第3話【裏切りは優しく囁く】 その6「インソムニアの組織体制」
「嶺上開花、タンヤオ、対々和、ドラ5!倍満!!海月、追いついたぜ!!」
ロムが歓喜の雄叫びをあげる。
「うるせえなぁ…」
「くぅっ、中々やりますね。嶺上開花にドラを5つ入れての倍満とは…」
サブローが不満を漏らす中、海月は苦い顔をしている。何だか知らんが、ロムが海月への仕返しに成功したらしい。
「もう…、勝手にしろポン!盛り上がってる最中に説明を続けるほど、オイラは空気が読めないワケじゃ無いポンね…」
あーあ、またポンイーソーがヘソを曲げてるじゃないか。家に招いた張本人が客にこんな態度取ってて良いのかよ?
「ああスマン、ポンイーソー!別にお前を無視したくて無視したワケじゃ無いんだ!ただ、この嶺上開花って役は成功するとテンション上がる役でな…」
「だからそうして麻雀に興じていれば良いポンよ…」
「和野君」
そっぽを向いてしまったポンイーソーを目にした海月が、ロムに提案する。
「勝負はココまでにしましょう。麻雀をしながら話を聞くのは、流石に失礼です」
「引き分けにしましょう、てか?」
「それで構いません。和野君の腕前はしかと拝見しましたし、そもそも貴方は訊きたいことがあって私達を呼んだのでしょう?」
「それもそうだな。悪かった、ポンイーソー!」
「ポンちゃんさん、すみませんでした。私まで、つい熱くなってしまいましたね。反省します」
ロムと海月の謝罪を聞いたポンイーソーが、2人の方へと体を向ける。
「この通り!麻雀は止めにしたぜ!」
そう言ってロムがゲーム機の電源を切って見せたので、
「はあ…、今度こそちゃんと話を聞いてくれるポンね?」
ポンイーソーも少しは機嫌を直してくれたようだ。すぐヘソを曲げちゃうところがあるけど、なんだかんだで大人だよな、ポンイーソーは…。
ここいらでオレ達もゲームを止めるべきだろうか?
「ロム、オレ達もゲーム止めようか?」
「え~!?三佳、まだ一度も勝ってないよぅ!!」
オレの言葉を聞いた有原が不満を漏らす。コッチはまだ子供だな…。
「いやいや、オレと海月が聞いときゃ十分な話だから!」
「情報収集は私達の役割でしょうし」
え?いつの間にそんな役割になったんだ、この2人は?
まあ確かに「男子3人組とフェアリーティアーズの3人の中で頭脳派メンバーは?」と訊かれたら、この2人になるのか…、いやいや!オレもその枠だろ!バトル出来ないオレが頭脳面で活躍しないでどうすんのよ!?
そう思ったオレは、とりあえず大富豪を続けながら、ポンイーソーの説明にも耳を傾けることにした。
「オレが訊きたかったのは、インソムニアのことだ」
インソムニア?オレらの世界を侵略しに来た平行世界の敵であり、フェアリーティアーズが撃退するべき相手だろ?その説明なら前に受けたハズだが…。
「インソムニアの何が知りたいんだポン?」
「ズバリ、インソムニアの組織体制!」
ロムの言葉を聞き、電流が走ったような衝撃を受けた。確かに、インソムニアがオレらの敵であることは知っていたが、ヤツらがどの様な組織なのかについては何も知らないではないか!
