第2話【未来来希の謎】 その1「TK12741281侵略支部(前編)」
今日は2話投稿になります。と言っても、1つの話が長くなってしまったので2回に分けるだけなんですけどね。
インソムニアのメンバー達が悪役会議する話です。塔岡一典もロムもいないので、セリフだけで物語が進みます。
「E・トゥルシーさん、オレ達これからどうやって戦っていくんです?」
「あんな強い人間2人を相手に、どうすれば勝つことが出来るんです?」
「ゴチャゴチャ五月蠅いわねアンタ達!そんなの訊かれたってすぐに答えが出るワケ…って、あああー!!」
「どうしたんですか、E・トゥルシーさん!?」
「何か名案が浮かんだんですか、E・トゥルシーさん!?」
「違うわよヂョーサー!今にして思えば、あのC・ハータックの態度っ!アイツが私にアソコまで謙るなんてオカシイと思ったのよ!!ヤツらの存在を隠していたのね!キーッ!!」
「おやおや、キーキー猿みたいな金切り声が聞こえると思ったら…。無事お帰りかな、E・トゥルシー?」
「「あ、貴方は…!」」
「ディ、D・ドゥドゥ…!」
「イヤだなぁ、そんなに睨まないでくれよ。オレは…」
「お黙り!アンタに用は無いのよ。C・ハータックはドコっ!?」
「ソッチに無くともオレには有る。今すぐ、オレと一緒にO・ザルゥ支部長の所まで来るんだ」
「何よ、呼び出し?」
「その通り。C・ハータックもそこにいるよ」
「何ですって!?すぐ行くわ!セッサー、ヂョーサー!アンタ達は次の出撃まで待機!」
「「はい!」」
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「O・ザルゥ支部長、E・トゥルシーを連れてきました」
「やあ、ご苦労だったねD・ドゥドゥ」
「はっ!」
「あーっ!いたわね、C・ハータック!!」
「おっ!お早いご帰宅っすねE・トゥルシーさん?」
「アンタ、私にあのメチャクチャなガキンチョの件、一切伝えなかったわね!?」
「いやいや、だってアンタが『デキるオンナはC・ハータックとは違う』的なことを言うモンだから、あんくらいの障壁は屁のカッパかなぁと…」
「いくら私でもあのレベルはムリよ!」
「おっとぉ!?あのE・トゥルシーさんがまさかの『ムリ』発言だぁ!今夜は大雪になるかな?」
「お黙り!O・ザルゥ支部長、聞いて下さい。実はC・ハータックのヤツ…」
「スゴく強い一般中学生が出た、って話だろう?彼から聞いたよ。その件で君を呼んだんだ」
「いやね、オレもO・ザルゥ支部長にアイツらのこと報告しようと思ってたんよ?でも、その時ちょうどE・トゥルシーが来て、あんなビッグマウスを叩くモンだから、じゃあお手並み拝見ってことに…」
「ならないでしょ、C・ハータック」
「うっ、支部長…」
「君がもっと早くオレに報告していれば、E・トゥルシーが無駄骨を折ることは無かったハズだ。なのに君は、ワザと彼女が出発してから報告しに来たね?ダメでしょ。報告は即時、的確に行わなくっちゃあ」
「はーい、以後気をつけまーす」
「うむ」
「ちょ、ちょっと支部長!そんなにカンタンに許して良いのですか!?もっと厳罰を…」
「E・トゥルシー、君は全く以て、自分に甘く他人に厳しい人間だね?」
「うっ、支部長…」
「それに加えて自分を『デキるオンナ』呼ばわりするビッグマウスっぷり…。これじゃあ、人に嫌われても仕方が無いでしょ?C・ハータックがイジワルするのも無理ないよ。もっと普段の自分を見つめ直したらどうだい」
「は、はい、支部長…」
「フフ、ハハハハハ!全く、2人とも情けない。全然侵略が出来てない身でこんな醜いケンカを支部長の前で晒すなんて、お笑いも良いトコロだ…」
「おぉい!D・ドゥドゥ!」
「アンタねえ…!」
