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実際に起こりそうで、実際に起こらないで欲しい話

作者: しなきしみ

 いつもは17時に仕事が終わって帰路に着く。

 しかし、昨日は残業をすることになって会社を出たのが18時過ぎ。

 18時過ぎは帰宅ラッシュの時間が終わって道路を走る車の数も減少しているだろうと思っていれば、先を3台の車が連なって走っている。

 自らの運転する車のスピードが出ていたため、あっという間に追い付いてしまった。

 先頭を走る車がやけに遅く感じる。

 しかし、車のスピードメーターの示す速度は法定速度を10kmオーバーしている。

 

 外はほんのり薄暗く、大通りを左へ曲がると山道に入る。

 連なって走る車の中から二番目を走っていた黄色い車が山道へ入らすに大通りを直進したため、4台連なって走っていた車のうち自分の車を含めた3台の車が連なって左に曲がり山道に入る。


 仕事が終わって気が抜ける時間帯。一定速度で走る車が連なって山道を走っているため、徐々に眠気に苛まれる。

 前を走る赤色をした車との車間距離が縮まってしまった。前を走る赤色の車が間近に迫る。

 

 カーブに差し掛かって車体が走行車線の右側すれすれによってしまった。

 前を走る車のナンバープレートも、はっきりと見える。

 ナンバーは42-19。

 

 コーヒー味の飴を食べて、眠気を誤魔化そうとしたところで前を走る赤色の車の左側のテールランプが点滅を始める。

 車を少しずつ左へ寄せる赤い車を素早く追い抜いて、疑問を抱きつつバックミラーを確認すると左へ寄せられていた赤い車の車体が少しずつ走行車線に戻る。


 先頭を走る車の後に続いたまま山道を走り続ける。

 10分間山道を走り続けたところで、再び大通りに出る。

 大通りに出てすぐに一つ目の信号で、先頭を走っていた車が右に曲がったため直進する自分の車は一気に加速した。

 道幅の広い道路は見通しがいい。

 赤色だった信号がうまい具合に青信号に変わっていく。

 信号に引っ掛かることなく走り続けることが出きるなんて、今日は運が良いのかもしれない。

 5分間走り続けたところで、信号が赤色に変わったためブレーキをふむ。

 バックミラーを確認すると行き先が同じなのだろうか。赤色の車が止まっている。

 後5分も走れば自宅に着く。

 早く帰って風呂に入りたい。

 飯を食って睡眠を取りたい。


 信号が青に変わると再び一気に加速する。

 遠くに見える信号のうち、一つ目の信号を越えて二つ目の信号を右に曲がる。

 二つ目の信号を曲がると、すぐにスーパーマーケットがある。

 スーパーマーケットを通りすぎて、薬屋を通りすぎたところで気がついた。

 赤色の車が後に続いていた。車間距離をしっかりと保った状態で後に続く。

 

 ふと、もしかしたら敢えてついてきているのではないのかという不安が過る。

 さらに走るスピードを上げると、同じように後に続く赤色の車のスピードも上がる。 

 後3分もすれば自宅に到着する。


 700メートル先を左に曲がる。

 赤色の車が左に曲がることなく真っ直ぐ突き進んでくれることを願っていたけれど、行き先が同じなのかそれとも後をつけてきているのか同じように左に曲がった赤い車が後に続く。

 次の信号を右に曲がると住宅街に入る。

 住宅街を少し進むとやがて自宅が見える。

 

 もしも、自宅前まで赤い車がついてきたらどうしようと不安な気持ちになる。

 敢えて次の信号は右に曲がらずに一旦自宅を通り過ぎる。


 行き先も決まらずに、家のすぐ近くにある薬屋の駐車場に車を進める。

 赤色の車がどうか単に行き先が同じで、このまま真っ直ぐ通りすぎてくれますようにと願いながら、ゆっくりと薬屋の駐車場に入ると背後を走る赤色の車はブレーキを踏むことなく早々に直進する。

 

 単に行き先が同じだったんだと安堵した。

 

 昨晩の出来事を思い起こして再び身震いをする。

 もしも、あのまま赤色の車が薬屋の駐車場に入ってきたら、自分はどうしていただろうか。

 

 朝食を食べ終えて、鞄を手に取り

「いってきます!」

 大きな声で妻に声をかける。

 

「いってらっしゃい」

 風邪を引いたのだろうか。

 妻の声が少し低い気がする。

 普段はひょっこりと柱の影から顔を覗かせながら、いってらっしゃいと明るい口調で声をかけてくれる妻が今日は全く顔を見せない。いってらっしゃいと呟かれた声は随分と淡々とした口調だった。


 玄関先に事前に準備していた鞄を手にとって靴を履く。

 ドアノブを回して扉を開き一歩外に足を踏み出したところで、ふとそれは視界に入り込む。


 いや、まさかなと思う気持ちと、もしかしたらと思う気持ちに苛まれて激しい恐怖心に襲われる。


 家の前に止まる車の色は赤色。

 中は無人のように思える。

 

 昨晩、後方を走っていた赤色の車が思い浮かぶ。

 車種は昨夜、後ろを走っていた車と同じ。

 薬屋の駐車場で確かに走り去る赤色の車を見た。

 だから、昨夜の赤色の車がこんな場所にあるはずがないと思いつつ、ゆっくりと車の前方に回り込んでナンバープレートを確認する。


 車のナンバーは42-19だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] スピード違反のオチかと思えば死神のオチとは。 ナンバープレートの数字で想像してしまったために「呼んで」しまったのですね。ちょっとシャレたホラーでした。
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