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【バンダナコミック原作大賞応募作品】巨大異世界生物VS人型兵器バズドライバー

作者: TKカフェ

 20XX年。日本。


 その日、世界は一変する事になった。


――――


「大変なことになっております!! 見えますか? 巨大なプレート状の渦巻きでしょうか? 突如東京の上空に発生しました!」

「高見アナウンサー! 渦巻き? ですか? こちらからはあまり良く見えないんですが、どれくらいの大きさですか?」

「そうですねー。このヘリで上空から見ている感じですと、高さ100メートルくらいでしょうか? 20階建てのビルより、遥かに大きい感じです! あ! 動きました!」

「大丈夫ですか? 安全な距離まで離れて下さい!」

「あれ? 何か出てきます! あーーーー!!!!!」


 大きな渦巻きから突如現れた巨大な生物は、アメーバのように触手を伸ばす。


『シュルルル』


 ムチのように伸びたその触手は、ヘリを捕まえると、自身の緑色に透ける体内に取り込んだ。

 取り込まれたヘリが消化液で解けていくのが分かる。


――――


「キタダ博士。この映像どう思われます?」

「どうって、この生物? それとも渦巻き?」

「もちろん、どちらもです!」


 キタダ博士と呼ばれた金髪の長い髪が良く似合う小柄な女性は、テーブルから立ち上げり、映像が投影されたスクリーンの横に立った。


「そうだね......。ま、少なくともこの緑のヤツはスライムだろうね」

「ス、スライムですか? あの?」

「ああ。認めたくないけど、あのゲームなどで有名なスライムだろうね」

「まさか」「バカな」


 会議室中がざわついた。


「じゃー。違うって言うなら、他の何かに見えるかい?」

「......」


 会場は、静まり返った。


「だよね。対策の為には、現状を受け入れることから始めないとね......」

「キタダ博士。と、いう事は、あの渦巻きは、異次元ゲート? と考えたら良いですか?」

「そうだよね。考えたくないけど、何者かがあのゲートを作り出し、巨大スライムを転送してきたって感じかな」

「な! それは何者ですか?」

「分かってたら、こんな事態にはなってないよ」

「......。そうですね。では、どうしたら良いでしょうか......」

「ほっておく訳にはいかないよね。出来ることから、始めようか」


 この会議の後、政府は巨大スライム対して考えうる攻撃を試していくことになる。

 

 急遽、組織された対異世界生物組織『ローデングロー』。その初代元帥にキタダ博士が選ばれた。


 博士の指揮の元、すぐさま戦車による砲撃、戦闘機によるミサイル攻撃、長距離ミサイルによる攻撃を行ったが無傷。


 次いで、電磁波で焼き切ろう試みるも無傷。

 考えられる対策、そのすべてが失敗に終わった。


――――


「ねー! 昨日のニュース見た?」

「え? 昨日? 何かあったの?」

「うそ! アラタは、それすら知らないの?」


 赤髪のショートカットの少女は、横に並んで登校する青い髪の少年に向かって、バカにした視線を送った。


「アレを知らないなんて、どうにかしているわ」

「別にいいだろ? 昨日も忙しかったんだよ!」

「へー。何に忙しかったんだか!」


 赤髪の少女は少年に向かって舌を見せると、駆け出して行った。


――――

 

