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第3話【洗脳展開無し!! 魔法少女VS中学生男子】 その4「ロムの真相」

 魔法少女のエッチな変身シーンを見物したロムは、満足げな様子で答え合わせを始める。


「まずは簡単な方から行くか。カズ、オレがどうして、有原が魔法少女だったことに驚いてないかってのはな…」


「それはもう分かるよ」


 オレはロムの言葉を(さえぎ)る。


「お前がこの空間を初めて見たのは、この前の演習試合だったんだろ?あの試合には有原も同行してたから、そこでアイツが魔法少女だと知ったんだ」


「おお、流石はカズ、その通りだよ。一つ付け加えるなら、有原は最初から魔法少女だったんじゃなくて、あの日初めて魔法少女になったんだがな」


「ロム、オレが知りたいのはソコじゃない。さっきお前は、オレがこの空間を経験した回数や時期まで把握してただろ?そこが気になってるんだ」


「おいカズノリ、1人で納得してんじゃねえよ」


 サブローが割り込んでくる。


「ロム、オレは分からねえぞ?お前はさっき『3人が並んでいるのを見たのは初めて』つってたよな?なのにどうして海月が魔法少女だと知ってた?」


 確かにそうだ。海月が魔法少女に覚醒したのはボランティア活動の日、有原が魔法少女に覚醒したのは演習試合の日で、それぞれ別日だ。そしてロム(いわ)く、「ネガーフィールドを経験するのは今日で2回目」で「魔法少女3人が並んでいるのを見たのは初めて」らしい。彼の言葉に嘘が無いなら、どう頑張っても海月が魔法少女と知ることは出来ないはずだ。


「慌てるなよサブロー、今から教えてやっから。そしてカズ、この説明がお前が気にしてる謎への答えにもなる」


 肝心のロムは平静を崩していなかった。


「まず大前提として、オレは魔法少女に関連する秘密を持ってるワケじゃない。『実はインソムニアの一員だった』とか『実は魔法少女を(ひき)いる組織のリーダーだった』とか、そういうオイシイ設定があるワケじゃねえよ。つーか、見ているモノだったらサブローと大差は無いハズだぞ』


「じゃあなぜ知ってた?」


「その『知ってた』って表現は正しくない。オレは『知ってた』んじゃあ無くて『推理してた』のさ」


「推理だぁ?じゃあ海月が魔法少女になってるのを見たのは…」


「もちろん、今日が初めてだ。言うなればさっきの変身シーンは、オレの推理に対する答え合わせでもあったわけだな。で、その推理のカギとなったのがお前だよ」


 そう言ってロムはオレを指差す。


「カズ、お前の行動が全てのカギだったんだ」


この瞬間、オレの脳内でほぼ全てのピースが合わさった


「ま、まさか…」


「そう。お前は最近、『特定の女子をジロジロ眺めるクセ』がついてたな?最初の対象は未来来(みらくる)だった。オレはその理由を『カズが恋したから』だと思っていた…が、実際には違っていた。演習試合の日、未来来が魔法少女だと知って全てを(さと)ったんだよ」


 ロムがテンションを上げていく。


「全裸を(さら)すドスケベ変身シーン付きの魔法少女なんて見たら、そりゃあ変身前の本人が気になるわなぁ。思春期男子の摂理ってモンよ。だから、『お前が最初に魔法少女を見たのは未来来が転校してきた初日』なのだと推理した」


そう語るロムの表情はとても気持ちが良さそうだ。彼は今、推理小説の探偵役にでもなっている気分なのだろう。


「でもオレ達が帰ってきた後で、お前が海月を眺め始めたのには少し驚いたぞ?まさかってカンジだったぜ」


「まさか、はコッチのセリフだ」


 そう割り込むサブローは、何か恐ろしいモノを見るかのような視線をロムにぶつけている。


「お前、その時から海月が魔法少女だと推理してたのか?」


「ご名答。言っただろサブロー?お前とオレが見てたモノには大差が無い。『海月も魔法少女なんじゃないか』という発想が、お前に無くてオレには有った。そんだけの話なんだよ」


「んな発想、普通出てこねぇよ」


「どうだろうな?オレと同じ境遇に立てる人間はお前しかいないんだ。どっちが普通か、なんて分かりっこないさ」


 そう言ってロムはふぅと息を吐いた。


「答え合わせは以上!何か質問は無いかな?」


 無いだろうか、オレは考える。そして一つ、重要なポイントを思い出した。


「待てロム、一つ説明を忘れてるぞ」


 そう切り出すオレの脳内に、ロムの言葉が蘇る。


『サブローくん、こういう答え合わせには、やるに相応(ふさわ)しいタイミングがあるのだよ』

『焦る必要は無い、時はすぐに来るさ。ククク…』

『グランドはかなり広いな』

『いやあ、最高の条件だなぁと思ってね』


「お前の今までの口ぶり、今日この場で魔法少女の戦いが起こるコトを知ってるみたいだった。ソコについての解説がまだだぞ」


「ああ、それは完全に(かん)だわ」


 それまでの明確なロジックとは打って変わって非常にアッサリとした答えを聞き、オレは足下から崩れ落ちる。


「いやいや、その反応は無いだろカズ。言ったはずだぜ?『オレにオイシイ設定があるワケじゃない』ってな。広い場所がある、倒れ伏す犠牲者も沢山いる。ただ、アイツらが戦うのにバッチリな条件が揃ってたから『今日ココで戦いが起こるんじゃねえかなぁ』って思って、それに合わせた台詞(せりふ)を吐いてたってだけだよ」


