5.
でかいカジノから小規模なカジノまで。
州周辺の話である。
ただソフトリーアズというのは一応。
その仮想通貨を使えるっていうことで。
トリー・エーカから聞いている。
黒田縫李の今現在で。
ただ、トリー自身とか。
その他カジノへ行った連中とかが、実際に使ったかどうか。
という話までは、したことがなく。
とりあえず仮想通貨はオーケー。
縫李はウォレットを確かめている。
稼いだ額。
それから、それを地道に増やすため。
資金の一部をいくら回すか。
どの配分で。
どの配置で。
地道に増やすために、置いて寝かせておく分など。
ただ、縫李自身は投資に関して。
とても詳しいか。
というわけではない。
その他、仮想通貨メンバーがやっているのを見よう見真似だ。
グラフの見方やチャートだの。
いろいろやってみている。
どちらにせよマイニングは。
電気代が掛かるのである。
ウォレットを確かめる辺りの、その周辺。
熱いか。
それとも温いか。
九官鳥のスーラが通り過ぎる。
スーラにとって。
縫李のデバイスその他周辺は、散歩場所。
ちょこまか動くその脚。
よく喋る。
声真似も上手く、留守にしている間が心配である。
縫李は出来るだけ籠から、スーラを出してやることにしている。
「スーラ」という名前。
それは、トルマルの街に因んでいる。
トルマルの街全体に、点描による壁画が結構多いためだ。
大して英語が上手いわけではない縫李。
州単位で日本語教育なんかをやっている。
その点は大きいのだろうか。
割と日本語率がある。
トルマル周辺か。
割と縫李の周りがそうなのか。
ウォレットや、そのほか仮想通貨に関するソフトなりサイトなり。
そちらは英語でも、常用使う会話として。
日本語も許されるところがある。
縫李の家へ客人が来るまで。
一方的に来るのであろう。
ただ単に滞在しに来るというわけではなさそうで。
最近亡くなった、ユーオロテに関して。
ということだった。
亡くなったと聞いて、縫李は最初。
銃かなんかだと思った。
撃たれたとかどうとか。
だが実際には違った。
何処にも撃たれた形跡はなかった。
という小さい報道。
なにしろ。
そのソフトリーアズの舞台上で亡くなったとか。
やっぱり変わったカジノなのだろう。
と縫李は思う。
縫李自身、ソフトリーアズへは行ったことがない。
ただ黒田零乃も同様に。
その舞台で怪我をしたという事実。
それは変わらない。
ソフトリーアズは変わったカジノだ。
だから。
何かスレスレのことでもやったんじゃないだろうか。
だから亡くなった。
その可能性はないか?
縫李は画面を確認し続け。
最近。
というか正確に考えれば、数年単位の話になる。
詐欺だの、なんだのいろいろだ。
いろいろ流行るのがマイニングという土壌のようで。
一応だがブロックチェーンレベルでの改ざんは難しいという。
ただ。
ウォレット単位で抜かれたり。
「アクセス出来ない!」という話もあるという。
今のところ前月より稼ぎは多い方である。
十九の縫李。
それにプラスして。
契約でホテルの寿司レストランの厨房をやっている。
スレスレといえば、そう。
ソフトリーアズの近くに。
同系列の寿司レストランがある。
そしてスレスレのもう一つ。
ルロイ・ウィンターが小屋を移動した場所だ。
データセンター近くなのである。
「データセンター」という文言。
それにマイニングと引っ掛ければ。
当然いい印象はない。
ナンス値が見つかりやすい。
通常やっているマイニングは、事実上の計算である。
計算上でナンス値を、いかに見つけ出すか。
それに掛かって来る。
計算というのは人間がやるわけではない。
ノードなど機材、機械、計算処理能力のあるものにやらせる。
それがマイニングだ。
だから、ナンス値が見つからない。
とか半減期その他。
あるいはマイニング事業に参入する面々が増えれば増えるだけ。
ナンス値の方は見つかりにくくなる。
ナンス値が見つかりやすいということ。
それはマイニングに、良い影響がものすごくある一方で。
誰か身元不明の敵国数名が、データセンター近くでマイニングしたりすると。
それは「脅威」となって大騒ぎになる。
小屋を移したことは果たして脅威になるか。
と縫李は思う。
縫李そのほかルロイなど四名。
今の場合は個人であり、事業ではない。
騒ぎになるのは、事業単位でやった場合だ。
誰か身元不明という場合。
それは事業かどうか。さておき。
何か法に触れたとか。
国単位でまずいんじゃないか。とか。
それに比べたら小規模も小規模で、四人のチーム。
今のところ、お咎めは受けてはいない。
しばらく。
チャートの情報や動向を見て、何通か連絡を取る。
捌いた蟹の様子を見。
スーラの飯を足し。
庭へ出る。
芝の先端だけ少し刈り揃えた。
午後が今なら。
芝生に水撒きでもしただろう。
青い鱗のようなホース。
たまに巻き直すのに苦労する。
ただ以前よりも、少し長いのを買った。
ので水やりの範囲。
そのホースを持ちつつ、動ける場所も多くなったし。
少し楽にはなった。
蟹の他には何を作るか。
自分用に。
空が高くて雲は遠くて。
白い。
それは夜でも。
明るいのは比較的そうだ。
雲の形がまだ分かる。
ソフトリーアズの変わっている点。
スレスレをやっているのでは?
とかは思い浮かびやすいのだが。
「変わっている」という点は、その賭ける対象にある。
大体が規制の掛かる場合がほとんど。
だが。
それが所謂「商品価値のある」状態になってくる。
すると別なのかもしれない。
という見方もある。
アカウント情報なのだ。
更に言えば。
ステータスの高いアカウントと言えるだろう。
eスポーツなど仮想の空間における、アカウントのステータスである。
どのくらいの実績を上げていて。
スコアやレベルや戦いやすさ。
動きの良さ。
その他。
トップレベルのゲーマーたち。
その他アカウント。
それに賭けを加えて取引を行う。
ただそれは、ソフトリーアズ内一部のテーブルのみである。
テーブルというか、実際には戦うのだからテーブルというより。
ゲームだ。
一部だからこそ。
それが「ソフトリーアズ」というカジノの目玉であったりもする。
アカウントとか個人情報というのは。
それはマイニングでもそう。
やったら情報が盗られて大変だとか。
いや稼げれば強いんだとか。
両極端に偏りがちというのは。
ネットワークの世界ではよく見られる。
事実。気を付けておかないといけない。
だから、データセンター近くでの身元不明が過剰に警戒される。
のかもしれない。
来客と言うが。
実際には自分というより零乃への来客だよなあ。
縫李は思う。
芝とホース。