 巨大スライムの襲来から、一週間が経った。


「キタダ博士。考えうる全ての攻撃方法は試しました。しかし、依然としてヤツに有効なダメージを与える事が出来てません! 博士! 何か打開策は無いんですか?!」

「そうだね......。調べているんだけど、結構きついよね」

「博士! もうヤツは東京の5分の1を食いましたよ!」

「仕方ないだろ? あの巨大なゲートを中心に半径1キロは電気が全く使えないんだ。それに質量兵器は、撃ち込んでも吸収されるだけ」

「では、このまま日本中が消化されるまで待てと言うんですか?!」

「いや、そうは言ってないだろ? この1週間、寝ずに研究したお陰で、打開策を一つ見つけ出したところなんだ」

「おおー!! 流石、博士! その策は何ですか?」

「ふふふ。それはこれだ!」


 博士はテーブルの上に、長方形の箱のようなものを置いた。


「こ、これですか?」

「ああ。これは思いの力を物理エネルギーに変える物体だ! さっき出来上がったばかりなんだ」


 博士はスクリーン上に、この物体の解説図をアップした。


「博士。どういった物なんですか?」

「あー。簡単に言うと、人の思いを具現化して戦う物だ」

「思い? をですか?」

「ああ。そうだ! 皆を助けたい! や、守りたい! と、言う気持ちをエネルギーに変換して戦う」

「そうすれば、電気が使えない状況でも戦える......。と」

「そういう事だ」

「でも、この箱だけで、どうやって戦うんですか?」


 博士は金髪をかき上げ、高々と笑った。


「いいか?! 見て驚け! これだ!」


 スクリーンの映像が変わった。


「これは、ロボット? ですか?」

「ああ。人型兵器。バズドライバー。僕が趣味で作っていた巨大ロボだ」

(この人、趣味で何作ってんの?)


 誰もがそう思った。

 

 スクリーンには、人型のロボットが映し出されていた。人がそのまま大きくなったようなそのロボットは、純白のボディを持っていた。


「博士。コイツに先程の箱を取り付けて戦うんですか?」

「ああ。おしいね。じゃー。ちゃんと説明しよう! いいか? このバズドライバーは、見ての通り、何も武装をつけていない。つまり、このバズドライバーは素体なんだ」

「素体ですか……?」

「ああ。このバズドライバーは、まだ完成じゃないんだ」

「と、言いますと?」

「まー。順を追って説明するよ。まず、このバズドライバーは、遠隔で動かす物なんだ。ここにコクピットがある」


 キタダ博士は、会議室の扉を開けた。

 そこは、沢山のモニターが並んだ管制室のような場所があった。その中央に、黒いドーム型のゲームの媒体のような置物がある。


「アレが、バズドライバーのコクピットになる。ここから遠隔操作でバズドライバーを操縦し、あの巨大スライムと戦って貰う」

「ここからですか?」

「ああ。相手は何も通用しなかったスライムだ。失敗してパイロットを死なす訳にはいかないからね」

「あのバズドライバーで殴るんですか?」

「いや、ここからは実際に見た方が分かりやすいね。誰か1人、パイロットになりそうなヤツを連れてきてくれないか?」

「分かりました! では、早速志願を募ってきます!」


 そう言い残し、男は部屋から飛び出した。


――――


「博士! 我が部隊から強い思いを持った兵士を募りました!」


 先程の管制室のような場所に、1人の兵士がやってきた。


「君が、志願兵かな?」

「はっ! 斉藤准尉です! この国を守りたい気持ちは誰にも負けません!」

「なるほど、では、その思いで、この国守ってくれ!」


 キタダ博士は、拳を作ると、斉藤准尉の胸に当てた。


「はっ!」

「では、早速、この箱。『バズボックス』を持って、このコクピットの中に入ってくれ」

「ドーム状のコレがコクピットですか?」

「ああ」


 斉藤准尉は、恐る恐るその中に入った。中には操縦席のような物は何もなく四角い筒が一本立っているだけだった。

 

 コクピット内にキタダ博士の声が響く。


「いいか? 斉藤准尉。その筒の上に『バズボックス』を置いてくれ。そして、このコクピットの内部に欲しい操縦席を想像するんだ」

「こうですか?」

 

 斉藤准尉は恐る恐る『バズボックス』を筒の上に置き、想像力を働かせる。

 すると、ドーム内に斉藤准尉のイメージが具現化され、形を変える。


 瞬く間に、内部は航空機のコクピットと同様の物に変わった。


「凄い!!」


 斉藤准尉は驚きの声をあげた。


(なるほど......。航空機のコクピットか......。悪くないが面白みに欠けるな......)

 

