プロローグ
今、俺の目の前には一人の女性がいる。
いや、女性というには少し幼いのだが、どこかその見た目に不釣り合いな威厳を感じられる。
だが、ここはどこだ?
見覚えがあるような、だがどう見ても現実離れした場所だ。
これはデジャブというやつか
などと一人思考を巡らせていると
「そなたは、転生者となった。これから頑張るのじゃぞ。」
「…………は?」
唐突に何を言い出すんだこの人?は
「とりあえず転生先に送るぞ」
「ちょっと待てちょっと待て」
「なんじゃ、わしの仕事を邪魔するな」
そうは言われてもいきなり転生と言われても納得できない
「そなたは、元の世界で死んだのじゃ」
死んだ?
俺が?
確かに記憶に断片的な空白感を感じる
だが死んだというのはにわかに信じがたい。
「死んだからここに来たのじゃ」
「ということは、ここは死後の世界のようなものか?」
「死後の世界とは少し違う。死ねばみんながここに来れるわけではない。
死んだ中でもわしらが選んだものしか来れん。」
選ばれたものしか来れないのであれば、俺は選ばれたということか
どちらにせよここがどこかわからない以上この子の話を信じるしかない
そういえば、最近部活のやつが話してたな
確か、異世界転生の小説がなんとかみたいな
これがその異世界転生というやつか
実際こうなるのならもっとまじめに読んでおけば……
「もう質問はないか。ないなら転生先えと送るぞ」
異世界転生、当たり前だが初めての経験だ。
いったいどんな世界に行くことになるのか
やっぱり王道通りに魔法があるのか
それとも魔族やモンスターがいるのか
正直不安とともに楽しみでもある
元の世界にも大して未練はない
唯一心残りがあるとすれば
ゲームの最新作発売日明日だったんだよな……
「言い忘れてたが、そなたの能力はアジリティのみじゃ」
………え?
「それじゃ、頑張るのじゃぞ~」
何とも不安が絶えない異世界転生となりそうだ
いったいどんな世界に転生するのだろうか