幕間、荒居神社の変質者
十一章、福岡、狩人の覚醒
うるう年に生まれた女児は十四歳になったら神様と婚姻を結ぶ。それまでも、その後も、恋愛は一切禁止。家を出る事も許されず一生神社に巫女として仕える。
そんな時代錯誤の馬鹿げた風習が、我が家では未だ現役で施行されている。茜夕凪は日課の境内の掃き掃除をしながら、今日もまた大きな溜め息を吐いた。中学校の部活動は義務だったから許されていたけれど、進学した高校では任意。家業の手伝いとは表向きだが、実際は誰かと恋愛関係になる事を心配しての「学校が終わったらさっさと帰って来なさい」だろう。偶々うるう年に生まれただけで、自分の人生は甘酸っぱい青春の何一つない無味無臭のものとなってしまった。
何が神様だ、御社の中には薄汚い鏡が一つあるだけ。中を覗いた時罰当たりだ、と祖母にこっぴどく叱られたが、それ以外の罰、天罰なんて言われるものは無かった。神様なんてどこにもいない。空っぽの神社を崇めて、守って、居もしない神様なんかと結婚させられて、本当に自分は運が無い。あと一年違うだけで、実家が神社なだけの普通の人生が送れたのに。
日向の掃除を雑に終わらせ御神木の影に逃げ込む。いくら夏用とはいっても真夏に長袖長袴の巫女服は暑い。だからと言ってコスプレみたいなミニ巫女服が着たい訳でもない。洋服に着替えたいだけだ。
どうせ誰もいないからと少し胸元を開けさせる。日影を伝って団扇を取りに社務所へ向かい歩き出す。
そして、神社の影に隠れていた人物とばったり鉢合わせた。
全裸の男性だった。
「………」
「………あっ、す、すみません!」
男性が慌てて目を隠す。違うそこじゃない、と思ったが一拍置いて自分の下着が見えていた事を思い出す。紳士…なのか……? と戸惑いながらも後ろを向いて襟元を正し、ちらり、ともう一度男性を見る。
「あの、もう大丈夫ですから、その……」
「あ、服、服ですよね、分かってます直ぐに着ますから!」
「えっと……」
そういう問題ではあるが、もう既に通報するかどうかと考えている段階なので今更着ると言われても……と額を押さえ、しかし好奇心からちらり、ちらり、と着替えの様子を覗き見る。
イケメンだった、腹筋も割れていた、めっちゃ好みだった、通報するのは止めた。夕凪は面食いだった。
「ふぅ、本当にすみませんでした、ここは滅多に人が居ないので、ろくに確認もせずに……まさか巫女さんが居たなんて」
着替え終わった様なのでちゃんと振り返る。彼の言葉に神社の人間として苦笑いしながら、
ズボンだけだった、上半身は裸のままだった、つまりは半裸だった。
でもイケメンだから許した。夕凪は面食いな上に男に飢えていた。
「申し遅れましたが、俺は緋吹楓と言います、こちらの神社には何時もお世話になっております」
「あ、いえ、こちらこそこんなボロ神社に来て頂いてありがとうございます、茜夕凪って言います、彼氏はいません」
お互いにペコペコと頭を下げながら何故か自己紹介を済ませる。彼、緋吹さんは社殿の柵に掛けた上着を手に取り、襟元をこちらに向けて見せた。キラリと光る銀装飾のピンバッジ、見覚えは無い。
「俺、狩人なんですが、ちょっとその…副作用みたいなもので、外で脱ぎたくなっちゃうんですよね。実は今までもこっそりこちらを使わせてもらっていたんですが、あの、ちゃんと人が居ないか確認してからにするので、今後も……良いですか……?」