 キタダ博士は、アゴに手を当て、思考に入る。


「博士! 次はどうしたらいいですか?」

「......。あ、すまない。では、次はその操縦席に座り、バズドライバーに必要な武装をイメージしてくれ」


 格納庫らしき場所に佇むバズドライバーの姿がモニターに映し出された。


「やはり、戦闘ですから、銃ですかね?」

「......。君の好きなようにやってみてくれ」

「分かりました! イメージします!」


 斉藤准尉は『バズボックス』に手をかざし、イメージを送る。


 モニター越しに見えるバズドライバーは発光し、形状が変わった。


 頭部にヘルメット。右腕にライフルが装備された。歩兵の装備をまとったバズドライバーが完成した。


「「「おーーー!!!」」」


 管制室が歓声に沸く。キタダ博士だけが厳しい目線でモニターを見ていた。


「博士! これなら行けます!」

「斉藤准尉! これはバズドライバーがあの巨大スライムに通ずるかのテストだと思ってくれ! 機体を失う訳にはいかない」

「分かりました!」

「では、早速、巨大スライムに攻撃を仕掛けてくれ! 頼んだぞ」

「は! バズドライバー! 行きます!!」


『グイーン! ガ! ガ!』


 格納庫からバズドライバーが移動する。

 カタパルトに乗せられた25メートルの巨人は一気に射出され、空へと消えた。


 コクピット内は、全周囲モニターに変化し、その視界をバズドライバーの物に変えた。


 目標の巨大スライムまで、あと1キロに迫る。


―――


 ゲートから発生した巨大スライムは、周囲の建物を自身に取り込みつつ、その身体を徐々に大きくしていく。現在、およそ60メートル。時速5キロの速さでゆっくりと移動しつつ、辺りを焦土に変えていた。


 巨大スライムが新しいビルを飲み込もうとしたその時、上空からバズドライバーが舞い降りた。


「博士! 目標物を確認。迎撃します」

「斉藤准尉。よろしく頼む!」


 バズドライバーは右手に装備したライフルの銃口をスライムに向けた。巨大スライムはバズドライバーを敵として認識していないようで、その行動を無視したまま新しいビルを取り込みだした。


 ビルの角から溶け出していく様子が、はっきりと分かる。


「くそ! 舐めやがって! 射撃、行きます!」


 斉藤准尉はバズドライバーを動かし、ライフルの引き金を引いた。

 

『ダダダダダ!!!!』


 数発の弾丸が巨大スライムにめり込む。着弾地点から飛沫が舞った。


「やった! 効いてるぞ!!」


 管制室から歓声が上がる。


(ダメだ。あの程度では致命傷にならない......)


 キタダ博士は、ドカッと椅子に座り、頭を抱えた。


「博士! もっと至近距離からならやれそうです!」


 斉藤准尉は、高揚した声でそう言った。


「やめろ! もうテストは充分だ!」

「いえ、ここで仕留めるべきです! 行きます!」

「こら! やめるんだ!」


 バズドライバーは、ライフルを抱えたまま、前進する。巨大スライムはビルの取り込みを停止し、その動きを静観している。


「この距離なら!!」


 バズドライバーは巨大スライムの目前までたどり着くと、引き金に力を込めた。


『バシューーーン!!!』


 スライムは一本の触手を100メートルほど伸ばすと、それをムチのように使い振り回した。


『ブツン!!』


 斉藤准尉の乗り込んだコクピットのモニターが真っ暗になった。


「え? これは?」

「......。やられたんだよ。一撃だ」

「え? そんな」


 管制室がざわつく。


「キタダ博士!! 失敗ですか?!」

「ええーい! うろたえるな! バズドライバーが通用することは分かった!」

「まったく歯が立たなかったじゃないですか!!」


 管制室にいる一人の男が声を荒げた。


「いや、バズドライバーは、あの巨大スライムに初めてダメージを与えた。それは事実だ」

「......。しかし、あの程度のダメージですと......」


 管制室は鎮まりかえった。


「あのー」


 眼鏡をかけたボサボサ頭の男が、ぽそぽそと話し始めた。


「なんだ? 大友少尉、言ってみろ!」

「あのー。バズドライバーの思いの強さって、守ろうという気持ちじゃないとダメなんですか?」

「いや、別にそれは何でもいい。思いの強さが強ければ、それだけバズドライバーは強くなるはずだ」

「でしたら、あのー。例えばですけど......。いや、流石に飛躍し過ぎか......」


 大友少尉は、恥ずかしそうにモジモジしている。


「なんだ? 言ってみろ! もうロクな案もないんだ」

「では、間違っているかもしれないんですが......。思いって、『思い込み』でも同じですか?」

「『思い込み』だと? どういうことだ?」


 キタダ博士は大友少尉に詰め寄った。


「いや、あのー。いわゆる『中二病』とかって、どうなんですかね?」


 管制官に不思議な間が訪れる。


「何を言ってるんだ! 君は! バカなことを申すな!」


 白い髭のえらそうな人がそう言った。


「いや、ちょっと待てよ......」


 キタダ博士は、口に手を当てながらその場をクルクルと回った。


「大友少尉!! それだ!! 全国の『中二病』の猛者を集めてくれ!」

「あ、はい! でもどうやって?」

「それは君に任せた!! 私は新しいバズドライバーを制作しなければならん! 頼んだぞ!」

「えー? あ、はい!」


 こうして大友少尉は、全国から『中二病』の猛者を探し出すこととなった。


―――


 早速、大友少尉は全国の中学校に向けて、ある指令を送った。

 それは中学2年生に向けた。簡単なアンケートを実施する事だった。

 

 アンケートの内容はこうだ。


1、あなたは救世主ですか?

