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第4話【魔法少女フェアリーティアーズとは何なのか】 その8「世界を守る6人」

解説回となった第4話は今回で終わりです。戦闘の無い退屈な話だったと思いますが、読んで下さりありがとうございました。

「なあ、お前ら。もう結構いい時間だし、ここらでお(いとま)しねえか?」


 絶好のタイミングだと思ったので、オレはロムとサブローにそう切り出してみる。


「そうだな。今日はこのくらいにしときますか!」


「ああ、さっさと帰ろうぜ」


「あ!!ちょ、ちょっと待って欲しいポン!」


 立ち上がるオレ達3人に対し、ポンイーソーが声をかける。


「何だ?ポンイーソー」


「ここまで色々説明してきたんだポン。最後に一つ、オイラのお願いを聞いて欲しいポン」


「あ、それはそうだね」


「まあ、そんくらいしてやらんとねぇ」


「…何だよ?」


オレ達3人は、ポンイーソーのお願いに耳を(かたむ)ける。


「今までの話で分かったと思うけど、フェアリーティアーズの戦いは遊びじゃ無いんだポン。この世界の運命が()かってるんだポン。だからフェアリーティアーズとインソムニアとの戦いには、これ以上関わらないで欲しいんだポン」


 なるほど、そう来ますか。でも確かに、オレ達が余計なことをしたせいで敵の侵略が成功してしまうようなコトになれば、腹を切って()びたとしても許されないだろう。変身シーンを見物出来なくなるのは口惜しいが、オレ達はこれ以上関わらない方が良い。


「ああ、それはモチロン…」

「断る!!」


 オレの言葉を(さえぎ)り、ロムが大声をあげた。


「ば、バッキャロイ!!」


 オレは思わずロムの頭をひっぱたいてしまう。


「お前、状況分かってんのか!?この世界の運命が懸かってるっつってたよな!?3人のジャマしちゃダメなの、まだ分かんないのか!」


「だから3人の戦いを黙ってコソコソ見てるだけに(とど)めてろってか?そんなのヤだね!むしろココまで話を聞いてきたからこそ、オレ達は黙って見てるだけじゃなく、色々協力してやるべきなんだろうがよ!!」


あ、あれ…?何だか言ってることがマトモだぞ??


「ポンイーソーよ」


 そう呼びかけ、ロムはポンイーソーに視線を向ける。


「ここまで来て『黙ってジッとしてて下さい』だなんて水臭いじゃねえか。オレ達3人にも協力させろよ!」


「おい、ちょっと待て!オレもか?」


 サブローが待ったをかけた。


「サブロー、お前こう思ってたんじゃねえのか?『平和な日常はつまらない。もっと自分の力を発揮(はっき)出来るスリリングな毎日を過ごしたい』ってよ」


 オレはその言葉を聞いて息を()む。その思想は(まさ)しく、未来来(みらくる)と出逢う前日に考えていた妄想そのものだったからだ。


「こんな機会は人生で二度と無いかもだぜ?世界の運命が懸かった戦いに関われるなんて、最高にスリリングで、最高にワクワクするじゃねえか!」


「フン、なるほど…。そう言われちゃ、否定できねぇな」


「盛り上がってるところ申し訳ありませんが…」


 ここで海月が割って入ってきた。


「今日のように貴方達にいきなり暴力を振るわれるようでは、私達は安心して戦うことが出来なくなりますね」


「あぁ、そういったことはもうしねぇよ!」


海月の懸念を、ロムはバッサリと切り捨てる。


「オレの興味はスッカリ変わっちまったからな!今は『オレ達はどうやってこの世界を守っていくのか』それだけがオレの好奇心に火を()けてるのよ!!サブロー、お前はどうだ?」


「安心しろよ、ゴミアマ。お前らじゃオレに勝てねえことは分かった。これ以上ボコっても強さの証明にはならねえ。最も…」


サブローは海月の目を見て言葉を続ける。


「テメエがまた調子に乗るってんなら、容赦はしねえけどな」


「上等です」


「え?雪花ちゃん?」


一切臆せず言葉を返す海月に、有原が心配そうな視線を送る。

 その視線に気付いた海月が、有原に言葉をかけた。


「三佳さん、強くなりましょう。私達は今日、棚田君に負けてしまいました。この悔しさをバネに成長しなければ、本当に負けられない戦いが来た時、私達は乗り越えることが出来なくなってしまいます。だから強くなりましょう。棚田君に負けない程、強く!」


「スゴいな、海月は…」


 オレは小さく言葉を漏らした。あれだけサブローにボコボコにされたのにもかかわらず、彼女の心は一切折れていなかった。彼女はむしろ、敗北を(かて)に強くなる決心を今までの間に固めていたのだ!なんて強い女性なんだろう…。この強さが、彼女最大の魅力なのだと改めて知ることになった。


