2. 異世界転移はスカウトだった!…聞いてなかったけど
こんばんは。
第二話、読みに来ていただけて嬉しいです。
転移の説明が多いです。だいぶ詳しく書き足しました。
どうぞ宜しくお願いします。
人外の美貌をもつリュートルクはにこにこしながら、話を続ける。
「こちらの世界は魔法が使えます。ちなみに転移出来るのは我が家当主のみ、あ、僕のことです。異世界人の移動には王宮魔導師の力が必要ですが、だいたい半年経てば準備が整うので移動できるんですよー。理屈は良くわからないんですけど、魔法を絶やさない為に定期的に異世界の方の血筋を取り込む必要があるので、僕が対象の方に声をかけてスカウトします!」
…あの、スカウトなんてされてませんが。
「転移後はご自身が相思相愛になった方と結婚して、子孫を残してもらいます。だからちゃーんと、妙齢の方に来て貰ってますが、妙齢の女性が対象なのは世の中を知っていて、分別がついてて、この世界に残ることを決断されても後悔しにくい傾向にあるからです。」
…妙齢とは何歳を指すのか、自分は既にアラフォーも後半である。妙齢とは話を聞く限り彬の感覚では子供を生みやすい世代20代から30代手前であろう。リュートルクの説明は更に続く。
「この国は女性が年上の夫婦が良しとされます!もちろん恋愛なので、年上夫もいますが、精神年齢が男性の方が幼いので、女性に支えてもらう為に年上がよいという風潮です。ですから、彬さん位の方がこちらでは非常に高嶺の花なんです。ね、ぴったりでしょう?!」
リュートルクは自信満々のにっこり笑顔で言い切るが、彬はその笑顔に負けそうな気持ちをぐっと堪え、質問するために切り出した。
「あの、こちらの妙齢とは何歳ぐらいを指すのですか?」
「姉や彬さん位の方ですよ。」
リュートルクは不思議そうに小首を傾げ、その可愛らしさで彬を悶絶させた。魔性の笑顔に負けず、彬は頑張った。
「いや、リーゼロッテさんは多分20代後半でしょう?私は43才です。既婚で子供も二人もいます。」
「「「えっ?!嘘?!」」」
今度は美形三人が驚愕する番だった。
「43歳?!嘘だろ?いくらあの国の人種が若く見えるっていったって?!」
「そうですわ。私と同じ30に見えますわ!」
「あー…私はあちらでも若く見られがちなんです。ははは…。」
彬は確かに童顔で、二十代後半ですら、年齢確認をされ、五歳下の旦那より、上に見られた事もない。
「あ~…、実はこっそりアレクと合うんじゃないかなぁなんて、思ってたんだけど…。」
人外美形王子のリュートルクは、ちらりと黒髪イケメンをみやり、ぼやく。それに対してまるで副音声のように
「「…どのへんが」」
と、彬と黒髪イケメンのアレクの声が重なる。リュートルクはへらりと微笑みながら二人に答える。
「えへ?そういう突っ込みや人への対応の雰囲気が似てるからさ。その上、一人の人を長く想い続けるタイプだから気が合うんじゃないかと思って。」
「で、でもリュートルクさんと私、初対面ですよね?そんな風に思うなんて…どうやって私の事、知ったんですか?」
怪訝そうな彬と対照的に、リュートルクはすこぶる笑顔で答える。
「毎日バスの中にいるあなたを見てたよ。ああいう箱の中って、魔法がかけやすんだよね。範囲が明確で。ふふっ、俺はね、ある程度のこちらに来る耐性がある人が見極められるの。そして、魔法をかけることで、更に条件を絞れるんだよ。その中から様子を見て選んだのが彬さんだよ。」
「…ちなみにその条件っていうのは、なんなんですか?」
「んー?…心身ともに健康でとか色々あるけど、今回は感情豊かで素直な人、恋愛で成長できる人、かな。前回が落ち着いた芯のしっかりした、意思の固い人って条件だったから反対の人を探したんだ~。」
何気に貶されたような気がするのは何故だろう。彬は思わず眉を寄せる。
「…探したはずだったんだけど、あは…予想外に人生の先輩だったな。」
素敵な言い方で誤魔化されたが年取りすぎてるっていうことだなと、彬は解釈した。リュートルクがカラメル色の瞳を揺らし誤魔化すように微笑む…。だが綺麗なストロベリーブロンドの前髪をさらりとかきあげて一息つき、居ずまいを正して彬を見る。
「彬さん、僕はあなたの呟きを聞いて、対象者も異世界転移を望んでいると早合点して、本人に意思を事前確認するべきところを怠りました。大変申し訳ありませんでした。…年齢が想定外で…、流石にこちらでもあなたを伴侶にしたいとの申し出は少ないと思います。それなのにあなたをすぐに帰すことはできない。しかし!数ヶ月後の判定の日にあなたの帰りたい気持ちが強ければ、10分程度の誤差で日本に戻れます。それまではどうかこちらで生活して頂きたい。勝手な言い分で申し訳ありませんが、どうか…ご容赦いただけないでしょうか。」
女性として請われて来た筈が、ここでも不要のようだと感じた。
彬はリュートルクの見立て通り、元々が恋愛体質だ。一途で、好きな人に尽くし、好かれるために努力し、毎日がキラキラするタイプだ。
しかし、結婚して早々に子供ができ、夫婦のスタイルが確立する前に親になった。子供は待ってくれないので育児に取り掛かりっぱなしになり、多くあるだろう夫婦と同様に、只の同居人の関係になった。夜の夫婦生活なんて、10年近くないだろう。数度誘って断られ、心が折れた。それなのに、今回のことは折れたところを念入りに粉砕されるような仕打ちだ。
リーゼロッテも弟の失態に謝罪した。出来る限り、生活しやすく整えると言ってくれた。二人のショボくれた様子に、とりわけ姉のリーゼロッテが謝罪する様子が他人事ではなく…、だんだんかわいそうになり、もやもやする気持ちはあるが謝罪を受け入れることにした。
こうして彬は審判の日まで、慣例通り美麗姉弟の屋敷で暮らすことになった。
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