2、特殊な能力がまだ開花せずに眠っていますか? 

3、あなたの秘められた能力は何ですか?

4、時は満ちた?

 

 このふざけたような内容が全国の中学に配布された。

 無視する者、真面目に提出する者、そして、これを『待っていた』と言わんばかりの猛者たちがいた。


―――


 ここはアサタカ中学校。

 丘の上にあるこの中学に通うアラタもその猛者の1人だった。


「ねー。アラタ。聞いてる? あのアンケート絶対怪しいわよ! 提出しちゃ駄目よ!」


 赤髪のショートカットの少女は、青い髪の少年にそう言った。


「いや、ヒカリクルーゼ」

「私の名前はヒカリ! そんな恥ずかしい名前じゃないわ!」

「アレは俺の為に作られたメッセージだ! ついにその時が来たようだ」

「え? まさか提出するの?」

「いや、もう提出した!」


 ヒカリは絶句した。鼻歌を歌いながら下校するアラタの目には決意が宿っていた。


―――


「どうだ? 大友少尉。『中二病の猛者』は順調に集まっているか?」

「はい。想像より凄いです!」

「ほう......。どのような猛者がいるんだ?」

「この資料を見て貰えますか? さっき確認したんですが、アンケートの提出期限を待たないで、即答した者が約500名です」


 キタダ博士は、その資料に目を通した。


(質問3、あなたの秘められた能力は何ですか? ほう。いい質問だな。なになに......。魔法使い。変身仮面、忍者、ネコ? フハハ。素晴らしいな)


「大友少尉! このアンケートは素晴らしいな!」

「ありがとうございます!」

「この資料を見る限り、巨大スライム討伐に適していそうなのは......」

「はい。おそらく、この勇者だと自負する3名かと」

「ほう。なるほど。よし! すぐに面接の用意だ!!」

「はっ!」


 大友少尉は、駆け足で管制室を退室した。

 キタダ博士は、モニターに映る巨大スライムを眺めていた。


―――


「諸君。今日はよく来てくれた! 察しの良い君たちなら分かると思うが......」

「ああ。ついにこの時が来たんだな!」

「私の精霊がここに来なさいって言ってたから」

「俺の右手が、うずくぜ!!」


 管制室に呼ばれた中学二年生の3名は、思い思いに勝手に話し出した。

 その中には、青い髪の少年アラタの姿も見えた。


(何? この子たち! いいんじゃない!!)


 キタダ博士は期待に胸が躍る。


「いいか? 今から諸君には、あの巨大スライムと戦ってもらう!」

「え? あのニュースになっている奴ですか?」


 長い髪の少女がそう尋ねた。


「そうだ! しかし、心配はいらない。直接戦う訳じゃない。ここにあるコクピットから、遠隔操作で、このバズドライバーを操縦して戦って貰う!」


 キタダ博士は、スクリーンにバズドライバーの姿を投影した。


「ううぉーーー!!! きたー! 俺のバズドライバー!!」

(何? この子?! 適応が速い!)


 バズドライバーを見つめるアラタの目はキラキラと輝いていた。


「問題は、このバズドライバーは、残念ながら一体しかない。諸君らから選抜した1名をバズドライバーのパイロットに任命したいと思っている」

「「「ゴクリ」」」


 『中二病の猛者』3名は生唾を飲んだ。


「では、選抜試験として、一つ質問をする。今から渡すこれが何か答えてくれ! いいか?」

「「「はい!」」」


 キタダ博士は、『バズBOX』を1人づつに手渡した。


「これは、何かを入れる物ですか?」

(この長い髪の少女はダメね......。普通過ぎだわ)


「これは、握力を鍛えるもんだな!」

(この子は、まーまーかしら?)


 最後にアラタの順番が回ってきた。アラタはその『バズボックス』を握ると、こう言った。


「くそ!! なんで反応しないんだ!! 聖剣エドルス!!」

(ふふふ。何この子? 最高じゃない!!)


