表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/18

第1話 始まり

  俺には初恋の人がいる。


  あれは小学生の頃、名前がよく思い出せないんだけれど、確か████と呼んでた気がする。


  白いワンピースに麦わら帽子の姿が良く似合う可愛らしい子だった。


  近所に住んでいたのもあってか親同士も仲良くて、よく遊んでいるうちに段々と好きになっていた。


  だけど、俺が小学4年生になった時、親の転勤で引っ越してしまった。


  そこで俺は、告白も出来ずに初恋を終えてしまったんだ──────




 ()れない(こい)()らない彼女(きみ)


 第1話 始まり




 高校2年の秋、俺は初恋の人の夢を見た。


「あ〜、くそ、頭痛ぇ〜」


 久しぶりに見た夢のせいか、はたまた気圧のせいか、俺は朝から偏頭痛に苛まれていた。


「お兄ちゃん、もう朝ごはんできてるから食べて」


「ああ、ありがとう。今、下に行くよ」


 こいつは妹の琴音(ことね)


 琴音はしっかり者だけど、どこか子どもっぽい無邪気な面もある。学校ではみんなの相談役をしているらしい。


 そんな琴音を、俺は誇りに思っている。


 俺の両親は5年前に離婚してしまい、母が女手一つで俺らを養っている為、ほとんど家に帰って来ず、普段は妹と2人の生活になっている。


「じゃあ私は先に行くから、自分の食器の片付けとかよろしくね」


「ああ、いってらっしゃい」


「うんっ、いってきます」


 そうして妹を見送りつつ時計を見ると、既に時計の針は7時を回っていた。


「やべっ、遅刻する!」


 そんなこんなで、俺の日常はスタートするのだった。






  「赤城っち〜!一緒にいつもの場所でお弁当食べよ〜!」


  こいつは黒澤 緋鞠(くろさわ ひまり)。高一の時に俺と同じクラスで、2番目に出来た友人でもある。入学式の日に盛大にコケたのがツボに刺さったらしく、当日の放課後に向こうから話しかけてきてくれた。


  容姿は金髪ポニーテールの至る所が派手な……世間一般で言うギャルで、最初話しかけられた時は何かされるんじゃないかとビクビクした。


  だけれど、話してみると意外と常識人だったり、趣味が合ったりと今では数少ない俺の友人だ。


  そして"いつもの場所"というのは、隣の校舎にある空き教室の事で、昼は誰も使ってない事を良い事に俺らの昼飯を食べる場所にしている。


  「はい、赤城っち〜。あ〜ん。」


  「やめなさい。そういうのは安売りするもんじゃないのよ。」


  勘違いするから。心臓に悪いから。


  「ちぇ〜。少しはノリなさいよ〜。モテないぞ〜!」


  黒澤は頬を膨らませながら、俺の口の前に持ってきていただし巻き玉子を口に運んだ。そんな他愛もないやり取りをしていたら、ガラガラと少し立て付けの悪い空き教室のドアが開く音がした。


  「もう食い始めてんのかよ〜……お前ら昼休み始まってから教室出るまで早すぎだろ〜……」


  今入って来たこいつは緑川 光輝(みどりかわ こうき)。こいつは2年連続同じクラスで、なんと苗字が俺の前の苗字と一緒なのだ。初日からシンパシー感じて話しかけに行ったのも懐かしい。そんでなんと言っても、俺と違ってイケメンなのだ。……俺の周りは美男美女が集まりやすいのか?


  「てか、また2人でイチャイチャしてんのかよ……頼むから、するなら放課後とかにしてくれ……」


  「してねぇわ!……それより、早く食べちゃおうぜ。今日の5時限目の体育、体育祭の種目練習らしいぞ。」


  「げっ!種目練習!?そういえばもう体育祭の時期じゃんかよ〜……そうだ、私達3人でサボっちゃおうぜ〜5時限目!」


  「そう言いつつまた康太と2人きりになりたいだけだろ〜?」


  そんな冗談を叩き合って昼食を済ませていると、今度はガタガタッと慌ただしくドアが開く音がした。ああ、このドアの開け方は─────


  「おーい、康太く〜ん。いるでしょ〜?」


  こいつは青崎 陽菜(あおざき ひな)。周りのヤツには敬語なのに、俺にだけ何故かタメ口。完全に舐められている。……でも、実際学年で1番の美少女だし、勉強も出来る。運動音痴なところはあるが、寧ろそれが可愛いと男女問わず人気がある人だ。正直、俺が舐められていても仕方ない。


 1年生の時は、黒澤と光輝と同じクラスだったのだが、2年になって青崎と光輝と同じクラスになった。


  「なに、青崎さん。てか、よくこの場所にいるって分かったね?」


  「私の人脈ネットワークを使えば、康太くんが今校内のどこにいるかの大体の特定は余裕よ。それより、委員会の荷物で持って欲しいものがあるの。協力して頂戴。」


  半強制じゃねぇか。正直、偶にコイツに奴隷とでも思われているんじゃないかと不安になる事はある。でも、なんだかんだ同じクラスになってから、コイツのこの強引さに助けられたりしているのも事実だ。


  「……え、……ねえ、私の話聞いてた?」


 青崎さんの言葉にハッとする。……何の話してたっけ?


  「……ああ、つまり赤いき○ねより緑のた○きが最高って事だろ?」


 いかんいかん、何も聞いて無さすぎて適当な事言ってしまった。しかも俺、赤いき〇ね派なのに。


  「はあ……全然違うし何それ。そうじゃなくて、私とデートに行きなさいって言ってんの。わかる?」


  なるほど、デート。デートか。デートね。


  「……はぁ!?で、デート!?!?こりゃ、またなんで!?!?」


  意味わからん!どうしてデートなんかする事になってんだ!?


  「嫌なら別にいいけど。」


  「いえ!有難く行かせて頂きます!!」


  こうして俺は、なんの前触れもなく、青崎との……女の子との"初"デートをする事になってしまった─────

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