第2.5話【黄の魔法少女 ティアーファイン】 その6「魔法少女の戦いを観終わって」
魔法少女の戦いを見終わったオレは、横にいるサブローに問いかけてみる。
「で、どう思うね?魔法少女について」
「…オレにあの変身シーンの感想を言えと?」
「是非聞きたいねぇ」
「ふざけろ!死んでも言うもんか」
「えぇ~?じゃあ、それ以外の感想でも良いよ」
「そうだな…。あのフェアリーティアーズだかってヤツら、そこいらのザコ共よりは強えみたいだな」
サブローは顔に不敵な笑みを浮かべる。
「オレの強さを確かめるには丁度良い。オレを相手に、果たしてアイツらはドコまで抗えるかな?」
「楽しそうジャンかよ、サブロー」
「そう言うお前はどうなんだ、ロム?」
「オレか?オレも実は魔法少女と戦いたいと思ってたんだよねぇ」
「あん?お前は『自分の強さを確かめたい』とか言うタイプじゃねえだろ?」
「いや、単純にアイツらの戦いに興味が湧いてな」
「興味本位かよ!?んなくだらねえ理由でオレの戦いをジャマしようってのか!?」
「おいおい、オレはお前のジャマをしようなんざ思ってねえって」
「オレの戦う相手を取ろうってんだから、ジャマすんのと一緒だろうがよ!」
「あー、ナルホドですねぇ」
「今日もそうだったなぁ?つーかテメエ、何だよ『一般人を即死させるような力』って?あのボケボケした戦いのドコにそんな要素が有ったっつーんだ!?ドコにも危険そうな雰囲気は無かっただろうが!」
「いやホント、それはスマンて…」
と、オレが謝った時のことだった!
「おい!棚田!和野!こんなトコロで何をしている!?」
監督に見つかってしまった。
「あん?何してるって…、アンタさっきまで倒れてたじゃねえか」
「俺が倒れてた…?」
サブローの言葉に監督が首をかしげる。あ、コレひょっとして記憶が無いパターン?
「サブロー、多分監督には倒れてた時の記憶が無いぞ」
「何だと?」
「おい、和野。お前まで何を言ってるんだ?」
「いやいや!監督も結構なお歳ですから、急に道端で倒れて、その時の記憶が無くなってても不思議じゃ無いなぁってハナシですよ!」
「失礼な!俺はまだまだ現役だ…、とそれどころじゃないんだ!」
監督は重苦しい口調で続きを口にする。
「母ノ暮が急に脚の痛みを訴えだしてな。今日の試合は出られそうにない」
「おいサブロー…」
「チッ!」
母ノ暮が脚の痛みを訴えてるのは間違いなくサブローのせいだ。話すと面倒なことになるから、監督にはナイショにしとくけどな!
「だから今日試合に出られるのはお前達2人だけだ、頼むぞ」
「任しといて下さいよ、監督。母ノ暮とサブローの分までオレ、頑張りますんで」
「おい!オレは無事だ!!」
オレは監督にサムズアップで答えた。
が、試合中も魔法少女フェアリーティアーズのことが気になって仕方ない。今になって思うと、あの変身シーンは中々エッチだったなぁ。昨今のアニメは規制が激しくて、アソコまでエロい変身バンクを作ってくれぬものだ…。待てよ…?カズが最近、未来来のことをじろじろ見てたのって、もしかしてアイツの変身シーンを見てしまったからなんじゃないか?カズと付き合いの長いサブローが「カズが転校生に惚れたとは考えにくい」と言ってたし、きっとそうだ!だとするとカズが魔法少女を初めて見たのは、未来来が転校してきた日の放課後…ってコト!?
とか上の空になっていたのが良くなかった!考え事に夢中になっていたオレは、力加減を誤って先輩にパスを出してしまった。
「どぅあぁっ!!おい和野ぉ!!オレを殺す気か!?」
オレの殺人パスをすんでの所で躱した先輩が詰め寄ってくる。
「スンマセン、先輩!!」
そう謝るオレだったが、その後も試合に集中出来ず、変なミスを繰り返してしまう。
オレがミスばっかするので、サブローがオレと入れ替わる形で試合に出るのだが、アイツも色々思うことがあるのだろう。試合に集中出来ず、ミスを連発してしまう。特に、相手のゴールとは全く違う方向にシュートしたボールは、見つけることが出来ないほど遠くまで飛んでしまった。死人が出てないことを祈るばかりです。
結局、頼みの綱だった3強が全員使い物にならず、試合は負けてしまった。久しぶりの敗北に、チーム内は重苦しい空気に包まれている。
その反面、オレは今まで感じたことの無い高揚感に浸っていた。
ああ、魔法少女!アニメや漫画でしか見たことの無い魔法少女が現実の世界に存在するとは!!しかも、変身するのはオレのクラスメイトと来たもんだ!これにワクワクせずして一体何にワクワクしろというのか?