「…うん!その通りだね、雪花ちゃん!いっぱい頑張って強くなろう!だって三佳達、魔法少女だもんね!!」


 有原の胸にも、海月の意志は届いたようだ。彼女の心強い返事を聞いた海月はニッコリと微笑(ほほえ)んだかと思うと、すぐさまサブローに対して強い視線を向ける。


「改めて宣言しましょう。私達フェアリーティアーズはこれから強くなります。いつか棚田君を倒せるほど強くなり、世界を救ってみせましょう!」


「フン、その言葉忘れるんじゃねえぞ?」


そう言ってサブローはニヤリと笑った。


「う~ん!良いじゃん良いじゃん!!燃えてきたね、雪花ちゃん!!」


 海月の熱い宣言に押されたのか、有原と未来来も立ち上がった。


「頑張りましょうね、希さん、三佳さん。この世界を、私達の手で救うために!」


「モチロンだよ!!」


「ファイトォ~、オーッ!!!!」


 未来来が元気よく答え、チア部の有原が気合いを入れた。


「えっと、つまりロム達もインソムニアと戦ってくれるってことポンか?」


 気合いを入れる魔法少女3人組の横で、ポンイーソーがオレ達に問いかける。


「おう!止めても聞かねえぞ?こんなに楽しそうなイベントを放って日々を過ごすだなんてマネ、オレには出来ねえからな」


「そう受け取って問題ねえよ。あのインソムニアって連中は気に入らねえ、オレのいる世界を侵略しようだなんて調子に乗りすぎだ。痛い目にあわせてやらねえとな」


「はあ…。そういうことならもう、オイラから止めることはしないポン…」


 そう言って、ポンイーソーは(さじ)を投げてしまった。


「うし!これから楽しくなるぜぇ?カズ!サブロー!」


「あのさ!ちょっと良いかなぁ!?」


 オレは耐えきれず口を(はさ)む。


「オレは戦わねえからな!?お前らや魔法少女と違って、戦闘力(ゼロ)なんだから!誰がなんと言おうと、絶対戦わないぞ!!」


「安心しろよ、カズノリ」


 ここで声をかけてきたのは…、やはりサブローだったか。


「お前はオレが守ってやる。そういう約束だろ?」


「覚えてくれてたのか…」


「お前がオレを止めに来た時、素直に聞いただろ?それが証拠だ」


「そうかぁ」


「あ!オレもさ、カズに無理矢理戦わせたりはしねえから安心しろって!!」


 蚊帳(かや)の外にされるのを恐れたのか、ロムが割り込んでくる。


「はぁ、仕方ねえな!」


 オレはため息をついた。


「ここまでワクワクしてるお前らを止めることなんて出来ねえや。世界を守るためって名目が守れるなら、好きにしろよ」


 もうコレは「乗りかかった船」というヤツだろう。ここで逃げたら男が(すた)る。幸い、オレが戦う必要は無いようだし、今まで通り影からの観戦者で通させて貰うことにしよう。


 こうしてオレ達6人は、インソムニアの連中から世界を守るための戦いに身を投じることになったのだった。

 …と言っても、全員の足並みはまだ(そろ)っていない。男子3人と女子3人で別れて気勢を上げている今の状態からも、それは明らかだ。いつの日か6人全員でインソムニアに立ち向かえるようになれたなら…、とオレは(ひそ)かに思うのだった。






 その晩。オレは自室で未来来と出逢う前日、GW(ゴールデンウィーク)最終日の自分を思い出していた。その時のオレは『平和な日常はつまらない。命の危機があるような、スリルに(あふ)れた日々を過ごしたい』と確かに妄想していた。

 そして今、その妄想は現実の物となった。オレは命の危機がある、スリルに溢れた日常に放り出されたのだ。

 だが、いざそうなってしまうと、今度は平穏だった日常が恋しくなってくる。インソムニアの連中が襲ってこない、穏やかな日常に戻れたなら…。

 などと現実逃避する一方で、不思議と不安は感じなかった。オレがネガーフィールド内でも動き回れるほどの楽天家だからだろうか?それとも、ロムとサブローが一緒にいてくれる安心感からだろうか?

 恐らく後者だろう。その証拠に、この日の夜は久しぶりに熟睡出来た夜になった。

 オレは(ひと)りじゃない。この安心感が、オレに心地よい眠りの時間をもたらしてくれたのだった。

第4話【魔法少女フェアリーティアーズとは何なのか】 これにて終了です。第5話…と行きたいところですが、ここで一旦時を戻し、有原(ありはら)三佳(みか)が魔法少女に覚醒する話をお送りします。第2話と第3話の間の話となる第2.5話、お楽しみに!


 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。気に入っていただけた方は是非、ブックマーク、評価、リアクションの方よろしくお願いいたします(既にして下さった方はありがとうございます)。今後の執筆活動の大きな原動力になります。

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