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勇者? 人違いです  作者: Adhen


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99。忍者のやつは逃げたよ

2025年8月30日 視点変更(物語に影響なし)


「王! 加勢しにきまーーどうかしましたか、王? 間抜けな顔して」


「いきなり現れて失礼な事を言うなよ……」


 顔は焦りに満ちたドライアードは現れて、彼女の登場台詞にフェルは肩を落とした。


「勇者は?」


「忍者は逃げたよ」


「ニ、ニンジャ?」


「あーいや、何でもない」


 まあ忍者はこの世界にいないからドライアードが首を首を傾げても仕方がないのだ。


「それより入口を封印するから行くぞ」


「はー? しかし封印の意味あります?」


 入口へ歩き始めたフェルの後ろに付いてきているドライアードはそう訊いた。


 まあ聖剣フォレティアの前に封印なんて意味ないから、妥当な質問だな。


 また破壊されるかもしれないよと暗に言っているのだ、ドライアードは。


「ないよりましだろう? それに今回はただの封印じゃない」


「?」


 困惑している彼女を無視して、二人が外に出るとフェルは入口を指差して説明し始める。


「この辺の樹皮を成長してくれ、入口を完全に塞ぐようにな」


「……それ封印と言えませんよ、王」


「そうか?」


 封印でいいじゃん、とフェルは内心で抗議しているけど、内外を隔つ機能だけを考えれば確かに封印だな。


「封印じゃありません、障害物を置くだけです」


「……俺の考えを読むのを止めてくれない?」


「夫婦だからいい事ではありませんか?」


「え?〝プライバシー〟という言葉はないのか?」


 いや、フェル、前世で結婚したことないからお前わからないだけだ。


「帰ったらレダスに訊いてみよう」


 そうした方がいいだろう。


「それより封印の問題です。樹皮を成長するだけですね?」


 その問いに頷いたフェルを見て、ドライアードは魔力を世界樹に流すと樹皮はゆっくりと入口を塞いでいる。


「終わりましたよーーどうしましたか、王? より変な顔をして」


 樹皮の動きを見てフェルは思わず気持ち悪いと思ってしまったのだ。


「……待て、その言い方だとまるで元から変な顔をしてるじゃないか」


「……」


「おい、こっちを見ろ、顔を背けるな」


「まあまあ、細かい事気にしないでください」


「……まあいい。ネヌファ」


 このままだとやる事が全然済ませられないから、さっさと帰りたいフェルは話を進める事にした。


「お呼びですか、お父様?」


「だからお父様と呼ぶなよ……」


 俺童貞だぞ? とフェルは溜め息を吐きながら更に誰も知りたくない情報を加えた。


「いい事聞きました!」


 あー、ドライアード以外……。


「あ、愛をこめてそう呼んでいますから、怒らないでくださいよ!」


「よーし、これからお互いに数メートル以上の距離を保とうね!」


 精霊に性別の概念はないけど、ネヌファの言葉にフェルは身の危険を感じてしまった……。


 っていうかさっきから話が進まないな!


「はぁー……確かにドライアードの言う通り、ただの樹皮なら障害物を置くだけと変わらない。ただの樹皮なら、な」


「世界樹の樹皮は確かに普通の樹より硬いですが、それでも聖剣フォレティアに敵いませんよ、お父様」


「以前作った刀に自信があるんだが?」


 そう言ったフェルは意味ありげな笑みを浮かべた。


「なるほど、理解しました!」


 流石フェルと一番長く一緒に行動しているだけあって、ドライアードはすぐに意図を掴めた。


「え? どういう意味ですか?」


「そういえばお前ずっとこの森に引き篭もっているなから知らなくても当然か」


「人聞き悪いですね……」


 お母様達の命令ですよ、とネヌファは抗議して肩を落とした。


「俺の魔力から作られて、いくつかの魔法を付与した刀の事だ」


 そう、付与魔法だ。


 魔法は魔力を籠めれば籠める程強くなる、付与魔法も例外じゃない。


 樹皮に必要以上の魔力を籠められたプロテクトを与えれば、いくら聖剣フォレティアでも破れないだろう。


 それに魔力が無限に等しい世界樹を結界の魔力源にすれば魔力切れの恐れは無くなるし、聖剣フォレティアに無力化される心配もなくなる。


 つまりただの障害物だけど、その障害物の後ろに絶える事ない魔力に支えられている付与魔法の魔法陣があって、障害物を強化し続ける。


「それと封印にお前らの魔力を登録する」


 そうすれば魔法陣を解除できるのはフェル達三人だけだ。


 以後世界樹に入れるにはこの三人の許可を貰って、案内される人だけとなるだろう。


「……欠点を挙げるとすれば手間、ですか?」


 そうなるのだ。


 入りたいなら封印を解除して樹皮を破る必要がある。解除された後時間がある程度たったら魔法陣は自動で機能を再開するけど、樹皮は手動で再び成長しないといけない。


 それを成し得るのはドライアードとネヌファだけだ。


「よし、説明終わり! 何か質問? ないならやるぞ」



 それらの説明を二人にし終えて、フェルは魔法を発動した。







「フェル様、ご無事ですか!? セルディから勇者様は現れましたと聞きましたが、本当ですか!?」


 エルリン王国の王城に戻って、フェルとドライアードはみんなが待っている会議室に入るとエルリン国王に問い詰めた。


「無事だ。勇者に逃げられたけどな」


「しかしまさか本当にフェル様が言った通りとは……信じられません」


 実はエルリン王国の王都に着いたその夜、フェルは世界樹の封印を調べたのだ。


 そこで自分が張った封印は何者かに弄られた痕跡、剣の傷跡を見つけて、封印に傷をつける剣は彼が知る限り勇者が所持している聖剣フォレティアくらいだから、その何者の正体にすぐに見当ついた。