彼はおずおずと腰を低くしながらとんでもない事を尋ねた。しかし夕凪の目にはもう彼の顔しか映っていない。どの角度から見てもカッコいい、こんな人が来てくれるなら大歓迎だ。夕凪は冷静な判断力を失っていた。
「こんなボロ神社で良ければ何時でもいらっしゃって下さい、平日のこの時間はどうせ私しか居ませんし……そうですね、時々話し相手にでもなってくれたら、嬉しいです。あ、下着は履いてて下さいね!」
「は……はいっ」
夕凪が微笑むと、緋吹さんは何故か慌てて顔を逸らした。
「一個下なんだ、タメ語で良い? どこ高? 私立じゃん、凄いね」
「でも全然カッコいい人いないし。楓君と同じ学校が良かったなぁ」
「学校よりもここで二人で会える方が嬉しいな」
「楓君……」
放課後の荒居神社には仲睦まじく並んで談笑する二つの人影が見られる様になった。パンツ一丁の男と巫女服の少女という奇妙な取り合わせだったが、その表情はまさしく年頃の恋する若者のものだった。
どうせ神様なんていない、良いじゃないか片思いくらい自由にしたって、もしかしたら両想いかもしれないけれど。彼から告白されるのを待つべきか、自分から告白するべきか、そんな事を考えている時間が一番楽しい。
「今日調理実習でマドレーヌ作ったんだ、その、楓君に食べて欲しいなぁ、なんて……」
「良いの? あっ、ちょっと待ってて服着るから」
「何で?」
「食事中に裸なのは失礼かなって」
「どういう基準……?」
少し焦げたお菓子を美味しい、と笑って食べてくれた彼。結ばれる事の出来ない恋だとは分かっているから、今は少しでも、一秒でも長くこの時間を――。
倒壊した民家。道路を塞ぐ様に倒れる木々。ヒビの入った石鳥居。社殿から鏡を持ち出す自分。
炎と煙の中から現れる化け物の群れ、その前に立ちはだかる彼。
血だらけで、倒れる、彼。
「――はぁっ、はっ、は……うっ、けほっ、はぁ……」
また、この夢だ。夕凪は暫く深呼吸で寝起きの気持ち悪さを鎮めた後、着替えを持って洗面所へ向かう。スマートフォンの画面には午前四時と表示されていた。
汗で濡れた寝間着の浴衣を脱衣篭へ放り投げ、シャワーを浴び制服に着替える。白湯だけ口にして、鞄は持たずに玄関へ向かう。
「夕凪ちゃん、今日も早いねえ、お出かけかい?」
「うん、神社の掃除。行ってきます」
庭いじりをしていた家で一番早起きの祖母に挨拶して、家の南側にある長い石段の参道を上る。鳥居も潜らずに社務所へ直行して、巫女服に着替え竹箒を持ち境内へ。
朝の冷たい空気の中、地面に落ちた黄色い葉っぱを義務的に一ヶ所に搔き集めながら、今朝の夢を考える。もう一週間、毎日毎日同じ内容を見ていた。予知夢なんてものは信じてはいない。きっと自分の肉体か精神の状態が良くないのだろうが、それにしても、よりによって楓君が酷い目に遭う夢を見るなんて。本当に毎朝最悪な気分で目が覚めるから、早く何とか出来ないものか。家族に相談したら……また巫女の神託がどうのこうのと騒がれるのだろう。あれは偶々で、只のデジャヴュで、予知夢なんかでは……。
悶々と悩んでいるうちに社務所から六時を告げる大音量のアラームが鳴った。着替えて、朝食を食べて、学校へ行く、そんな何時も通りの日々が今日も待っていると、無条件で信じていた。
神社がある場所は町の中では高台にあたる。木に囲まれていて見晴らしは良くないが、木々の隙間から景色を眺める事は出来る。
社務所の扉を開けようとした瞬間、どこかから倒壊音が聞こえた。
一つではない、二つ、三つ、十、二十、連鎖する様にどんどん増える。何事かと音の方角へ向かって駆け足で林を抜けると、町のあちこちから煙が上がっていた。呆然と眼下の景色を眺めている間にも、電柱が一本倒れバチリと火花が弾ける。
