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第4話【魔法少女フェアリーティアーズとは何なのか】 その5「未来来の正体」

 オレ達3人は未来来(みらくる)に驚きの視線を向ける。


「未来来、お前、この世界の人間じゃ無かったのか?」


 オレは思わずダイレクトに()いてしまう。


「うん、実はそうなんだ…。今まで黙っててごめんね」


「いや、別に謝ることじゃないけど…」


「でもまあ、そう考えると、サブローに延髄斬(えんずいぎ)りされたにも(かか)わらず、一切怒らないでヘラヘラしてるのも理解出来るな」


「ロム、その言い方もなんか失礼じゃないか?」


 そう指摘しながらも、オレは頭の中で未来来に対して覚えた違和感を振り返っていた。歓迎会での、あの返答…


『前はどこの学校に通ってたの?』

『え、えーと…、その質問には答えられないかな…。ごめんね!』


質問したのは有原だったか。あの質問に未来来が答えられなかったのは、答えが「ココとは違う世界出身」だったからなのか!


「希の生まれた世界がインソムニアの侵攻を受けていると知り、オイラはフェアリーティアーズになれる()を探しに行ったんだポン。でも中々見つからなくて、ようやく希を見つけた時にはもう、彼女一人ではどうすることも出来ないほど侵略が進んでいたんだポン…」


 罪悪感からか、落ち込んだ口調で語るポンイーソーを、未来来が(かば)う。


「ポンちゃんは悪くないんだよ!?私の生まれた世界では、たまたまフェアリーティアーズの素質がある人間が少なかったの!そうなんでしょ、ポンちゃん」


「ありがとうだポン、希」


そんな平行世界出身の1人と1匹のコミュニケーションを目にしたロムが、サブローを冷やかす。


「いい娘じゃないか、未来来さんは。サブローよ、お前はこんな良い娘に延髄斬りを食らわせたってのかい?」


「黙れ。ジャンケンに勝ったらテメエが戦う事になってただろうが」


「おっと、こりゃ一本取られましたな」


 ロムは可愛くないテヘペロを見せつつも、真面目なトーンで未来来に話しかける。


「でもマジメにお前、結構キツい過去背負ってたんだな?」


「気にしないで大丈夫だよ、ロム君」


「そうか?言っとくけど、オレは相手の(つら)い過去に同情するとか、そういうシンミリした空気は大の苦手だからな。気にしないで、って言われたらホントに気にしないぜ?」


「和野君、それはちょっと…」


「良いの、雪花ちゃん。私も無理して同情される方が辛いし、それに…」


 未来来はちょっとモジモジした様子を見せながらも、言葉を続ける。


「歓迎会の日、明るくて面白いロム君を見て私、元気を貰えたんだ!この世界に来て色々と不安もあったけど、楽しくやって行けそうだなって!だから、ロム君にはその…、あんまりシンミリして欲しくないの」


「ほうほう、そうですかい!こりゃあ、自分のキャラを突き通した甲斐(かい)があったモンだねぇ」


 未来来に()められ、ロムはいつものおちゃらけた様子にシフトチェンジする。こういった時、変に照れたりしないのがロム流なのだ。

 にしても、そうだったのか。オレの知らないうちに、お前は一人の人間を救っていたんだな、ロム…。


「ポンイーソー。お前さっき『インソムニアが大量の戦力を投入出来るようになってからでは遅い』と言ってたな?なぜヤツらは最初から大軍で攻めてこようとしない?」


「棚田君ってホント空気読めないんだね!」


 そんなやり取りをガン無視してポンイーソーに疑問をぶつけるサブローに対し、有原が反発する。


「馬鹿か、お前?コイツは『遅い』と言ったんだぞ?つまり、オレ達が初動を間違えれば全てが終わるというコトだ。空気なんかを気にしてる場合か?」


「サブローの言う通り!確かに重要なポイントですよ、奥さん」


「そんなぁ、ロム君まで…」


 ロムがサブローの肩を持ったのを目にし、有原が悲しそうな顔をする。おいロム、ひょっとしてお前、メチャクチャ罪深い男なんじゃあないか?


