敵対心を感じてならない。
俺が黙って見つめると彼女は「はぁぁ」と大きなため息をつき応える。
「あんた見てるとムカつくのよ、それだけ」
そう言って立ち去ろうと彼女はした。
彼女の事は聞いている、事故で父と妹を亡くし今は母親と二人暮らしだ。
家は長男が継いだ為、ミエーラの父親の意向で診療所で働いていたに過ぎない、いわゆる分家で本家との繋がりである父親がいないのだから肩身は狭いと思う。
「ムカつくのは自分に対してだろ」
強引に立ち去ろうとする彼女に対して俺は強い言葉で傷付け引き止める。
図星であった、彼女は今までの比にならないくらい怒った顔をする。
「あんたに一体なにがわかるのよ!」
「わかんないよ、ただ俺の事も君はわかった気で敵意を向けてくるだろ?」
「うるさい」
「君はただ努力しない自分にイラついてるだけだろ?」
「黙れ」
「だから歳の近い俺が活躍するのを見てイラつくんだ、君と違って俺は努力しているからね」
【バチン】
彼女を傷付けた代償で平手打ちされる。
「あんたに何がわかるのよ、優秀なあんたなんかに私だって努力くらいしてるわよ、私だって」
始めは強い口調で捲し立てて話していたが徐々に泣きながら弱い口調へ変わっていった。
「...」
俺は彼女の言葉を待つ。
「妹は優秀だったのよ、明るく誰からも好かれて、もちろん私も好きだったわ私の可愛い妹だぞって、少し嫉妬をしていたけど誇らしかった」
「あの日、本当は私が死ぬはずだった」
「私の気分が優れないから妹が代わりに父の付き添いで出掛けたの、出掛け先のアンネ町って所で敵国の襲撃を受けて死んだわ」
思いよらない言葉が出てきて驚いた、まさかこの子の家族はあの襲撃で亡くなったのか、あの日に先生がアンネ町へ来た理由にも合点がいった。
「アンネ町は俺の故郷だよ」
「えっ、じゃあ、あんたの家族も?」
「あぁ、俺の家族も友人も好きな人もいなくなったよ、あの場所に俺が知ってる人は誰一人としていなかった」
「そう、なんとなくお爺様があんたを連れてきた理由がわかった気がするわ」
「...」
「帰るわ、お母さんが心配するし悪かったわね嫌な態度をとって」
「いや、もういいよ、送ろうか?何てのは不粋か」
俺達は遠くの木の陰を見つめる。
「まぁ、そうね、フェルモにも言っておくわ、それとも私が言ったら余計拗らせるかしら?」
彼女は少し笑いながら話す。
「アイツのはただの嫉妬だろ?君が言ったらとりあえず言うことは聞くと思うよ」
「あんたって本当に周りをよく見ているのね気持ち悪いくらい」
彼女は皮肉を言ってこの場を立ち去った。