夕凪は社務所からスマートフォンだけを握り締め慌てて石段を下りた。家の門をくぐった時、手元と家の中から同時に不協和音の警報音が鳴る。緊急災害警報、荒居町一帯に避難指示が出ていた。
内容は、『悪意災害』。
家族の無事を確認し、早々に草履を履き直しまた家を出る。学校、友達の家、顔見知りのお爺ちゃんお祖母ちゃん、様子を見に行きたい場所は沢山あったが、誰よりも真っ先に彼を探さなければと思った。どこにいるかは分からないけれど、探さなければ。だって彼は『狩人』だと言っていたから、こんな時は、きっと、一番危ない場所に。
夢がフラッシュバックする度に頭を振って、夕凪は走った。予知夢なんて認めない。そんな未来は認めない。あんな光景は、絶対に現実になんてさせない。
ちらほらと擦れ違う人波に逆らって走る。夕凪ちゃん避難所はあっちだよー、と叫ぶ知り合いのおばちゃんに分かってるー! と返事しながら反対へ走る。段々崩れた家が出て来て、砂埃が喉に入り咳き込んで立ち止まる。袖で口元を塞ぎまた走り出す。家のブロック塀を崩す灰色の化け物の姿が見えて、物陰に隠れながら彼が居ない事を確認し、今度は横に向かって移動を始める。熊、犬、狐、兎、リス……様々な種類の灰色の怪物が町を駆け回り破壊して回っている光景に言葉が出なくて、込み上がる沢山の感情を整理する事が出来なくて、今は兎に角彼を探す事だけに集中しようと思った、そうしなければ気が持たなかった。走って、走って、目にゴミが入っても走って、夢と同じ景色を見て見ぬ振りをして、突然頭痛がして、何かの瓦礫に躓いて転ぶ。
「いっ………あ……」
顔を上げ、潤んだ視界が元に戻ると、灰色の兎がこちらを見ていた。暫く見つめ合った後、兎は踵を返し建物の影に走り去る。助かった、と思ったのも束の間、兎が隠れた建物の壁をぶち抜き、二メートル程の熊が現れた。熊は真っ直ぐこちらへ向かって来ていて、終わった、そう思いつつも夕凪は最後の抵抗として頭を抱え蹲り目を閉じる。
熊の牙か、爪か、何かしらあるだろうと思っていた攻撃は何時までも来なくて、代わりにガラスが割れる様な音が二つと、
「――夕凪ちゃん! 大丈夫!?」
「……楓、君……っ」
煙の中から待ち人が姿を現す。汚れていたもののきちんと服を着て、身長程もある槍を持ち切羽詰まった表情をした彼は何時もと少しだけ雰囲気が違って見えたが、その声に、顔に、安堵の気持ちが溢れ出して、夕凪はふらふらと立ち上がり彼の胸に飛び込んだ。大声で泣きたいところを抑えて少しの間すすり泣く。楓君は何も言わず、夕凪の肩をそっと抱き寄せた。
「ぐすっ……楓君、これから…」
「君を避難所まで送り届ける、逃げるよ」
「っ、うん!」
良かった、逃げてくれる、提案しようとした事を先に言われほっとした夕凪。彼に手を引かれ瓦礫の中、来た道を駆け足で引き返す。ふと、袖の中からメッセージアプリの着信音が鳴った。
『神社の御神体を持って来て』
母からのそんな指示に、こんな時まで神様か、と呆れながらも楓君に神社に立ち寄りたいと伝える。あの辺りはまだ然程危険は無いだろうと言いながらも、出来るだけ早く、と二人は足を早めた。
石段を下りて来た狐一体を倒し、ヒビの入った石鳥居を潜る。社殿の入り口の戸が破壊されていたが、中の古ぼけた鏡は無事だった。雑に鏡を鷲掴み、長い石段を駆け下りようとして足がもつれ最初の段で転びそうになったところを楓君の胸に受け止められる。