 今回の事件はレヴァスタ王国の仕業という可能性があると思い、フェルはエルリン国王に国境に兵を待機させるようにと伝えた。


 そして案の定、レヴァスタ王国の大使であるソル大使は国を出ようとしている事を発見され、兵士に捕まれて今取り調べられている途中だ。


「念のため国境にもうしばらく兵を待機させた方がおすすめだ」


 もう一人のレヴァスタ王国の人間、忍者である勇者は行方不明のままだ。多分もう国から出ただろうけどそれでもフェルはそうエルリン国王に提案した。


「それと夜に聞こえる音の事だがーー」


 ここ最近エルリン王国を不安にさせる原音だけど、あれは忍者から世界樹を守るためにネヌファが改良したトレントだった。


 世界樹の封印が弄られた事を前から知った彼はすぐに行動に移った。


 国民に不快な思いをさせるや森に被害が出るけど、そのおかげで世界樹は無事だ。


 彼の判断に間違いがあるとすればドライアードとフェルに相談しなかった事だな。


「そうですか……ネヌファ様が我々を守るためにしたことですから、仕方がありません」


 フェルから説明を聞いたエルリン国王は納得した。


 ……エルフ族は精霊の絶対信者でよかったな、ネヌファ。


「それと変異種なんだが、エルリン王国に差し上げようと思う」


「よろしいのですか?」


 変異種だ、その樹皮も枝も普通のトレントに比べ物にならない程頑丈だから、何らかの道具に使えるだろう。


「いいんだよ。一部を貰うけどな」


「分かりました。後でどの部分がいいのか教えてください、部下に用意させますので」


 ありがとう、と頷いたフェルは席を立った。


「……これから大変だぞ?」


 報告は以上と言わんばかりにフェルはエルリン国王の目をまっすぐ見て色んな意味でそう言った。


「はい、覚悟しております」


「ならいい」



 レヴァスタ王国は大国だからなぁ……と最後にフェルは言い残して、ドライアードたちと共に会議室を出た。







「なぁ、セルディ、これからどうしよう……」


 その夜、エルリン国王の部屋に呼び出されたセルディは入った途端、そう質問された。


「フェル様の前に強がっていた陛下はどこへ?」


 あー、自信満々と言ったけど、セルディにはあれはただの強がりだとちゃんとバレた。


「まあ精霊王国マナフルと同盟を組んだ方がいいのでは?」


 レヴァスタ王国がやろうとした事はエルリン王国にとってある種裏切りだからな。


 セルディの提案は妥当だ。


「そうだな、そうだよな……しかし何故だ?」


「理由なんてどうでもいいではありませんか?」


 フェルから聞かされたのだ、もし勇者は世界樹の中にある何かを持ち出したらエルリン王国は消滅されるだろうと。


「世界のためだと勇者は言いましたが、こっちも消滅されたくありませんからね。だから理由なんてどうでもいいのです」


「しかし犯罪者の味方とはーー」


「あれはレヴァスタ王国の虚偽(きょぎ)だとあれほどーー」


「分かっている。だがな、セルディ、世間はそんな事知らないだろう?」


 世間は知らないということはエルリン王国はレヴァスタ王国を裏切る事になるのだ、世間の見方だと。


「はぁ……侵略を受けないといいが」


 そうなったらレヴァスタ王国はエルリン王国を侵略しても自分達を正当化出来るのだ。


 王としてそれが心配でエルリン国王は思わず溜め息を吐いた。


「精霊王国マナフル側に付いた方がいいと思います」


 新国とはいえ、精霊王国マナフルはロダール女王国と同盟を結んでいる。


 大国に囲まれていながらも今まで存在し続けるあの小さな国は決して侮れないのだ。


「それに精霊王であるフェル様が統治している国ですよ?」


「……そうだな」


 自分達の先代が残した記録に精霊王はどんな存在か、何をやったか記事されたから、エルフ族達は精霊王の力を理解している、少なくともある程度わかっている。


 だから精霊王であるフェルがその気になったら自分達はとっくにこの世界から消されたでしょうと彼らは思い込んでいるのだ。


 まあ間違いじゃないけどな。


「はぁ、この話はもういいだろう」


 エルリン国王はまた溜め息を吐いた。


「報酬のことだがーー」


「あー、その事ですが、実はーー」



 報酬の話に移って、セルディの言葉を聞いたエルリン国王は驚愕してしまった。

フェル「さてネヌファ、お前の罰ーー」

ネヌファ「ま、待ってください、お父ーーお、お母様、助けてください!」

ドライアード「……すまぬ」

ネヌファ「そんな!」


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