第2.5話【黄の魔法少女 ティアーファイン】 その4「ティアーファイン」
有原が魔法少女になることを誓うと、突如タヌキの体から強烈な光が発生した。
「ありがとうだポン!では早速…」
お、変身アイテムを出すんだな?
「ウボロゥェッ!!」
ウワァーオ、嘔吐して出すのか…。でもその出し方、フザケてて嫌いじゃ無いぜオレ!
「さあ三佳!この『ティアーズブローチ』を手にして『オープン・アイズ・メタモルフォーゼ』と叫ぶポン!!」
タヌキが己の口から吐き出したブローチを有原に手渡した時だった!
「あ!パイセン、ヤツらがなんか不審な動きを!きっとフェアリーティアーズの勧誘っす!!」
赤髪の部下である青髪の女が、タヌキと有原を指して叫びやがった!
「なにぃ!?でかした、リカちゃん!流石にそれは止めねえとな!!」
赤髪の男がインソムジャーに指示を出そうとする。
「インソムジャー!汁を吐き出して…」
「させるか!」
赤髪が命令をし終わる前に、オレは手にしていた消しゴムを投げつける!さっきスマホで救急車を呼ぼうとした際に手にした筆記用具を、そのまま外へ持ち出していたのだ。
「妨がっ!?いった!!」
オレの投げた消しゴムは赤髪の後頭部に見事命中!ヤツが驚きの声をあげる。
「どうしたんすか、パイセン!?」
「大丈夫っすか、パイセン!?」
「いってぇ…、なんか頭に当たったんだが?」
うし、妨害成功!とガッツポーズをしようとした時、サブローがオレに掴みかかってくる。
「おい!オレを止めておきながらテメエは攻撃すんのか!?」
「いや、攻撃じゃねえって!これから大事な場面に入るから、妨害されないように妨害の妨害をしたの!」
「大事な場面だと!?」
「まあ見とけって!今夜は眠れねえかもだぜ?」
「またそうやってワケの分からんことを…」
サブローが困惑する一方で、赤髪達は辺りをキョロキョロ見回している。ま、あの消しゴムは結構使い込んでて小さくなってたから、グランドの芝に落ちたら中々見つかるまい。
何にせよ、チャンスは作ったぜ有原!お前の魔法少女デビュー、この目にしかと見せてくれ!!
「オープン・アイズ・メタモルフォーゼ!!」
有原が変身の呪文を唱えると、変身アイテムから強烈な光が彼女に向かって照射された。
有原の体が光に包まれて宙に浮く。そして、着ているチアリーダーの衣装が音も無く破け始めたぞ!下に隠れていたブラジャーとパンツが露わになり、それすらも散り散りに破けて、一糸纏わぬ全裸をオレに晒してくれた!あぁ、良いっすねぇ~。やっぱ魔法少女の変身シーンつったら、服が破けてからの全裸だよな!分かってますわ、あのタヌキ。破けた服は変身アイテムに回収されていくね。で、変身を解く際に返してくれるんだろ、知ってますよソレくらいは。
有原が全裸になっている。やっぱ一番注目するべきは、あの豊満なバスト!なぜそんな小さな体にスイカみたいなデカブツ2つを付けていられるのか?人体の不思議だなぁ、と思ったがトランジスタグラマー自体とても珍しいモノらしいから、人体の不思議じゃなくてアイツ独自の不思議ってヤツか?まぁ、ソコはどうでもよろし。あとねえ、コイツ尻もデカいんだな!跳ねたときに揺れる胸ばかりに集中して尻の観察が疎かになってるヤツが多いから、アイツの尻は知る人ぞ知る名物みたいな扱いになってる。そして胸と尻を繋ぐ腹の部分はキュッと細くなってて、まさにボンキュッボンのナイスバディ!!スポーツ部のオス共から人気が高いのも頷けるってモンよなぁ…。
と、長々と語ってきたが、オレが女子を外見で決めたりしないって部分は変わってないから、そこら辺は覚えておけよな!?
服の破片を吸い尽くした変身アイテムから黄色い光の帯が伸び、有原の体に巻き付いていく。帯が出終わり、アイツの体をギュッと縛ったかと思った次の瞬間、黄色を基調とした魔法少女の衣装に帯が変化した。ミラクルがピンクで、有原が黄色か…。もうちょいカラーバリエーションが有りそうだな…。どっちも暖色系のカラーリングだから、寒色系の魔法少女もいそうだね!正体は誰だろうなぁ…?知らない人だと若干テンション下がるぞ?