「…ちょっと急ぐから、ごめんね」
そう言うと、彼は夕凪の身体をひょいと持ち上げた。突然のお姫様抱っこに気が動転し考えていた事が全て吹き飛んだせいか夕凪は気付かなかった。
未だ、夢の景色から抜け出してない事に。
楓君は夕凪を抱えながら五段飛ばしで階段を下る。道路に出るとくるりと一回転して周囲を確認し、そのまま止まらず避難所のある方角へ走る。坂を下って、上がって、古い住宅地を抜けてアパートの向こうに『指定避難所中央公民館この先1キロ』という看板が見えた所で、立ち止まり夕凪を地面に下ろす。
「ここから先は一人で行って」
「え、なんで」
「俺はここに残らなきゃいけない、それが狩人の仕事なんだ」
服の胸元を顔に引き寄せ、「緋吹です、防衛ライン到着しました」と誰かに話し掛ける楓君。避難状況は……他の狩人はどこに……といった業務的な会話を済ませると、こちらに振り返り未だ逃げていない夕凪に向かって、何時もの様に優しく微笑んだ。
「大丈夫、終わったら直ぐに会いに行くから、先に逃げてて」
でも、そう言いかけて、彼の目を見て思い留まる。きっとどんな説得も通じない、使命感と決意に満ちていた。
「……待ってるから、絶対に、また会えるって……」
「うん、約束」
楓君が小指を差し出す。震える手を伸ばし、夕凪はそこに自分の小指を絡めた。十秒そうして、指が離れる。楓君は武器を構えて、夕凪は鏡を抱えて、それぞれに背を向けた。零れそうな涙を振り払う様に俯いたまま走り出す。どうか只の夢でありますように、全て杞憂でありますように、信じてもいない神様に祈る事しか、今は出来ない。
背後から何かが崩れる音がする。強く吹いた風に乗って土埃が気管支に入り酷く咳き込んだが、足は止めない。振り返ったらもう二度とこの先に進む事は出来ないだろう。
段々と遠ざかる彼の気配が、手に残った温かさが、やがて消え去っても、夕凪は只前だけを見て走った。
違う避難所に逃げていた家族と再会したのは夜の九時を回った頃だった。
「夕凪! まあ、御神体を持って来るなんて、巫女としては立派だけどねえ、もっと自分の事を一番に考えて……」
「何言ってるの、母さんが持って来いって言ったんじゃない」
「え? そんな事言ってないよ?」
「え?」
改めてスマートフォンのメッセージを確認すると、あの時届いた筈の一文はどこにも存在していなかった。母は純粋に夕凪を心配している様に見える、嘘を吐いているとは思えない。
混乱する夕凪の手元で、鏡が一瞬淡く光り、どこからかくつくつくつと男が笑う声が聞こえた。
『邪魔者は消えた様だな……』
全身に悪寒が走る、邪悪な声。声だけではない、その内容が何を指しているのか、何故か夕凪は直感で悟ってしまった。
周囲を見渡す。誰もこの声に反応している様子はない。これは間違いなく鏡の中から発せられたもので、夕凪にしか聞こえていない。自分がおかしくなったのだ、きっとそうだ、確認が取れればそれで済む。
夕凪は家族に何も言わず立ち上がり駆け出した。彼が着けていたバッジと同じ物を付けている人物を、暗がりの中避難所中探し回る。
『此処では貴女の求めるものは手に入らぬぞ、我が妻よ』
鏡は置いてきたのに、直ぐ近くから声がする。公民館の入り口で避難民の受け入れをしていた女性がバッジの様な物を付けていたので形振り構わず詰め寄るが、安否情報はまだ入って来ていないと言われた。只ならぬ様子に後を付けて来ていた父親に宥められ、家族の元へ引き戻される。夜も遅いからと一度就寝のポーズを取ってはみたが眠れず、朝日が昇る前に夕凪は避難所を出た。悪意災害時に一番早く情報が集まる場所、狩人協会を目指して暗がりをスマートフォンのナビを頼りに早足で進む。
