4. 仕事や子育ての経験が活かされるのは嬉しい
こんばんは。
本日もお読み頂き、ありがとうございます。
うちのかるたは仮面ライダーだったなと思い出しました。
少しでも面白いと思って頂けたら嬉しいです。
宜しくお願いします。
「年取った、とは親世代以上ということか?その『かるた』とはどんなものなんだ?」
アレックスは興味津々に尋ねる。彬は子供達に字を覚えさせる時に何度もやった光景を思い出しながら話す。
「絵札と文字札が対であって、読み手が文字札を読んで、参加者がその絵札を探してとるゲームなの。だから読む人は文字が多少読める人がいいね。絵札にはその物の名前の一番最初の文字だけが書いてあるの。だから文字を覚えたい子供は絵がヒントになって一文字ずつ、覚えられるの。そしてこれができるようになったら、読み手に回って文章を読めるようにするの。」
アレックスは大きく「ほ」を一つ紙に書いて、本の上に置き、もう一枚の紙に「ほん」と書いた。それを私に見せながらこういうことか?と確認した。
「そうそう!それとさ、ここの文字はデザインに拘りすぎ。もっとシンプルにすれば良いのに。祖国ではもちろん長い時間をかけてだけど、文字が簡略していったよ。それにともない、緩く平民の識字率も上がったよ。」
彬は漢字が仮名文字、ひらがなになったことを思い浮かべながら伝える。
「それに私の子供の頃は字が繋がってたけど、だんだん分かれて今ははっきりした字体で固定されたんだよ。だから恒久的に残す書類じゃなきゃ、簡略化した文字で書くってこともありじゃない?」
彬は紙にひらがなの「そ、ゆ」を二種類書いた。
「祖国で文字が変わったことは筆記用具が変化したことも理由だと思うけどね。でも、子供と大人両方が少しでも覚えれば、家族で家の中でも遊びながらできるよ。紙に書いたものを普及させるのが難しいのなら、板に彫るって手もあるし。簡単なものなら、職人じゃなくても作れるんじゃないの?外に出れない時には副業になったりさぁ…。」
「それだ!あきら、ナイスっ!」
アレックスはガシッと、彬の両肩を押さえて、目を大きく見開きキラキラした絵顔で喜んだ。
「あきら、凄い!その案、進めたいんだけど、手伝ってもらえる?!」
「うん、もちろん。あ、それとさ、この邸の人達も巻き込もうよ。」
「邸の人?使用人のこと?」
「そうそう。そもそもこの国の人達が使えないと意味ないし。文字で他人に伝えるってことが、使用人さん達にはあまりないみたいじゃない?全部口伝え。それだとだんだん伝言ゲームのように変わることもあるし、忘れたらまた聞かなきゃいけないけど、この人には聞きにくいなってタイプいるでしょう?…もし識字率が上がれば無用な見下しや卑下もなくなるんじゃないの?」
彬は邸内をうろうろしていて気づいたことがあった。
学力差、文字が読めるかどうかで仕事の割り振りが違うのだ。それもあまり関係ない内容の仕事なのに。読めないだけで、外回りやキツイ仕事が割当てられてるようだ。そしてめったにやらない内容なのに、責められている使用人もいる。もし皆が字が読めて簡単に書けるなら、仕事ももっとうまくいくだろう。
見ていると文字が読めないだけで、頭の良いと思われる人もいて仕事も早いようだ。埋もれた人材だ。
一方で、文字が読めるメンバーの方には質が悪いやつがいる。彬の悪口を言うメンバーもこちらにいる。出自を鼻にかけてるというのか。
もし…土台が同じなら絶対に活躍するだろうなと思える使用人が何人かいた。そういう人に限って親切だなと感じたからだ。だからこれはいいきっかけかもしれないと思った。
自分も決して覚えが良い方ではなく、泥臭く努力していた。そしてそれを助けてくれる人もいたことを彬は思い出していた。
「私も一人で勉強するより効果出ると思う。人選は任せるけど、仲良くできる人でお願いしたいかな!」
少し考えこんだアレックスは顎に手をあて黙ったが、わかったという返事と共に、ちょっと考えてみると言いながら部屋を後にした。
お読みいただき、ありがとうございました。
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