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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

この神社。なんかヘン

作者: ヒロモト

私の顔も名前も忘れてしまった妻を私は愛している。

愛しているからといって辛くないわけではない。

私の献身的な介護も虚しく妻の痴呆は悪化する一方だった。

頼れるのはもう神だけ。

週に2度。介護施設に妻を預けた日はいつも神社巡りをして病気平癒のお守りを買い占めた。

自分で言うのもなんだが私は病院からも近所からも評判の良い『妻想いの優しい夫』だった。


「うわっ」


山の上にある神社の前に行列が出来ていた。

こんなところに神社があるなんて知らなかったが、これだけ人が多いならご利益も期待できそうだ。

今日はここでお守りを買おう。


「上司が不幸になりますように!」


「元カレの子供に障害がありますように!」


「夫退散!夫退散!」


「芸能人全員事故れ!」


……参拝者の願っていることが随分と物騒だ。

絵馬も飾ってあったが人の不幸を願うものばかり……何だこの神社は。

とうとう私の番が来た。

賽銭箱に貼ってある張り紙にはこう書いてあった。


『無理に人の幸せを願うのって疲れませんか?たまには人の不幸を祈りましょう。人の不幸は蜜の味。人の不幸があなたの幸せならあなたはそれを願ってよいのです』


私はそれを読んで泣いてしまった。

泣きながら一万円札を財布から取り出して賽銭箱に入れた。

こうやって自由にできる日ぐらい。いい夫を演じるのをやめて本音で生きよう。

私の本当の願いは妻の病気平癒ではない。


「妻が早く死にますように!」


グッと心が軽くなり、明日からも介護が頑張れる気がした。

神社は次の週に警察の手入れが入り、妻は2年生きた。

どんな神様より私を救ってくれたあの神社に、出来れば宮司にいつか会ってみたい。




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