足が痛くなってきた頃に、灯りの付いた幾つかの簡易テントが見えた。行き来をする人達は皆あのバッジを付けている。夕凪は気力を振り絞り、中央に立っていた妙齢の女性に近付き、尋ねた。女性はボロボロでしわしわの夕凪の恰好を見て辛そうに目を閉じた後、そっと両手を包み込む様に握り、目線を合わせて答えた。
「緋吹楓君は、先の大発生にて殉職致しました。我々の力不足によるものです、お好きなだけ非難して頂いて構いません。ですがこれだけは言わせてください、彼が救ってくれた命を、どうかご大切に」
膝の力が一気に抜けて、その場に崩れ落ちる。我慢して来た涙がダムが決壊したかの様に一気に溢れ出た。夕凪はそのまま、朝日が完全に山の上に昇り切るまで泣き続けた。
泣き過ぎて呼吸が乱れた夕凪は救護テントへ運ばれる。落ち着くまで付き添ってくれていた協会の人も先程出て行った、今テントには自分一人。
それなのに、ぼんやりと透けた白い長毛種の猫みたいな長髪の和装の男が目の前に浮いている。どう見ても人間じゃないそれは、ニヤニヤとしながらこちらを見つめていた。
『我の社は崩れた。是で晴れて望み通り、退屈で時代遅れの家業から解放された訳だ。さて、是から如何する?』
「……狩人協会に入る」
『復讐の為か? 戦う武器も持たずに?』
「戦えればそれが一番だけど。彼がやって来た事は、それだけじゃないから……思いだけでも継ぎたい、人を、助けたいの」
『くつくつ、一つ良い事を教えてやろう。我の力を使えばもっと面白い事が出来るぞ? 妻の頼みとあらば神の御業を見せる事も吝かでない』
「誰が貴方みたいな邪神の力なんて……」
『必ず貴女は此の力を欲する。此の力が無ければ「全ての始まり」に辿り着く事が出来ぬからだ』
神を名乗る邪なナニカが手をボールを掴む様に構えると、中心に鏡の残像が現れ、その中に人影を映した。
『一つ契りをしよう、我が妻よ。貴女は何が起きようとも危険な場所へ立ち入っては為らない。其れさえ守るのであれば我が貴女の復讐を手助けしよう。此の儘此処に留まり、彼の物に会え。さすれば運命は新たな時へ動き出す』
「そんなの……信じられると思う?」
『我が妻に嘘は吐かないとも』
嘘は吐かない、か。楓君は見殺しにした上に、その死を喜んでいた癖に。そんな相手を自分が信じられると本気で思っているのだろうか。
「……その人が現れなかったら、そこで契約は終わりよ」
『くつくつくつ、現れるとも。我の予知が外れた事が有ったか?』
男は意地の悪い顔で笑う。信用云々以前に、自分はこいつが嫌いだ、と夕凪は思った。それでも今は、こいつの得体の知れない力に縋るしかない。非力な自分が、あの化け物と戦う為には。
夕凪は行儀が悪いのを理解した上でビシッ、と男を指差した。
「私は貴方を夫とは認めない、あくまで協力者として接するだけ。貴方が何を言おうとも私の行動は私が決める。でも、生きる事は諦めない。これで良い?」
『気が強い所も嫌いではないぞ。良いだろう、契りは成立した。是からが楽しみだなあ、夕凪』
不快な高笑いをする男から顔を逸らし、欠伸を漏らした後重い瞼を閉じる。何もかも夢だったら良いのに、そう思いながら夕凪はようやく眠りに落ちた。
二度と忘れる事の無い、彼の最後の笑顔を脳裏に思い浮かべながら。