「インソムニアが最初から大軍で攻めてこない理由は、エネルギーの問題があるからだポン」


 ポンイーソーがサブローの疑問に答え始める。


「インソムニアが平行世界を侵略するために使う技術は全て、開発にも維持にも膨大なエネルギーが必要で、人間の感情以外で代用は出来ないんだポン」


「アイツらは今までも多くの世界を侵略してきたんだろ?支配下に置いた人間から感情エネルギーを吸い取れば十分なんじゃねえのか?」


「着眼点は悪くないポンね、サブロー。でも、その支配下に置いた世界の維持管理にもエネルギーは必要になるポン」


「…どういうことだ?」


「パラレルゲートは一度閉じると、二度と同じ世界にアクセスすることが出来なくなるんだポン」


「一度開いたらずっと開けてなきゃダメ…ってコト!?」


 ロムが大げさに驚いて見せた。


「そうだポン。それに加えて、平行世界に多くの物資を運び込んだり、それこそ大軍を寄越(よこ)したりするにはゲートを拡張する必要も出てくるポン」


「その拡張にも膨大なエネルギーが必要、と。」


「その通りポン。まあ、繋がるはずの無い平行世界同士を繋げる規格外の技術なんだから仕方ないポン」


「じゃあインソムニアが、オレ達の世界に繋がるゲートを開いたときに使ったエネルギーって…」


「良い例えがあるポン。インソムニアの平行世界侵略に関しては、『会社における新事業の開拓』と同じモノだと思えば良いポン」


「ハァ~、ナルホドねぇ」


 ロムが何かを会得したようにウンウンと頷く。


「おいロム。まさかお前、今の例えだけで全部理解したワケじゃねえだろうな?」


「そのまさか、と言ったら?」


 ロムの返答に、サブローが目を見開く。


「まあ、全部合ってる自信は無いけどな。何か間違いがあったらポンイーソーが指摘してくれるさ。サブロー、会社が新事業を開拓するとき、必要になってくるモノは何だ?」


「そりゃあ、金だろ。あとは人か?」


「その通り。人についてはまあ、支配下に置いた世界から引っ張ってくりゃ良いとして、問題なのは金だ。この話ではエネルギー源、つまり人間の感情が金に相当するって考えれば良い」


 ロムが気持ち良さそうに解説を始める。コイツのこんな様子を見るのは、今日二回目だな。


「さっきポンイーソーが言ってたけど、侵略が完了した世界の支配を維持するためには、その世界に繋がるゲートの維持が必要になる。だから支配下にある人間の感情エネルギーの大部分は、その維持に使われる。そしてその余剰分が新事業の開拓、つまり新しい世界を侵略するために開くゲートの開発費と維持費に使われるってワケよ」


「はあ…」


「ここまで来りゃ、さっきお前が気にしてた『なぜ最初から大軍で攻めないのか』って疑問の答えは見えてくるわね?」


「最初から大軍を送れるほど大きなゲートは開けないから、か」


「その通り!加えて言うなら、インソムジャーを生み出すために使われる物体。アレの開発にも人間の感情エネルギーが使われてるみたいだから、『大きなゲートを開かずともインソムジャーならその場で大量に作れるじゃん』って考えもダメッ…!なんだな~」


「なるほどねぇ」


「よーし!気分が良くなってきたし、次の段階に行っちゃうぞー!」


 ロムはすっかりノリノリだ。


「そんなカンジで初期投資を済ませ、新しい世界へのゲートを開いたインソムニア御一行様(ごいっこうさま)。初期投資をしたからにはモチロン、それに見合った成果を回収しなくちゃならないよな?さて、ヤツらは一体、どうやって成果を回収してるでしょーか?」


「はあ!?んなモン知るわけねえだろ!」


「んじゃあヒント!ここで言う成果ってのはズバリ、オレ達の世界の人間から感情エネルギーを奪うことだ!ゲートの維持にも、兵力となるインソムジャーを造るのにもコレが必要なワケだからな」


「…サッパリ分からん!」


 サブローは答えが浮かばないようだが、オレには一つ心当たりがあった。人間の感情を奪うには、人間の内側に触れる必要がある。ヤツらが取っている行動の中で人間の内側に触れているモノと言ったら一つしか無い。


「もしかして…、『ネガーフィールド』か?」


 思い切ってオレが答えてみる。難しいことを考えるのが好きじゃないサブローが「分からない」と言ってるなら、オレが答えても構わないということなのだ。


「ご名答。流石(さすが)だね、カズ君」


 ロムはオレの答えを正解と断定した。

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