 キタダ博士は大友少尉に目線を送った。


「アラタ少年。君が勇者のようだ!」

「な! でも、聖剣が反応してないのに?」


 劇の主人公になったように大袈裟に振る舞うアラタ少年は、大友少尉にそう訴えかけた。

 大友少尉も負けじと演技する。


「大丈夫だ! アラタ少年! この聖剣はあそこの中で使う物なんだ!」

「あ、あそこ?」


 大友少尉が指をさした先には、黒いドーム状の媒体があった。


「そうか。この中で、勇者に任命されるのか?」


 そう言うとアラタ少年は、『バズボックス』を握り締めながら、ドームの中に入った。


「聞こえるか? アラタ少年! 君は勇者の可能性がある。そのボックスを中央にある筒にかざすのだ!!」


 ドーム状の媒体の中に、ノリノリのキタダ博士の声が反響する。大きく頷いたアラタはバズボックスを筒にかざした。


「俺の力よ!! 目覚めて、ざわめけ!!」

(((ざわめけ?)))


 管制室に待機していた者達がざわつく。媒体の内部がアラタ少年のイメージに共鳴し激しく動く


「アラタ少年! そこはコクピットになる! 君の思い描く操縦席イメージしろ!!」

「うぉーーーーー!! 俺の魂よ! 具現化しろ!!」


 媒体の内部が更に激しく動く。媒体の内壁からアラタ少年の手足に向かってヒモが伸び、そして、絡みつく。


「凄いぞ! 見たか? 大友少尉! 彼の『思い込み』の力、凄まじい!!」

「あ! 博士。見てください! コクピット内が!!」


 アラタ少年に巻き付いたヒモは動きを止めた。

 どうやら、アラタ少年の動きをトレースするシステムが組み込まれた操縦席になったようだ。


 アラタ少年の目にはゴーグルが装着され、身体にはフィットするバトルスーツが出来上がった。

 ゴーグル内部の景色はバズドライバーの視界と同期したようだ。

 

「うわ! すげ! 俺がデカくなったみたいだ!」

「アラタ少年! 君は勇者だったようだ!」

「やっぱり、俺は勇者だったんだ!!」


 アラタ少年は歓喜の声をあげた。

 

「勇者アラタ。操縦席の次は武装だ! バズドライバーに必要な武装を思い描いてくれ!」

「俺に任せろ! 覚醒! バズドライバー!!」


 格納庫に収まるバズドライバーが発光し形状が変化する。

 右手には長い剣。左手には盾。そして全身を覆うナイトのような鎧。


 『勇者バズドライバー』が完成した。


「「「おーー!!」」」


 管制室は歓声に包まれる。


「博士! これで、巨大スライムを撃退できれば!」

「ああ。そうだな。アラタ少年! 聞こえるか? そのまま巨大スライムの撃破に向かえるか?」

「はい! この聖剣エドルスのサビにしてくれる!」

(完全に勇者になりきっているわね)


 コクピット内のアラタは剣を構える格好をした。アラタに同期しているバズドライバーも同じように剣を構えた。


「よし! では、勇者アラタ! この世界を頼んだぞ!」

「大船に乗ったつもりでいてくれ! では、バズドライバー行く!」


 カタパルトから、全長20メートルの人型兵器『勇者バズドライバー』が射出された。

 

―――


 東京上空のゲートから出現した巨大スライムの侵食によって、東京はその5分の2を焦土と化していた。建物を消化、吸収し、成長するスライムは遂に体長100メートルを超えた。


 巨大スライムは次なる獲物、東京スカイツリーを飲み込もうと、ズリズリと移動している。


 その目前に『勇者バズドライバー』が舞い降りた。


「バズドライバー参上!! おい! スライム! この勇者の経験値になるがいい! くらえ! 一文字切り!!」


 バズドライバーは腰を落とすと、聖剣を横に構え、一気に振り抜いた。

 聖剣から凄まじいエネルギーを秘めた斬撃が横一文字に飛ぶ。


『ブシューーーー!!』


 巨大スライムの上半分が吹き飛んだ。奇声を上げるスライム。

 切られた断面がグツグツ沸騰しているように見えた。


 スライムは気張る様な動作を見せる。

 すると、切られた断面から無数の触手が生え、様々な角度から『バズドライバー』に襲い掛かる。


「勇者アラタ! 危ない!!」


 キタダ博士の声がコクピット内に響く。


「くそ! 数が多い!」


 バズドライバーは後退しつつ、聖剣を振り迫りくる触手を切る。


「勇者アラタ! 今すぐ離脱してくれ! 十分な成果はあげた!」

「ダメだ! ここに救いを求める人がいる! 俺は逃げな――――い!!!!」

(この地域の人は皆避難してて無人なんだけど)


