くっ……生えろ!
この世には、努力・祈りが通じない世界がある。
人間。それを上に乗せ、時に違いを見せる。
「使った育毛剤は色々あれど」
長く伸ばすもの、綺麗に整えるもの、テキトーに揃えれるもの、匂いをつけるもの、
「やはり、この育毛剤が良かったのだ」
ほぼ何もない者。
幼子には茶化される事ではあるが、頭の形によっては似合う者もいるのだ。真っ新もまたオシャレ。……顔で判断?そりゃあそう。何をおっしゃる。
「増えたんですか?」
「伸びたんだ馬鹿野郎!お前だって40になりゃあ、生え際を気にするんだよ!若いからって調子に乗ってると、女と共に髪の毛は去るんだよ!」
髪が生えたと言わず、伸びたと表現して答える辺り、その効果は人には判断がつかないもの。
いくら使ったとはいえ、
「まだ生えないとは認めない!俺が認めない限り、髪は生えるんだ!」
思い切って坊主頭にした方が髪は刺激されて均等に伸びるとか、昔の床屋さんが教えてくれたな。そんなことを思い返しながら、
「髪を気にした時には手遅れなんだよ!シャンプーの変更、髪の洗い方、それらの自分のできる工夫から、専門家への相談……」
人は雄弁に真に実行した努力を語り、まだ希望ある若い者の教訓にして欲しいと願う。
生やすために色んな努力をしたよ、色んな相談をしてもらったよ、稼いだお金を惜しげもなく使ったよ。諦められない40代。そこのお前は、20代を越えているかい?まだ先のことと思うだろうけど、すでに半分を切っていると思いたまえ。
花火が最も綺麗に花開いた瞬間なんだよ、20代。あとは夜空に消えていき、見えなくなって、在った事も覚えてもらえない。
「以上のように、俺は決して諦めない!」
髪への努力。その手段を厭わないと宣言する。
「だから、ストレスを感じない生活も心掛ける!髪を生やすためのっ」
「髪の事でストレス感じてるんでは?」
「それ言うな!!身体が感じて負けても、心は諦めずに折れねぇよ!」
「なんすかその、R-18のような例え。女騎士ですか?性的な表現は良くないですよ」
「そんな風に受け取んじゃねぇよ!!俺の心構えと、俺の髪はまだまだ元気!これから元気になるの!」
「まぁ、……オーク役が似合うっすよ」
「オークに髪が少ねぇと言いたいのか!?俺は狼!全身からぶわっと髪がモジャモジャ生えてくるから!」