「D・ドゥドゥ、君は一回も侵略に行ってない身じゃないかね。いくら『あの子』の世話役になったからって、何も活動してない君が2人の行動をとやかく言える立場かい?」
「支部長、オレは『支部長の前でケンカをするのは恥ずかしい』と指摘しようと思ったまでです」
「ああ、そうなの?」
「いやいや支部長!」
「カンタンに丸め込まれないで下さいよ!」
「あのねぇ、3人とも聞きなさい」
「「「…!」」」
「正直、他の世界を侵略している支部長が、部下をどんな風に扱ってるかなんて知らないよ?『侵略が終わってくるまで帰ることは許さん!』とか言って部下を送り込んだり、酷いところだと部下が死ぬのを承知で侵略の捨て駒にしたり…、色んな噂を聞くよ?でもね、オレはそんな酷いことはしない。なぜだと思う?」
「「「なぜでしょう…?」」」
「君達皆、オレの大事な部下だからだよ」
「「「し、支部長~!!」」」
「ま、色んな噂を聞くってことはモチロン、オレより優しい支部長の噂も聞くけどね?侵略に行かせる前にシッカリ情報を集めた上で安全に配慮しながら部下を出発させたりとか、スゴいところだと部下は基地で遊ばせて支部長だけが侵略に行ったりとか…。でもね、オレはソコまではしない。なぜだと思う?」
「「「なぜでしょう…?」」」
「オレは基本、放任主義だからだよ。まあそれはともかく、今回の場合はチョットそのままに出来そうも無いんでね、こうして3人を集めたんだよ」
「「「はっ!」」」
「まあ実を言うとね、フェアリーティアーズより強い子供がいるって話は、そんなに驚くことじゃないんだよ。何億何兆って単位じゃ数え切れないほどの、無数の平行世界。ソコに住む人間の身体能力なんて、それこそ千差万別だ。だから『フェアリーティアーズより強い一般人がいる』なんて話は驚くことじゃない。問題なのは『フェアリーティアーズにインソムニア全般が苦戦している現段階で、より強い一般人がいる世界の侵略を任された』ってコトだ」
「あのー、O・ザルゥ支部長は、この世界にこんな強い一般人がいるってコトを知ってたんすか?」
「馬鹿言わないでよ。幾ら放任主義とは言え、そんな大事なことを内緒にするもんか。初耳だよ、初耳」
「じゃあやはり、我々がこんな無理難題を押し付けられている原因は『世界偵察局』の怠慢、ということですか?」
「う~ん、何とも言えないなあ…。もちろん、その可能性もあるよ。でも、今オレ達が侵略を任されているこの世界、通称『TK12741281』が、他の様々な平行世界に繋がる重要地点だって話は聞いているだろう?」
「はい。『TK12741281』を侵略出来れば、約数億の世界の侵略にかかる年月が数百万年単位で縮まるとか…」
「その通り。だからこそ、多少の無理は承知で侵略を強行したって線もある」
「な、なるほど…」
「でもねぇ?だとしても支部長のオレに、本部から何の事前連絡も無いってのは有り得ないよ。それに幾ら重要地点でも、敗色濃厚な世界に無策で突っ込もうだなんて馬鹿なコト、本部は考えたりしない。『開発及び維持に途方もない量のネガバイタルを必要とする』『一度閉じたら二度とその世界に行けなくなる』といったパラレルゲートの性質を考えれば、おいそれと無駄遣いは出来ないさ」
「では結局、オレ達はどうすれば…?」
「無論、侵略を中止したりはしないよ。ただ、『TK12741281』の侵略を始める前段階で何か問題があったのは間違いないから、ソレに関しての報告書は本部に出すつもりだよ。『世界偵察局の方で何かしらの問題があったんじゃないんですか』ってね。後は本部からの返答を待つってコトで、君達には今まで通り侵略を続けて貰うから。」
「はっ、お任せ下さい!」
「『お任せ下さい!』ってどの口が言ってんだD・ドゥドゥ!」
「アンタまだ一度も出撃してないじゃない、D・ドゥドゥ!」