 と、大友少尉は思ったが、そこは黙る。大人だから。


「博士! 俺はあのスライムを一撃で撃破する! 俺の力を見ろ!!」


 そのアラタの気合いにつられて、バズドライバーは黄金に発光しだした。


「聖剣エドルス!! 真の力を解放しろ!!」


 バズドライバーの聖剣が形状を変える。中央から2つに割れ、双剣となった。

 バズドライバーは、その二刀に分かれた聖剣を目前に構え、交差させる。


「二刀流! 閃光クロス斬り!!!」


 二刀の斬撃がバズドライバーから飛び出した。斬撃は巨大スライムに直撃すると、爆音と共にスライムを蒸発させた。


「勇者アラタ! 凄いぞ!!!!」

「「「「「やったぞ!!」」」」」


 管制室から凄まじい歓声が沸く。


「勇者アラタ!! よくやってくれた!!」

「俺、世界救いましたよね? ちゃんと勇者でした?」

「ああ。よくやった!! 君は紛れもなく勇者だ!」


 スライムの蒸発と同時に、東京上空に出現していたゲートは消えていった。


 世界に平和な時間が訪れた。

 かに見えたが、本当の脅威は今からやってくることとなる。


―――


 2話以降の簡単なシナリオイメージ。


②1話の戦闘に満足してしまったアラタ少年は、バズドライバーが使えなくなってしまう。それでも飛来する異世界生物。大友少尉は新たな『中二病』の猛者を探すこととなる。見つけだした魔法系の『中二病の猛者』が新たな戦いに挑む。例、賢者。魔法少女など。


③2話の敵を撃退するも敵は次々とやってくる。キタダ博士は大急ぎで新たなバズドライバーを製作する。それに伴って大友少尉は更に『中二病』の猛者を探しだす。バズドライバーはパーティーを組み敵と戦う。ここで、バズドライバーの素体の製造には希少な金属を使うことを知る。バズドライバーは今の機体を合わせて後9体しか作れない。


④3話のメンバーが活躍するが、半年後、彼らは中学3年生になる。受験という現実の前に、『中二病の猛者』の『思いのチカラ』が抜けていく。そこに新たな敵が! 大友少尉は『新中二病』を探す。忍者など個性的な新メンバーの活躍で、敵を撃退する。


⑤ゲートからの怒涛の攻撃が始まる。危機的な状況の中、ついに敵の攻撃が本部にまで及ぶ。死にたくないという『思いのチカラ』でバズドライバーが防御フィールドを張り、本部は助かる。


⑥その戦いを見た『中二病の猛者』の親が子供を戦わすことに反対。『中二病』の猛者のチカラに頼れなくなってしまう。大友少尉の代案で、スポーツ選手、その道の達人をバズドライバーのパイロットに採用(凄いが発想は飛躍的にはならない)


⑦厳しい戦いが続く中、民意が変わる。『中二病』の猛者復活。


⑧敵も、異世界生物だけではなくなる。色んな敵。


⑨1話のアラタ少年が世界の危機に再び立ち上がる。幼馴染の言葉(敵を倒したら付き合ってあげる)で復活。


⑩敵の親玉が現れる。最後のバズドライバーが破壊される。


⑪大友少尉は、キタダ博士がまだバズドライバーを隠し持っていることに気付く。大人の『中二病』キタダ博士がバズドライバーに乗る。コクピットが素体についているプロトタイプのバズドライバー。


⑫ラスボスとの一騎打ち。


⑬戦いの後。バズドライバーの素体は全て壊れる。


さらに物語は続く。


【バズドライバー候補例】


『中二病』の猛者。

・剣士

・魔法使い

・魔法少女

・魔眼。右手うずく。右手が大きく

・ネクロマンサー

・筋肉

・狙撃

・ライダー

・猫

・忍者


『スポーツ』の猛者。

・ハンマー投げ。ハンマートゲトゲになる。

・水泳

・野球


『達人』

・居合切り

・暗殺鍼灸

・パン屋

・コーヒー

・マジシャン


「キタダ博士」本人。科学者


・スライム

・ワイバーン

・ドラゴン

・ミノタウロス

・ユニコーン

・メデューサ  など。


ご検討宜しくお願い致します。

ご覧いただきありがとうございます!


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