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第3話【裏切りは優しく囁く】 その14「ロムの真意」

エピソード更新が遅くなり申し訳ございませんでした。連日の暑さで、投稿スピードが遅くなるかもれません、ご了承いただきますようお願いします。


今回で第3話は終了になります。カズノリ視点で話が進みます。

「ああ…、ロープウェイが…」


 天浄山(てんじょうさん)ロープウェイの消滅を目にしたドロップが落胆の声を()らす。


「そっか、インソムジャーにされたモノって浄化されると消滅しちゃうんだね…」


続けてファインも気落ちしたような声を出したので、ミラクルとポンイーソーが(あわ)ててフォローに回った。


「し、仕方ないよ!2人は間違ったことしてないから、落ち込まないで!」


「ロープウェイ一つで世界の平和が守られるなら安いモノだ、と考えるポン!」


 異世界出身のお前達にとってはそうかもしれないけどさぁ、と言いたくなるのをグッと(こら)える。確かに、たかが一都市の一観光名所が無くなる程度で世界侵略が阻止できるなら(おん)の字であることは間違いない。

 ただ、この中で一番の常識人ポジであろうオレの口から、その事を言うのは躊躇(ためら)われた。


「フン、あんな鉄の(かたまり)、どうだって良いだろうがよ。別にオレらが()った訳でもあるめぇし」


だからこういう場合は、デリカシーの無いサブローの発言がある意味ありがたかった。


「言い方に難はありますが…、一理あるかもしれませんね。過ぎてしまったことは仕方ありません」


「そうだね。元気出して行こっ!」


 よしよし、ドロップ達も元気を取り戻したな!


「んなことより、アイツどうするよ…?」


 サブローがロープウェイの方に視線を戻す。復路のロープウェイ用のロープにロムがぶら下がってるのが見えた。


「ああ、確かに…」


「どうしましょう…」


 インソムジャーが浄化され、インソムニアの連中が去った今、空の色は元の夕焼け色に戻っていた。周りの人も意識を取り戻している頃だろう。早いとこロムを助け出さなければ、色々と面倒なことになってしまうぞ!

 どうしたものかと、もう一度ロムに目を向けると、アイツがロープにぶら下がったまま体を前後に()すっているのが分かった。


「お、おいまさか…!」


 そのまさかだった。体が前に振られたタイミングで、ロムがロープから手を離しやがった!ココまで飛んでくるつもりなのだ!

 勢いからして、距離については問題ない。だが高さが結構あるぞ?大丈夫なのか!?


「何という危ないマネをっ!!」


 半分怒り、半分(あき)れ口調のドロップが


「ドロップ・アイスクリエイト!」


技名と共にステッキを振り下ろすと、ドロップの前方から氷の柱が現われた。柱はニョキニョキと、宙を舞うロムの方へと伸びていき…


「ぬおぉ!?」


ロムのお尻を受け止めるように、柱の先端が大きなお(わん)のような形を取った。(あし)が異様に長いワイングラスのような形をした、氷の彫刻が完成だ。


「おお!海月、サンクス!」


 ロムは驚きつつも、ドロップに礼を言う。


「全く…、いかに和野君と言えど無事では済みませんでしたよ!」


「いやいや、心配には及ばんよ」


 ロムは氷の柱を猿のように(すべ)り降りながら、怒っているドロップに飄々(ひょうひょう)と言葉を返す。


「あそこの林に着地すれば、枝の間を落ちていく間に勢いが殺されるだろ?着地する頃には怪我しない程度にはなってるはずだ」


「枝の間を落ちていく過程で怪我しそうだけど…」


「そんくらいが怖くて、魔法少女のお(とも)(つと)まるかってんでい!」


 そう言いつつ、ロムはオレ達の元へと降り立った。同時に氷の彫刻が音も無く崩れていき、後には何の痕跡(こんせき)も残らなかった。


「いやいや、心配かけたね(みな)(しゅう)


 謝罪する気持ちがあるとは思えないほど軽い口調で、ロムが一応の謝罪をする。


「本当に心配したよロム君!」


「無事で良かったよ、ロム君!」


「おお、よしよし。可愛い()達だ」


 駆け寄ってくるミラクルとファインにロムが微笑(ほほえ)みかける。あ、何故(なぜ)か一瞬C・ハータックの面影が重なったぞ?アイツと同類なのか、ロムよ…。


「フン、テメエの心配なんざしても、何の得にもなりゃしねえだろ」


 腕組みしながらサブローが言葉を返す。ドロップは黙ったまま、(けわ)しい顔つきでロムを見ていた。


「オレは心配したぞ、ロム!」


 残るオレは、正直な気持ちをロムに伝えた。


「お、そうだったのかカズ?」


「そうだったのか、じゃない!ちゃんと説明して貰うからな!?」


「説明って何を?」


「とぼけるなよ!インソムジャーにワザと捕まってただろ!?何故(なぜ)そんなことをしたのか、ハッキリとした理由が知りたいんだ!!」


若干怒りのこもった声で、オレはロムに()()る。


「えぇ!?ワザと捕まってたの!?」


「じゃあ、あの時もがいていたのは演技!?」


 ああ、やっぱりミラクルとファインは気付いてなかったのか…。


「何々、君達気付いてなかったの?カズの言う通り、ワザとだよ」


「「そうだったの!?」」


「だから、その理由を早く話して下さい」


 とうとうドロップが口を開いた。手にはステッキが握りしめられている。まさか、ロムが裏切ったと判明した場合に(そな)えているのか?