そんなウキウキした気持ちで週末を過ごし、そのままの状態で月曜日も登校することが出来た。まあ、サブローは格下相手に負けたのがズイブン腹立たしいようで、月曜まで引きずってたがな。
「ういーっす!!」
先に教室に来ていたカズに、オレは元気よく挨拶する。
フッフッフ、カズよ。オレを見くびるなよ?週末中、魔法少女について考えた結果オレは、お前が未来来のことをジロジロ眺めていた理由を突き止めてしまったぞ!お前はアイツが転校してきた日の放課後に、アイツが魔法少女であることを知ったんだな?そこでエッチな変身シーンを見てしまって、お前は悶々としてるんだろ?そうなんだろ?
「カズ、オレは勘違いしてたぞ。お前は恋に苦しんでたワケじゃ無かったんだな?」
「な、何の話だ?」
「それにしても全く、青春してるなー!お前―!!」
「いやいやいやいや…、お前どうしたんだよ」
ココで答え合わせをするべきか、オレは一瞬迷った。が、止めておくことにした。カズに知らんぷりされた時に追い詰める武器が足りてないし、何より教室は人が多すぎる。もっと別のタイミングにしないとな…。
「お、よう!サブロー」
カズが丁度良くサブローに意識を持って行ってくれたので、オレの意味深な発言は掘り下げられないで済んだ。
まあ、逆にオレのハイテンション具合に疑いの眼を持たれてしまう結果になったのだが…
「つーかテメェ、テンション高ぇんだよオイ!」
「いやー、オレっていつもこんなんだろ!なあ、カズ?」
「え?いやー、でも確かに今日のお前はテンション高い気がするぞ?試合に負けたんだろ?帰ってくるまでの間に何か良いことでもあったのか?」
「…そっか、じゃ、もう少し大人しくしてた方が良いな」
とこんなカンジで、ネ。
で、驚いたのがこの後だ。この日一日、カズは未来来では無く海月に目を向けていたのだ。一体なぜ?カズと海月とは、生徒会の付き合いとかでしょっちゅうコミュニケーションを取ってる間柄でしょ?そんなパートナーのことをなぜ今更ジロジロ眺める必要がある。言ってみろ。
答えはそう!「海月が魔法少女」だから!!
いやはや、ビックリしたもんだ。まさかオレらのクラスの学級委員兼生徒会副会長の海月雪花までもが、魔法少女になってるとはねぇ。確か演習試合の前日、生徒会メンバーは「宜野ヶ丘こども文化センター」でボランティア活動をしてたんだったな。恐らくその時、魔法少女に覚醒したのだろう。ボランティア活動を通じてカズの恋心が芽生えたとか、薄い可能性を排除するなら答えはソレしか無い!
つーことは何か?カズもあの特殊なフィールドの中で平気なのか?なるほどなるほど、ウチのクラスに魔法少女が3人。そして魔法少女とは全く無関係なのに、あの特殊な空間で動ける男子生徒が3人。これは楽しくなってきましたぞぉ!
ここで疑問に思ったのですが、魔法少女アニメに登場する男子生徒って、変身前の女子の恋愛対象とかでも無い限り、単なるモブキャラでしか無いですよね?そんなクラスの男子生徒が特に理由も無く魔法少女をボコったとしたら、きっとスゴく面白いことになるんじゃないでしょうか?これってトリビアになりますよね、よろしくお願いします。
(宜野ヶ丘市在住 中学二年生 男)
ま、この疑問の解答が得られるのは、次に魔法少女に会った時だな!一体どうなってしまうのか、オレぁワクワクすっぞぉ!!
第2.5話【洗脳展開無し!! 魔法少女VS中学生男子】 これにて終了です。同時に第一章も終了という事になります。第一章は塔岡少年達3人が魔法少女フェアリーティアーズに出会うことに焦点を当てた章となってます。
次の話から第二章が始まります。第二章では塔岡少年達3人が魔法少女3人とどう関わっていくのかに焦点を当てつつ、新しいキャラが出てくる章になります。お楽しみに!
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