第1話【オレと海月、オレとサブロー】 その6「名を名乗れ!」
ポンイーソーの力でインソムニアの連中が攻めてきた場所へとワープしたオレ達6人は、辺りを見回して現在地を確かめる。
「なんだ、またこの場所か」
サブローが呟いた通り、オレ達がいる場所はつい最近も来たところだった。
「宜野ヶ丘台公園…、だね」
そう、昨日サブローとフェアリーティアーズが戦った場所、宜野ヶ丘台公園に来ていたのだ。正確には、公園に続く歩道の上。公園の入口まで残り10メートル程といったところか。
学校から見える空は青色だったが、今の上空は紫一色に染め上げられている。ネガーフィールドの範囲は、起動した場所からおよそ半径500メートル。学校とココで空の色が違うのは当然か。
「改めて確認するけどポンイーソー、お前ワープ出来たんだな?」
この移動方法はワープと呼んで差し支えあるまい。学校からココまでは歩いて20分程かかるのだから、ワープでも無ければ一瞬で来ることは出来ない。
「そうだけど、一応言っておくポン。オイラがワープ出来るのはインソムニアがネガーフィールドを張った場所のみで、後は帰りに元いた場所へ戻れるだけポン。好きな場所に好きな時に行くなんてコトは出来ないポン」
「何だよ~、ちぇっ!ドコでもワープ出来るならマチャチューチェッチュ大学まで行って、ロム吉兄さんを紹介しようと思ったのに!」
「またソイツポンか!?ソイツのことはもう忘れて欲しいポン」
「はいはい」
「さっ、グズグズしてられないポン!ヤツらはこっちポンよ!」
ポンイーソーの先導に従い、オレ達は公園の入口へと急いだ。
公園内へ到着したオレ達は、再び辺りを見渡す。花が殆ど散ってしまった桜並木の下に、見覚えのある面々が倒れ込んでいた。
「この人達、2年3組の生徒だ!」
オレの言葉に海月が反応する。
「昨日は私達2年2組が美術の授業でココを訪れました。今日は隣の組の番だったのでしょう」
「おやおや、3組の連中は全滅ですかい」
ロムの言う通り、オレ達のように動ける人間は見当たらなかった。
「フン、情けない連中だ。2組は6人も平気だったってのに」
相も変わらぬ、サブローの見下し発言。だが今回は少し、言いたいことが分からなくも無い。2組に6人「適合者」がいるのに、3組は全滅だなんてアンバランスじゃないか?まあ、無事なヤツがどこかに隠れている可能性もあるかもだけど…。
なんて考えている間に、インソムニアの姿が見えてきた!今日の相手はE・トゥルシー率いるモノクロトリオか。
「インソムニア!これ以上皆から『ネガバイタル』を奪うのは許さないよっ!!」
先陣を切って未来来がモノクロトリオに勝負を仕掛ける。
「ホーホッホッホ、来たわねフェアリーティアーズ!今日こそ、このデキるオンナE・トゥルシーが貴女達を始末して…」
「E・トゥルシーさん、E・トゥルシーさん!」
「五月蠅いわねヂョーサー!私の言葉を遮るなんて出しゃばった…」
「変な男子が3名混じってます!」
「はい?そんなわけ…ってええええええぇぇぇぇぇっ!!」
オレ達3人の存在に気付いたE・トゥルシーが、驚きのあまり絶叫する。
「ハハハハハ!お前、気付くの遅くね!?」
「フッ、全くだ。『デキるオンナ』じゃなくて『マヌケなオンナ』じゃねえか」
ロムとサブローの言う通りだ。どれだけフェアリーティアーズの3人に心を奪われてたら、オレ達の存在を忘却出来るんだ…。
「ムッキー!何よソコのガキンチョ!!名前を名乗りなさい!!」
「行くよ、2人とも!!」
「はい!」
「うん!」
マヌケなオンナ呼ばわりされて顔を真っ赤にするE・トゥルシーを尻目に、未来来達3人が変身アイテムを手にする。
「あ、スンマセンね。オレ達の自己紹介は後ほど…」
「「「オープン・アイズ・メタモルフォーゼ!!!」」」
ロムが断りを入れる中、3人が変身の言葉を唱えた!お待ちかねの変身タイムだ!!