 ロムはうーんと体を伸ばす。


「いやぁ、完全に勘だったんだが当たって良かったぜー。オレが痛いヤツにならなくて済んだし、お前らの反応も楽しかったし、エッチな変身シーンも見れたし、大満足だ」


そう言って笑うロムはいつも通りのロムだった。本人の言う通り、彼に何か秘密があるワケでは無いのだということを、この笑顔で知ることが出来た。

 普段はおちゃらけているロムだが、実は彼、結構頭が切れるのだ。そのヒラメキをギャグで隠しながら人と接するので、中々油断ならない。だが、ソコが彼と一緒にいて面白いと感じる部分でもある。


「フン、そりゃあ結構なことじゃねえか」


 サブローがそう言ってグランドに体を向ける。


「じゃあ、次はオレの番だ」


おいおい、まさか魔法少女の戦いに乱入する気か!?


「ストップ、サブロー!お前何考えてんだよ?」


 ロムが、今にもグランドに飛び出して行きそうなサブローの両肩を慌てて(つか)んだ。ふぅ、コイツがいて助かった…。


「言わなくても分かってんだろ?オレも参戦するんだよ!」


「おいおい、抜け駆けは止めろって!!」


「はぁっ!?お前も行く気なんかい!!」


 オレは思わず大声でツッコミしてしまう。幸い、グランドの連中は戦いに夢中で、この大声にも気付かなかったようだ。


「お前はココに隠れてろよ、カズノリ」


「サブローの言うとおりだ。わざわざ危険に飛び込むこたぁ無えからな」


「いやいやいや!危険と知ってて行く気なんか、おどれら!!」


「危険?何言ってんだお前?」


 サブローが「お前の言ってる意味が分からん」とでも言いたげな視線を向ける。


「オレらがアソコに乱入して死ぬと思うか?」


「それは…」


 言葉に詰まってしまう。ネガーフィールドが平気な以上、この2人が戦死する状況はどう頑張っても想像できなかった。だが、だからといって止めぬワケにもいかない。


「だ、第一、なんで行く必要があるんだよ!?」


「オレの強さを確かめるためだ」


「ほら、魔法少女アニメに出てくるクラスメイトの男子生徒って、大半が取るに足らないモブキャラだろ?そんな男子クラスメイトが魔法少女の戦いに乱入してボッコボコにするって展開になったら、前代未聞で面白くね?」


「くだらねえ!なんだその理由!?」


 2人の参戦理由がアホすぎて(あき)れてしまう。


「くだらねえとは何だ!?」


「じゃあカズはどんな答えを期待してたんだ?」


「もっとホラ、『魔法少女を助けるため』とか『世界の平和を守るため』とか…」


「「くだらねえ!なんだその理由!?」」


「えぇ…」


もう、2人に揃ってそう言われちゃあ、どうしようも無いっすわ…。


「「キャアアア!!」」


 その時、グランドから複数の悲鳴が聞こえた。慌てて目を向けると、ミラクルとドロップが何かを顔面に食らって苦しんでいた。


「ミラクル!ドロップ!きゃあ!!」


2人に気を取られていたファインもその攻撃を食らってしまう。色水だ!インソムジャーが口から色水を吐き出したのだ。そういえば、ヤツの素体(そたい)となったバケツを持ってきたイナーティが「水が入ってる」と言っていたな。あのバケツには絵の具が溶けた水が入っていて、ソレを攻撃手段に変換したのだろう。


「うぅ、眼が…」


「ハッハッハ、イナちゃんの作戦通り、目つぶし成功だぜ!!」


 C・ハータックが大喜びしている。つーか、また部下(イナーティ)に攻撃方法考えて貰ってたのかコイツ。


「チャンスだ、インソムジャー!トドメだぜ!!」


「ああもう!お前らと漫才してたら魔法少女がピンチに…えっ?」


 オレがロムとサブローに目を向けた時、その場に2人の姿はすでに無かった。


「イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!?」


 インソムジャーの悲鳴を聞き、振り返ったオレは言葉を失ってしまう。

 ロムとサブローがココからグランドに飛び出し、勢いそのまま、インソムジャーに跳び蹴りを食らわせていたのだ。

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