第4話【魔法少女フェアリーティアーズとは何なのか】 その3「ポンイーソー」
「今度はコチラからも謝らせて欲しいポン」
サブローと海月を止めた後、タヌキがそう切り出した。
「塔岡君、ロム君、棚田君。無関係なハズの3人をフェアリーティアーズの戦いに巻き込んじゃって、本当にごめんね」
そう言って未来来が頭を下げる。
「いやいや、未来来さんは何も悪くないでしょう」
オレは正直な感想を伝える。
「巻き込んじゃって、って言うけど、実際はオレ達の方が勝手に首を突っ込んだワケだし…」
「そうそう、カズの言う通りだな!」
「あんなヌルイ戦い、オレやロムにとっては屁でも無えんだよ」
ロムも、あと一応サブローも、オレに同調した。
有原と海月も疑問を口にする。
「そもそも、3人が『ネガーフィールド』の中で動ける時点で、三佳達に何か出来ることってあったの?」
「3人が動けること自体、私達は知りませんでしたし…」
「まあ、皆の言う通りかもだけど、それでも戦う場所を選ぶくらいは出来たのかなぁって…」
「とりあえずさ、謝ってばっかじゃ話が進まんだろ?謝罪タイムはココまでにしとこうや」
ロムがそう提案する。たまにこうやってマトモな意見をくれる時があるんだよな、コイツ。
「それもそうポンね。じゃあ、お言葉に甘えてココまでにしとくポン」
タヌキの言葉で、双方の謝罪タイムは終了となった。
「んじゃ、早速だけど『フェアリーティアーズ』について詳しく教えてくれや」
「『インソムニア』だかっていう、あのフザケた集団についてもな」
ロムとサブローが疑問を切り出す。
「そうだね。3人にも教えてあげなくちゃ…」
「でも、ドコから教えたものポンね…」
おいおい、タヌキよ…。ココに来るまでの間に話の順番くらい決めといてくれよ。
「……。そもそもさぁ」
少し間を空けた後、ロムが口を開く。
「タヌキ君、君の正式な名前は何つーの?」
「お、オイラの名前ポンか?」
「今の所、『タヌキ君』と仮の名前で呼ばせて貰ってるけど、本名はそうじゃねえだろ?後、ソコの3人からは『ポンちゃん』と呼ばれてるけど、それも本名じゃあるまい」
「オレ達にそんなフザケた名前で呼ばせるなよ」
サブローの気持ちも分かる。思春期男子が魔法少女のマスコットキャラクターを「ポンちゃん」呼びするのは恥ずかしい。
「もちろんだポン!オイラの名前は『タヌキ』でも『ポンちゃん』でも無いポン!オイラの名前は『ポンディウス・イーガルヒー・ソードレック』!遠慮無くフルネームで呼んで…」
「長い!!」
自分で名前を訊いておきながら、ロムはタヌキの言葉を一刀両断する。
「長い!長いんだよ!一々『ポンディウス・イーガルヒー・ソードレック』なんて呼んでられるかい!」
「いや、お前よく一回でコイツのフルネーム覚えられたな?」
「もう『ポンイーソー』で良いよ、ポンイーソーで」
「「「「「「ポンイーソー?」」」」」」
ロムが示したタヌキのあだ名に、一同がオウム返しをする。
「そ、『ポンディウス・イーガルヒー・ソードレック』の頭文字を取って『ポンイーソー』だ。悪くねえだろ?」
「確かに呼びやすくはあるな…」
「語感が良いしね」
サブローもオレも「ポンイーソー」というあだ名に肯定的な態度を示した。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
が、ココで海月が「待った」をかける。
「和野君。そのあだ名、麻雀の役から取ってますよね?」
「だったら何か問題でも?」
ロムは飄々と言葉を返す。
「良い役じゃねえか、混一色。鳴いたとしても、役牌やドラがあれば簡単に満貫以上に届く役だぞ?他の役と複合する可能性も高い。オタ風が固まった時には、まず狙うべき役だろ?」
「確かに、初心者でも狙いやすい染め手ではありますけど…」