「良いから早く名乗りなさいよ!」
「ダァッ!!3人がまだ変身してる途中でしょうが!!」
催促するE・トゥルシーに対し、ロムが一喝する。どんだけ変身シーン見たいんだお前…。
なぁんて、オレも人のことは言えないよな。さて、今日は誰の裸を眺めましょうかね…?
『ちょっと!何フツーに見ようとしちゃってんの一典!?』
お、久しぶりだな、天使のオレ。
『君、海月さんの裸を見ちゃったことに罪悪感を持ってるんでしょ?もう忘れちゃったの?さあ、今ならまだ間に合うから、3人の変身が終わるまで目を閉じて…』
『馬鹿じゃねえのお前』
光有るところ影また有り。悪魔のオレ、参上!
『既に3人の裸を見ちまった過去があるのに、間に合うもクソも有るかい!一回万引きして見つからなかったヤツが、次の万引きを止めにしたからって罪が消えるか?一度見ちまった以上、あとはバレるかバレないかのチキンレースだ。限界まで思う存分覗こうじゃねえか、一典!』
両方とも五月蠅い!まだ3人の服が破けてる途中でしょうが!!
『『………』』
今日は海月の裸を観察しよう!お前らが名前を言うからだぞ?責任はお前らが取れ。
ふぅ、海月の裸体は美しいなぁ…。「ミロのヴィーナス」を作成した人間は恐らく、彼女のような美しい女性をモデルにしたに違いない。まあ、海月の胸は「ミロのヴィーナス」よりも少し大きいんだけど…。ああ、オレに彫刻の才能があったら、この裸体を作品に残せるのに…って、そんなことしたらバレちゃうだろ!今のナシ!
…とまあ、そうこうしてる内に3人の変身が完了した。
「来る!絶対来る!希望に満ちた未来を守り抜く笑顔の魔法少女!ティアーミラクル!!」
「虐げられし人々の涙を知りなさい!罪を罰する氷結の魔法少女!ティアードロップ!!」
「フレッ!フレッ!皆!全人類に元気をあげる声援の魔法少女!ティアーファイン!!」
「「「私達の世界は私達で守る!『インソムニア』と戦う魔法少女フェアリーティアーズ、華麗に登場!!!」」」
フェアリーティアーズの3人が、息のあった名乗りをあげる。
「貴女達が誰なのかは分かってるのよ!!」
が、E・トゥルシーは顔を真っ赤にしたままだ。
「ソコの男子3人が誰なのかって訊いてるのよ私はっ!!」
「そうだ、早く答えろお前ら!」
「E・トゥルシーさんをこんなに怒らせるとは罪深いぞ、お前ら!」
とうとう、アイツの両脇にいる部下2人にまで催促されてしまった。
「しゃあねえなぁ、そんなに知りたきゃ教えてやらぁ!」
そう言ってロムは、右の親指を自身の顔に向ける。
「なんか五月蠅くてテンション高いやつ、略して『うるテン』。和野宏武、見参!遠慮無く『ロム』と呼んでくれ!」
あれ、名乗り口上が変わってませんか?「Mr口先マシンガン」じゃ無かったのか?
「棚田三郎。ザコに名前以外を語るつもりは無え」
サブローが腕組みしたまま続けた。こっちは変更無し、か。
「……ホレ」
ロムがオレの目を見ながら小声で呼びかける。えぇ?オレもするんですか?何も考えて無いんだけど…ってか、世界侵略しに来てるヤツらに本名を堂々と名乗っちゃうのってどうなのよ!?危なくないっすかソレ?
「…えーと、オレはこの2人の付き添いです。名前はちょっと、カンベンして下さい」
オレはロムとサブローを交互に指し示しながら、一応の自己紹介を済ませた。
「…あ、オレら3人はソコのフェアリーティアーズとは一切関係ないんで、そこんとこよろしくお願いしまーす」
ロムがペコリと頭を下げた。コレで本当に良いのかなぁ…?