「この前、E・トゥルシーって女が『世界偵察局』って単語を口にしてたのを聞いて疑問に思ったのよね。戦に勝つために自陣の結束を高めるってのはモチロン重要だけど、ソレと同等以上に、敵について知るってのも重要でしょうが」
「なるほど、私達は向こうの組織図について何も知りませんでした。確かに重要なポイントですね…」
ロムの演説を聴き、海月も頷いている。
「つーワケで、敵の組織がどうなってるのか教えてちょーだい、ポンイーソー先生」
「それはモチロン構わないポンが、そのわざとらしい『先生』呼びは止めるポン」
そう前置きをして、ポンイーソーは説明を始めた。
「まず、皆が目にした3人組が2組いるポンね?アイツらは『侵略尖兵』といって、言ってしまえばインソムニアが平行世界の侵略を行う上での雑兵ポン」
「え!?C・ハータックとかって幹部じゃ無かったの!?」
オレは思わず話に乱入してしまう。魔法少女のアニメだと、バケモノを生み出す役目の人間は敵組織の幹部格であることが殆どだ。だからC・ハータックとE・トゥルシーもインソムニアの幹部だと思っていたのだが…。
「幹部とはとても呼べないポンね。部下を連れている以上、一番下ってコトはモチロン無いポンが、それでもインソムニア全体から見れば末端と呼んで差し支えの無いポジションだポン」
「はぁ~、インソムニアってのは思ったよりデカい組織みたいだねぇ」
ロムが顎をつまみながら言った。
「で、その『侵略尖兵』ってのは、誰の指揮の下で動いてるんだい?」
「インソムニアは、同時に複数の平行世界を侵略してるんだポン。つまり、この世界以外にも現在進行形で侵略中の平行世界があるワケだポン。複数の世界侵略を同時に行ってるということは、この世界を侵略するに当たって専属の『侵略支部』が作られるというワケで、ヤツらはその支部の一員なんだポン。モチロン、各支部には『支部長』と呼ばれるリーダーがいて、侵略尖兵はその支部長の下で働いてるんだポン」
「オレらの世界の『侵略支部』ってのは、どの位の人数で構成されているんだ?」
「インソムニアが同時に侵略を行ってる平行世界の数は数万に及ぶポン。だから、一つの世界に派遣できる人数はそれほど多くないポン」
「なるほど。で、具体的な人数は?」
「ハッキリとは言えないけど、十人は超えないハズだポン。支部長に、C・ハータックと部下2人、E・トゥルシーと部下2人、あともう一組チームがあるか無いかってカンジだポン」
「んじゃあポンイーソーよ。その侵略支部の十名に満たない御一行様は、『世界偵察局』ってのとは別の部署の人間なのか?」
「各平行世界の侵略を担当している『侵略支部』の人間は『侵略推進局』に所属してるんだポン。だから『世界偵察局』とは別の局の人間だポン」
「その『局』というのは、インソムニア全体に対してどの位の規模になるのでしょう?」
「会社とかだと『部』とか『課』とか『係』とかあるよな」
「一番大きな纏まりだポン。平行世界の侵略行為がインソムニアにとって最も大きな生業ではあるけれど、当然それだけでは組織を維持出来ないポンね?侵略の前段階である新兵器の開発や兵士の育成、支配下に置いた世界に住む人間の生活環境の保持、反乱分子の排除等々、やらなければならないコトは盛り沢山だポン」
「へえ、意外だな。アイツら、支配下に置いた人間の生活環境を保持しようとかしてんのか。てっきり奴隷みたいに使い捨ててるモンだと…」
ソレはオレも思った。完全なディストピアというワケじゃ無いんだな。
「まあそこら辺は一応やってるポン。でも、その裏には『支配下に置いたからと言って悪いようにはしない』と言って誘い込む狙いが含まれてるポン」
「そもそも、悪いようにされないなら侵略されても構わない、という話では無いでしょう?」
「当然だろ!オレはただ、意外だと思ったことを口にしただけだ。この世界をインソムニアなんかに渡しゃあしねえよ!」
ロムはハッキリと断言した。ココにいる全員が同じ気持ちでいることだろう。無論、オレもそうだ。
「話を戻すぞ、ポンイーソー。さっき言ってた『組織を維持するために必要な諸々の活動』を行うための機関が『局』ってワケか?」
「その通りだポン。インソムニアという組織は、『総統』の下に設けられた9つの『局』から成り立っているんだポン」
「その『総統』ってのは誰なんだ?」
ロムはそう質問しながら唾を呑む。間違いなく、ソイツがラスボスだろう。
「文字通り、インソムニアの総統だポン。名前を『エレボス』といって、その『総統エレボス』の下に9つの『局』をそれぞれ管理する『九局長』が、文字通り9人いるんだポン。これが『侵略世界インソムニア』のトップの面々だポン」