ロムと海月の麻雀談義に、他のメンバーはついて行けてない。
「よ、よく分かんないけど雪花。馬鹿にしてるワケじゃ無いなら、オイラは別にソレで構わないポン」
「そ、そうですか?ポンちゃんさん…」
「んじゃ決定だな。よろしく頼むぜ、ポンイーソー」
タヌキ本人からの了承も得られたので、オレ達男子3人はタヌキのことを「ポンイーソー」と呼ぶことになった。
「じゃあポンイーソーよ。君の生まれはいったいドコなんだい?少なくとも『この地球』生まれじゃ無いだろ?『ポンディウス・イーガルヒー・ソードレック』なんて名前の語感、ドコの国にも無えからな」
ロムが次の質問をする。なるほど、そう持って行くために、最初にポンイーソーの名前を訊く所から始めたのか。
「その疑問に応えるためにも、まずは『平行世界』について話していくことにするポン」
ポンイーソーはそう言って話を始めた。
「いきなりで信じられない話かもしれないポンが、この世に存在する『世界』というのは、お前達の住んでいるこの世界一つだけでは無いポン。科学以外の技術が発展した世界、海が存在しない世界、そもそも人間という種族自体が生まれなかった世界…、数え切れないほどの『世界』が存在してるんだポン」
「別に信じられない話でも無えよポンイーソー。俗に言う『異世界』ってヤツだろ?」
ロムが分かりやすい言葉に置き換える。
「三佳にもそう言われたポン。この世界の人にとって分かりやすい概念でホント助かるポンね」
「この世界の人つっても、多分限られた地域の人にしか理解して貰えんぞ?」
確かに、ラノベやアニメの文化が無い地域の人には難しい概念かもしれない。
「まあ良いや。ポンイーソーは異世界出身なんだな?」
「正しくは『平行世界』ポン。さっき言った無数の世界は本来、決して交わる事が無いんだポン。だから自分が今いる世界以外のコトは『平行世界』と呼ぶんだポン」
「その『平行世界』ってのも、要はオレ達の言う『異世界』ってのと変わりは無えんだろ?」
「まあ、そうポン。」
話はポンイーソーとロムで回してくれている。正直、ロムの方で話をまとめたり進めたりしてくれるのは非常にありがたい。非現実的な話ということもあり、学級委員としてクラスの議題を進めていくのとは勝手が違うのだ。
「で、本来交わらないハズの『平行世界』が、オレらの世界と繋がっちまってるって状況なのか?」
「ロム、と言ったポンね?ちょっと話が進むのが早すぎるポン」
「おっと、コイツは失敬」
「まあ、ロムの言ってることは間違いじゃ無いポン。でもまずは、オイラの生まれた世界について話をさせて欲しいポン」
ポンイーソーは自分の生まれ故郷について話し始める。
「オイラの生まれた世界とこの世界との大きな違いは二つあるポン。一つは、人間の姿だポン。お前達にはオイラの姿がタヌキに見えてるようだけど、オイラの故郷ではコレが人間の姿なんだポン」
そう言って自分の体を指さす。
「世界中ポンイーソーみたいなタヌキだらけってことか?」
「あ、言い方が悪かったポン。オイラと同じタヌキのような姿の人間もいれば、この世界で言うイヌみたいな姿の人間もいたし、ネコみたいな人間もいたポン」
「要は、ポンイーソーみたいな可愛いアニマルの姿が、お前の世界での人間の姿ってワケね」
「そうだポン。共通点といったら、皆オイラと同じくらいの背丈だったポンね。ちなみに、この世界の人間と同じような姿のヤツはいなかったポン」
要するに「女児用アニメに出てくるマスコットの故郷」みたいなカンジの世界ってことか。とは思ったが、ポンイーソーに「女児用アニメ」と言って伝わるか怪しかったので、口にはしない。
というかそもそも、クラスの女子の前で、女児用アニメについて詳しく知っているかのような発言をすること自体、思春期男子には恥ずかしくて出来ないことだったのだ。