…とか考えてる間に変身が完了してしまっていた。いつの間にか有原の髪色が鮮やかなレモンイエローに変色してる。思うんだけど、髪の色や長さが大幅に変化するタイプの魔法少女って、変身する度に髪に深刻なダメージがいってるんじゃないのかね?変身を繰り返した後遺症で、若い内から髪がボロボロ抜け落ちるようになったらカワイソウ!お母さん、見てられないわ!!
「フレッ!フレッ!皆!全人類に元気をあげる声援の魔法少女!ティアーファイン!!」
あ、また余計なことを考えてる間に、変身の名乗りまで済まされてしまった…。有原の変身した魔法少女は「ティアーファイン」って名前なのか。
「はあっ!?はぁ、はぁ?エロ、はぁ!?」
奇声が聞こえた方を振り向くと、サブローが顔を赤くしながら荒い息を吐いていた。
「おやおや、魔法少女の変身シーンを見るのは初めてかいボウヤ?」
「おいロム!さっき言ってた『大事な場面』ってコレのことか!?」
「そうだよ?どうだイイモン見れたろう」
「うるせえ!!」
「おやおや顔を赤くしちゃって、体は正直ね。きゃっわいい!」
「ふざけろテメェ!!オレがあんなザコ相手に興奮なんかするか!!」
サブローがオレにつかみかかる…、が殴ってくるようなコトはしてこない。ははぁ、何だかんだでエッチな変身シーンを見ることが出来たのが嬉しいんだなコイツ!だから必死に照れ隠ししながらも、変身成功の立役者になったオレには危害を加えない、と。
なんてオレ達のやり取りを他所に、赤髪の男と部下達は頭を抱えている。
「やっちゃったっす!!」
「フェアリーティアーズが増えちゃったっす!!」
「くっそぉ、これじゃあE・トゥルシーのことを笑えないじゃないか!何としてもココで倒さねば!!」
赤髪の男がインソムジャーに命令を下す。
「その新しいフェアリーティアーズを叩き潰せ、インソムジャー!」
「イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!」
インソムジャーが大きい手で、有原を蠅のように潰そうとする。
「うわっと!!」
有原は驚きつつも、後方に大きく跳んで攻撃を躱した。
「うわぁ、スゴーい!!ファイン、こんなに跳んだの初めて!!」
おやおや?一人称が「三佳」から「ファイン」に変化してるぞ?
ねえ、また余計なことを考えちゃったんだけど、魔法少女ってどうして変身後は魔法少女の名前で互いを呼び合うんだろうね?変身前の時は普通に本名で呼ぶくせに、面倒くさくね、ソレ?オレはどっちも有原呼びで良いかな。こっちの方が呼び慣れているので…。
「まだまだ行くんだ!インソムジャー!」
「イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!」
インソムジャーはパンチ攻撃を繰り返すが、有原はそれをピョンピョン跳ねて躱し続ける。大したジャンプ力だ…。ま、オレやサブローには劣るがな!つーか、魔法少女って見た目の筋肉量は全然変化しないクセに、なんで身体能力が大幅にアップするんだろうね?まあ、魔法少女だからか…。
「って、跳ね回ってばかりじゃ勝てないよね」
気がついたか…。
「ねえ、何かフェアリーティアーズの武器って無いの?」
「あるポン!腰のステッキを持って『フェアリーティアーズウェポン・チェンジ』だポン!」
「オッケー!」
有原はタヌキの指示に従い、腰に差してあるステッキを手にする。先端に雷のようなギザギザ型の黄色い水晶が付いており、柄の部分まで黄色いステッキだ。
「フェアリーティアーズウェポン・チェンジ!!」
有原の掛け声と共に、ステッキが形を変える。2つに分離したかと思うと、それぞれが輪になって彼女の両手に収まった。戦輪か?ズイブンとマニアックなところを…
「はぁっ!!」
というオレの予想は外れていた。有原が両手に力を込めると、たちまち輪から大量の雷が放出した。バチバチと音を立てながら、放電された雷が彼女の両手を覆うように凝縮される。ナルホド、雷エネルギーで出来たポンポンってワケね!応援することが大好きなチア部の有原らしい、ピッタリの武器だ。
「はああああ!」
有原がインソムジャーに向かって両腕を突き出す。
「ファイン・サンダーシュート!!」
ポンポンから発射された雷エネルギーが、インソムジャーに炸裂した!