「理由はね、C・ハータックの様子がオカシイと思ったからさ」


「アイツの様子がオカシイ、だと?」


 サブローが怪訝(けげん)な顔をする。


「オカシイっつーのもチョット違うか?何つーかアイツ、この世界を侵略しに来てる割には、良いヤツすぎねーかと感じててさ。アイツの真意を探りたかったのよ」


 今の説明でロムの言いたかったことが理解出来た。C・ハータックの言動からは良いヤツ感が隠し切れていないように、オレも感じていたからだ。

 だが、魔法少女達にとってはそうでは無いようだ。


「C・ハータックが善人?ドコを見てそう思えるのです!?」


ドロップはロムに対する疑念を更に深めてしまったのだろう。返す言葉が詰問(きつもん)口調に変わってきている。


「ロム君、何を言ってるの?皆からネガバイタル奪ってるんだから悪者に決まってるじゃん!」


ミラクルも珍しくロムに反論している。


「ソレはアイツの仕事だからだろ?オレが言ってるのは、アイツの侵略行為以外での言動についてだよ。例えばホラ、魔法少女以外でネガーフィールドの中を動ける人間に対しての、アイツの振る舞いとかさ…」


「あ!」


 ここで声をあげたのはファインだった。


「そう言えばファインが初めてフェアリーティアーズになる前に、あの人から逃げるように言われたコトがあったっけ…」


「それはオレも覚えてるぜ」


サブローが口を(はさ)む。


「何でインソムジャーで有原を叩き(つぶ)そうとしねえのか、理解に苦しんだからな」


「棚田君ヒドイ!そんな風に考えてたの!?」


「逆に、そういう風に考えないコトが、ハータックが悪人じゃないって証拠になるんじゃないかな?」


 ロムが上手(うま)く私論へ持って行く。


「たったそれだけで判断するのは…」


「それだけじゃ無いぜ、海月」


 未だに顔を曇らせているドロップに、ロムはもう一つの事例を挙げる。


「オレ達が初めてインソムニアとの戦いに乱入した時も、アイツは大人しく帰るように忠告してきたんだ。記憶力の良いお前なら覚えてるだろ?」


「あ、ああ…、確かに、そんなことを言ってましたね…」


「え?じゃあ、C・ハータックが実は良い人だった…ってコト!?」


 ミラクルが驚きの声をあげる。


「オレ達の世界を侵略しに来た(やから)が実は善人でした、だなんて変な話だろ?ソコが気になったオレは、ワザとアイツに捕まったフリをして探りを入れたってワケよ」


「そうだったのか…」


 オレはロムの説明に納得した。


「つーワケで、オレは裏切ってなんかいません!」


「えぇ!?」


 思わず声が裏返る。ま、まさか、オレがロムを疑っていたこともお見通し…?


「だから海月、手にしてるステッキを(おさ)めてくれよ。気になるだろうが」


なんだ、ドロップに対して言ってたのか…。確かに勘の良いロムなら、ドロップがステッキを握りしめてる様子から、彼女の疑念に気付いても不思議じゃ無い。


「はぁ…、分かりました。しまいましょう」


 そう言ってドロップは自分のステッキを腰に差した。


「考えてみれば、貴方のような頭の切れる人間が(ひそ)かに裏切りを(たくら)んでいるなら、わざわざ私達の注目を浴びているタイミングで密談をするハズがありません。私の考えすぎでしたね。お恥ずかしい…」


 そ、そう言われれば確かにそうだ…。ロムがインソムニアとの密談を望んでいたなら、何かしらの方法でオレ達5人が知り得ないタイミングを(もう)けた方が、都合が良いに決まっている。「オレが捕まってるのはワザとでーす!」なんて歌ってアピールすれば、「アイツは何を考えてるんだ!?」と(いぶか)しがられてしまうからだ。

 当初は何の疑いも抱いてなかったオレまで、普段は冷静な海月の勘違いに釣られてしまっていたのだ。反省しなくてはな…。


「やっぱり海月お前、オレがインソムニアに寝返ると思ってたな?全く、んなことオレがするワケねーだろーがぁ!そもそも何でオレがインソムニアに手を貸す必要が…」


 と、そこまで言ってロムは口をつぐむ。遠くからオレ達以外の声が聞こえてきたからだ。


「あ、マズイ!登山客が来てるんだ!」


オレは小さく叫んだ。

 登りのロープウェイが無くなった今、山頂へ行くには登山道を登るしか方法は無い。もうすぐ夜になるから、山頂で夜景を見たいと思ってる人がコッチに来てもおかしくない!


「おっとっと!んじゃ続きはオレん家で。ポンイーソー、ワープよろ!」


 オレ達6人は急いでロムの家へとワープするのだった。

 ()にも(かく)にも、オレの内に(くすぶ)っていたロムの裏切りに対する疑いは、これでキレイさっぱり無くなった。やはりコイツは色んな面で一筋縄ではいかない、オレ達の仲間だったのだ。

第二章の第3話【裏切りは優しく囁く】 これにて終了です。ロムの内面にフォーカスを当てた話でした。視点を話毎に入れ替える試みもしてみました。今後も、視点がカズノリ以外になる場合は事前にお知らせします。


次回、第二章の第4話は、今回ミスを犯したC・ハータックが奮闘…!?初回はインソムニアメンバーの会話だけで話が進みます。お楽しみに!




 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。気に入っていただけた方は是非、ブックマーク、評価、リアクションの方よろしくお願いいたします(既にして下さった方はありがとうございます)。今後の執筆活動の大きな原動力になります。

 特に、評価をしていただくと、ポイントが大きく加算されて他の人の目に止まる可能性も高くなるので非常にありがたいです。

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